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本編
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※攻め視点
ルカとの再会をずっと夢見ていた。
確かにそれは叶ったけれど、思いもよらない姿だった。
何も反応しない彼を、どうしようというのか。
常に迷いを抱えたまま、それでも諦めきれずにやってきたことが――ついに報われたように思えた。
美少年の面影を残しながらも年相応に成長した身体とはうらはらに、少し舌足らずで声変わりすらしていない。
そして、すっぽりと抜け落ちている執事の記憶。
あの頃のまま変わらない、というのは僕の都合の良い解釈で。
結局のところ、あの頃から……ずっと彼の時は止まっていた。
コマンドをかけてみたのは賭けでもあった。
かつての歴史の中では、DomとSubはコマンドの応酬を通して絆を強めていたとも言われているが、執事制度のある今となってはコマンドそのものの存在すらも失われている。
だから僕がコマンドを使うことができるのか、そしてルカに対して効力を持つのだろうかと半信半疑でもあった。
それがあんなに効くなんて、嬉しい誤算だった。
そして、その嬉しさとはまた別の感覚が呼び起こされて満たされたような気持ちになるのは……これがDomとしての本能ということなのか。
SubにとってDomに放たれたコマンドによる命令は「絶対」であるが、そこに快感を伴わせることができるか否かはその二人の信頼関係が大きく影響するという。
つまり僕が満たされているこの感覚は、決して独りよがりなものではないと……期待してもいいのだろうか。
そもそも、ダメ元で試していた制御チップの無効化がうまくいっていたことすらも奇跡でしかなくて。
壊れてボロボロになっていたルカと、言葉でコミュニケーションまで取れる日が来るなんて。
そうなってしまえば、欲が出てくるのが人間というもので。
もっとルカに必要とされたいし、このままずっと、僕が彼のDomでありたい。
彼から失われた長い時間、それ以上にめいっぱい甘やかしてやりたいし、またあの頃みたいに笑ってほしい。
絶対に、ここから連れ出してやる。
この施設にとってはボロボロになったSubはお荷物で、誰もそれには興味がないのは幸いだった。
だからこそすんなりと自分の保護下に置くことができたのは、本当に役得だったのだ。
このまま慎重に目立つことなく、ルカが人形状態であることを印象付けて適当な理由をつけてみれば、拍子抜けするほど簡単に買い取ることに成功した。
あの日以来、また本当に人形に戻ってしまうのではないかと怖かった。
けれどそんな日々ももう終わり、ようやく彼を連れて帰ることができるのだ。
言葉を交わしたあの日に垣間見えた不安な顔も、もう隠さずに全部見せてくれていい。
自分の意識がないまま奴隷のように扱われ、ボロボロになっていた彼を思うと悔しくて堪らない。
これからは優しく愛して、ドロドロになるまで甘やかしたい――――
ルカとの再会をずっと夢見ていた。
確かにそれは叶ったけれど、思いもよらない姿だった。
何も反応しない彼を、どうしようというのか。
常に迷いを抱えたまま、それでも諦めきれずにやってきたことが――ついに報われたように思えた。
美少年の面影を残しながらも年相応に成長した身体とはうらはらに、少し舌足らずで声変わりすらしていない。
そして、すっぽりと抜け落ちている執事の記憶。
あの頃のまま変わらない、というのは僕の都合の良い解釈で。
結局のところ、あの頃から……ずっと彼の時は止まっていた。
コマンドをかけてみたのは賭けでもあった。
かつての歴史の中では、DomとSubはコマンドの応酬を通して絆を強めていたとも言われているが、執事制度のある今となってはコマンドそのものの存在すらも失われている。
だから僕がコマンドを使うことができるのか、そしてルカに対して効力を持つのだろうかと半信半疑でもあった。
それがあんなに効くなんて、嬉しい誤算だった。
そして、その嬉しさとはまた別の感覚が呼び起こされて満たされたような気持ちになるのは……これがDomとしての本能ということなのか。
SubにとってDomに放たれたコマンドによる命令は「絶対」であるが、そこに快感を伴わせることができるか否かはその二人の信頼関係が大きく影響するという。
つまり僕が満たされているこの感覚は、決して独りよがりなものではないと……期待してもいいのだろうか。
そもそも、ダメ元で試していた制御チップの無効化がうまくいっていたことすらも奇跡でしかなくて。
壊れてボロボロになっていたルカと、言葉でコミュニケーションまで取れる日が来るなんて。
そうなってしまえば、欲が出てくるのが人間というもので。
もっとルカに必要とされたいし、このままずっと、僕が彼のDomでありたい。
彼から失われた長い時間、それ以上にめいっぱい甘やかしてやりたいし、またあの頃みたいに笑ってほしい。
絶対に、ここから連れ出してやる。
この施設にとってはボロボロになったSubはお荷物で、誰もそれには興味がないのは幸いだった。
だからこそすんなりと自分の保護下に置くことができたのは、本当に役得だったのだ。
このまま慎重に目立つことなく、ルカが人形状態であることを印象付けて適当な理由をつけてみれば、拍子抜けするほど簡単に買い取ることに成功した。
あの日以来、また本当に人形に戻ってしまうのではないかと怖かった。
けれどそんな日々ももう終わり、ようやく彼を連れて帰ることができるのだ。
言葉を交わしたあの日に垣間見えた不安な顔も、もう隠さずに全部見せてくれていい。
自分の意識がないまま奴隷のように扱われ、ボロボロになっていた彼を思うと悔しくて堪らない。
これからは優しく愛して、ドロドロになるまで甘やかしたい――――
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