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第四章 ボクたちの町

第十話 発覚

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Szene-01 スクリアニア公国、ヴェルム城王室前廊下

 パシッ――――

 スクリアニア公国にあるヴェルム城内では、仕える者たちが戦々恐々としていた。
 ザラたちが城から逃げ出したことをスクリアニア公が知ってしまったからだ。
 ヘルムート海賊が傭兵依頼に答えたことで気を良くしていたスクリアニア公は、使者を見送った後にザラ夫人を呼ぶよう執事に伝えた。
 しかし執事はいるはずの無い夫人のことを誤魔化すことはできず、ありのままを答えた。
 するとスクリアニア公は上機嫌から激怒へと豹変し、執事に平手打ちをした音が廊下に響き渡り、打たれた執事は床に鈍い音を立てて倒れた。

「ひゃっ」

 廊下に並んでいる女中から悲鳴が漏れる。スクリアニア公に睨まれた女中は、すでに手遅れではあるが自身の口を両手で塞ぐ。

「はっ、別に珍しいものでもないであろう。夫人であるあいつの所在を知らぬということは、何よりも重要な仕事を怠っているということ。この場で刺しても文句は言えぬはずだが――違うか?」

 現場に居合わせている使用人たちは皆、体を強張らせて黙っている。胸の内では誰もが何かを訴えたい気持ちでいっぱいのはずなのに。
 だがスクリアニア公から発せられている威圧感に抑え込まれている。

「都度消していては民がいなくなってしまうだろ。だからむやみに消しはしない。それに、ただまともに働けと言っているだけだ。お前たちは城で働いているということを肝に銘じよ」

 赤い裏地に派手な刺繍が施されたマントを翻して、スクリアニア公は王室へと向かう。
 扉を開けようとしたところで一言指示を出した。

「早急に連れ戻せ」

Szene-02 レアルプドルフ、エールタイン家

「ティベルダ、行ける?」
「はい、こちらはいつでも」
「とりあえずルイーサと合流しよう。アムレットが来たって事はルイーサも知っているはずだから」
「ヒルデガルドとの合流ですね。わかりました」

 エールタインはティベルダの言葉で動きをピタリと止めて、おもむろにティベルダの顔を見た。

「ティベルダはルイーサが嫌いなの?」
「嫌い――ではないです。ただ、エール様との仲を必要以上に近づけようとするのが許せないんです」
「必要以上にかあ。ルイーサはボクが好きって言ってたから、剣士仲間以上を求めているんだよね。ボクとしては仲がいい人が増えるのは嬉しいけど、ティベルダは剣士として話すとこまでしか許せない、と。んー」

 エールタインが防具を身に着けた姿で玄関前に立ち、軽く上を見上げて考え込む。
 外出する準備が整ったティベルダは、エールタインのそばに来て上目遣いで見つめた。

「エール様、準備できましたよ? そろそろ行きましょう。ザラ様が心配です」

 ザラの名を耳にしたエールタインは、腕に肩をちょこんと当てたティベルダを見る。

「ティベルダが困らせるから考えちゃったよ。それじゃ、行こう」

 二人は家の敷地前を通る地区道へと出て、早歩きでルイーサ家を目指す。

「来たわね、エールタイン!」
「ルイーサ。今から家に向かおうとして――」
「アムレットを向かわせたのだから分かるわよ。だからこうして来たの。早速だけど、ブーズへ向かいましょう。町長へもアムレットの仲間が伝えに行っているから町も動くわ」

 ルイーサが説明している横で軽く会釈をしたヒルデガルドに、ティベルダが小さく手を振った。
 ヒルデガルドがそれに答えるように笑みを浮かべる。二組のデュオが揃い、駆け足でブーズへと向かった。
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