恋愛ショートショート

かまの悠作

文字の大きさ
上 下
180 / 182

冬のイルミネーションに照らされて ~ツンデレな私のクリスマス~

しおりを挟む
冬の寒空の下、東京の街は煌びやかなイルミネーションに包まれていた。人々はコートに身を包み、温かい飲み物を片手に、心躍るクリスマスを待ち望んでいる。そんな中、ひときわ目を引くのは、駅前の広場に立つ一軒のカフェだった。ここは、冬の寒さを忘れさせるような温もりに満ちている。

カフェの中には、木の温もりを感じるインテリアが広がり、優しい照明が柔らかな雰囲気を醸し出していた。窓際の席から見えるイルミネーションは、まるで星空が地上に降りてきたかのよう。そんなカフェの一角に、椿美咲(つばきみさき)が座っていた。彼女は心のどこかでこの場所を愛していたが、その感情を素直に表現することができない、いわゆるツンデレだった。

「何よ、別にあんたのために来たわけじゃないんだから」と、彼女は自分に言い聞かせるように呟いた。美咲は、目の前にいる男子生徒、桐生翔太(きりゅうしょうた)をちらりと見た。彼は真剣な眼差しで自分に向かって話しかけている。彼の笑顔は、まるで冬の寒さを感じさせないほど温かい。

「美咲、今度のクリスマス、どこか行きたいところある?」翔太は、少し照れくさそうに尋ねた。彼の視線は真剣で、何か特別な意味を込めているように感じた。しかし、美咲はそれを素直に受け入れることができなかった。

「なんで私があんたにそんなことを聞かれなきゃいけないのよ!」と、彼女はつい言葉を強くする。心の中では、翔太と一緒にいたい気持ちが渦巻いているのに、それが素直に言えないもどかしさが胸を締め付けた。

翔太の表情が一瞬曇る。「そ、そうだよね…ごめん」と言い残し、彼は目を伏せた。彼の心の中には、少しの傷つきと、でもそれでも美咲を気遣う優しさが交錯していた。美咲はその瞬間、自分が翔太を傷つけてしまったことに気づく。

「ちょっと、待ちなさいよ!」美咲は慌てて言った。彼女の心臓は、ドキドキと激しく打ち始める。自分の言葉が翔太をどれほど傷つけたのか、胸の奥でじわじわと後悔が広がっていくのを感じた。「なんでもないから、ほっといてよ!」

翔太は振り返り、少し戸惑いながらも彼女を見つめた。美咲の目には、いつもとは違う強い意志が宿っていた。その瞬間、彼女は自分の感情を素直に伝えたくなった。だが、言葉が口から出てこない。もどかしさが膨らんでいく。

「クリスマス、私も行きたいところ…あるかも」と、ようやく口を開いた。美咲は目を逸らしながら、恥ずかしさを隠すように続ける。「でも、別にあんたとじゃないからね!友達と行くから!」

翔太はその言葉に少し安心したようだった。しかし、彼の目にはまだ美咲への想いが宿っている。心の奥底で彼女を思いながらも、彼はその言葉を受け止めるしかなかった。

「美咲が行きたいところなら、どこでもいいよ。ただ、もし良ければ一緒に行こう」と翔太は言った。彼の声には、優しさと少しの期待が混ざっていた。

美咲は一瞬、驚いて翔太を見つめた。彼の真剣な眼差しが、自分の心の奥深くに触れたような気がした。恥ずかしさと戸惑いが交錯する中、彼女は思わず顔を赤らめてしまう。そして、心の中の「行きたい」という感情が、少しずつ素直に表現されるようになっていった。

「じゃあ、行く…かも」と、言葉を選びながら言った美咲。その瞬間、翔の太顔に笑顔が広がった。

「本当に?嬉しい!」彼の喜びは、まるで冬の陽射しのように温かかった。

それから二人は、少しずつ距離を縮めていく。美咲は自分の心の中にある翔太への想いを、少しずつ受け入れることができた。彼女が少しずつ素直になれることに、翔太も心から嬉しさを感じていたのだ。

そして、クリスマスの日。美咲と翔太は、約束通り一緒に街を歩くことになった。イルミネーションが輝く中、二人の心も同じように輝いていた。

「美咲、今日は一緒に過ごせて良かった。ありがとう」と翔太が言う。美咲は照れくさくて顔を赤らめつつも、内心は幸せでいっぱいだった。

「別に、あんたのためじゃないから」と、また少しツンデレな言葉が口をついて出る。しかし、その言葉に彼女の心には「でも、やっぱり嬉しい」という気持ちが隠れていた。

その瞬間、美咲は自分の気持ちを認めた。翔太の隣にいることが、彼女にとってどれほど大切なのかを。そして、彼女の心の中には、冬の寒さを忘れさせるほど温かい感情が広がっていた。

「あんたといると、なんだか温かいよ」と、思わず呟いた。翔太は驚いたような顔をしたが、すぐに彼女の手を優しく握った。

「美咲、俺もだよ」と彼は笑顔で答えた。その瞬間、二人の心は一つになり、素直な想いが交錯した。

このクリスマスの日、美咲は翔太との新たな関係を始める決意を固めた。ツンデレな自分を少しずつ変えていこうと。心の中の温もりは、次第に彼女に自信を与えていったのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

13歳女子は男友達のためヌードモデルになる

矢木羽研
青春
写真が趣味の男の子への「プレゼント」として、自らを被写体にする女の子の決意。「脱ぐ」までの過程の描写に力を入れました。裸体描写を含むのでR15にしましたが、性的な接触はありません。

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

ねえ、私の本性を暴いてよ♡ オナニークラブで働く女子大生

花野りら
恋愛
オナニークラブとは、個室で男性客のオナニーを見てあげたり手コキする風俗店のひとつ。 女子大生がエッチなアルバイトをしているという背徳感! イケナイことをしている羞恥プレイからの過激なセックスシーンは必読♡

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

車の中で会社の後輩を喘がせている

ヘロディア
恋愛
会社の後輩と”そういう”関係にある主人公。 彼らはどこでも交わっていく…

隣の人妻としているいけないこと

ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。 そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。 しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。 彼女の夫がしかけたものと思われ…

処理中です...