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第三章 平和のための戦い
第二十四話 驚く長達
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Szene-01 レアルプドルフ、町役場
カシカルド王国へ手紙を届けに派遣された剣士は、ローデリカによって付けられた護衛二人と共に地元に帰ってきた。
西門の衛兵に労われながら町へと入り、その足で役場へと向かう。
役場の案件掲示板の前は、相変わらず複数のデュオでにぎわっている。
派遣剣士はその光景をちらりと見ると、ホッとした表情になり、付き添いの従者に微笑んだ。
「こちらへどうぞ。御用は――あら、お帰りになったのですね! お疲れさまでした……そちらは?」
剣士が言うよりも早く、役場の受付係が前髪を手ぐしで直しながら声を掛けた。
「ただいま。こちらのお二人は、ローデリカ陛下の計らいで付き添っていただいた護衛の方々です」
「それはそれは、とても手厚いおもてなしを受けたのですね! お二人ともありがとうございました。こちらへどうぞ」
受付係は持ち場から出て、護衛の二人を談話席へと案内する。
「町長をお呼びしますね。誰か、町長を!」
派遣剣士が頼もうとしていた町長の呼び出しを、頼まれる前に進める受付係。
剣士は口を開けるまでしかできなかった。
「はは、ここはいつも通りだね。おかげで案件が済んでここに立ち寄ると、帰って来れたんだと安心できるんだよな」
剣士は黙ってうなずく従者を見てから床に荷物を置き、机に腕を乗せて肩の力を抜いた。
「おお、無事に帰ったのですね! よかった、何よりです」
剣士は一息つく時間がおあずけとなるが、町長の顔を見ると改めて案件遂行中の表情に戻った。
「あちらのお二人を護衛に付けていただきました。何やら町長にしてもらったお返しだとか」
「ほほう、それならお変わりないようですな。それも何よりですね」
剣士は町長の言葉に首を傾げる。
「いやいや、気にしないでください。それでは了承してもらえたようですね」
「はい。スクリアニアも今なら攻めないだろうと。ただ――」
「ただ?」
剣士はローデリカの言葉をできるだけそのまま伝える。
「町に必要なエールタインを不在にしてまで合わせなくても、始めから手を貸すつもりだったとおっしゃいまして。てっきり気分を害されたのかと思って少々焦りましたが、笑っていらしたのでホッとしました」
町長は後ろで組んでいた手を前に出し、拍手をしながら言った。
「ははは、彼女とやりとりするのは楽しいですな。あなたも貴重な体験ができたのではないですか?」
「それはもう。この子のことも気にかけてくださいましたし、そこからエールタインの奴隷に対する考えを喜んでいらっしゃいましたよ」
町長は大きくうなずきながら答える。
「でしょうな。彼女が喜ぶ姿は容易に想像できる――エールタイン様に向かう準備をしてもらわないといけないですね」
町長と剣士が話しているところへ、受付係から町長へ声が掛けられた。
「町長! カシカルド王国の女王陛下がこちらに弓を贈られたそうです」
町長は目線を剣士から受付係、そして護衛の二人へと移した。
「なんと弓ですと!? そこまで動かれていたのですか――あ、これは失礼。ご挨拶が遅れました。私がレアルプドルフの町長です」
護衛の二人はその場で立ち上がり、礼をした。続けて護衛の一人が受付係の言葉に付け加えた。
「贈り物ですが、レアルプドルフでは弓を扱っていないとのことで、実戦用に加えて修練用にも用意しております。陛下からの伝言で、しっかりと修練していただき、町の守りに役立てて欲しいと――」
「やられましたな――これは私の負け。早速ダン様と話をせねばなりません。陛下にはくれぐれもよろしくお伝えください」
町長はその場で立ち上がり、護衛二人に礼をする。護衛も同じくその場で立ち上がり、礼を返した。
「弓は山脈を避けた道で運んでおりますので、届くまで日数が掛かります。それだけはご了承ください」
「もちろん了承しますよ。山賊が心配ですが、そちらの軍ならば危惧する必要もないでしょう」
Szene-02 ブーズ、区長宅
エールタインはルイーサたちとブーズを訪れていた。ヴォルフによる援護について説明するためだ。
区長宅では当たり前になりつつある二組の女性デュオがいる光景。
ブーズの民はその様子を目にすると、目じりを下げて安堵の表情を浮かべる。
「ヴォルフに援護をしてもらえるなど、考えたこともありませんでした。ヒルデガルドよ、能力をしっかりと使って剣士様のお役に立っている姿、とても誇らしいですよ」
「ありがとうございます」
ブーズの住民だからこそ思うところがあるのだろう。区長とヒルデガルドは互いに笑みを見せている。
区長と目を合わせたことをきっかけに、ヒルデガルドが言う。
「ヴォルフが援護するに当たり、こちらの森であの子たちの巣を用意したいのですが、よろしいですか?」
「ほう、巣の用意を。どのようにしたら良いのかな?」
「私たちも困っていたのですが、あの子たちがここの森のどこかで決めるそうです。みなさんには、巣を見掛けたら騒がないようにだけ気を付けてもらいたいのです」
「確かに、ヴォルフが決めるべきことですね。では皆に伝えておきましょう」
エールタインとルイーサは、ヒルデガルドが話を進める姿を見ながら、柔らかい笑みを浮かべている。
ティベルダは主人の横で、アムレットとの遊びに夢中になっていた。
カシカルド王国へ手紙を届けに派遣された剣士は、ローデリカによって付けられた護衛二人と共に地元に帰ってきた。
西門の衛兵に労われながら町へと入り、その足で役場へと向かう。
役場の案件掲示板の前は、相変わらず複数のデュオでにぎわっている。
派遣剣士はその光景をちらりと見ると、ホッとした表情になり、付き添いの従者に微笑んだ。
「こちらへどうぞ。御用は――あら、お帰りになったのですね! お疲れさまでした……そちらは?」
剣士が言うよりも早く、役場の受付係が前髪を手ぐしで直しながら声を掛けた。
「ただいま。こちらのお二人は、ローデリカ陛下の計らいで付き添っていただいた護衛の方々です」
「それはそれは、とても手厚いおもてなしを受けたのですね! お二人ともありがとうございました。こちらへどうぞ」
受付係は持ち場から出て、護衛の二人を談話席へと案内する。
「町長をお呼びしますね。誰か、町長を!」
派遣剣士が頼もうとしていた町長の呼び出しを、頼まれる前に進める受付係。
剣士は口を開けるまでしかできなかった。
「はは、ここはいつも通りだね。おかげで案件が済んでここに立ち寄ると、帰って来れたんだと安心できるんだよな」
剣士は黙ってうなずく従者を見てから床に荷物を置き、机に腕を乗せて肩の力を抜いた。
「おお、無事に帰ったのですね! よかった、何よりです」
剣士は一息つく時間がおあずけとなるが、町長の顔を見ると改めて案件遂行中の表情に戻った。
「あちらのお二人を護衛に付けていただきました。何やら町長にしてもらったお返しだとか」
「ほほう、それならお変わりないようですな。それも何よりですね」
剣士は町長の言葉に首を傾げる。
「いやいや、気にしないでください。それでは了承してもらえたようですね」
「はい。スクリアニアも今なら攻めないだろうと。ただ――」
「ただ?」
剣士はローデリカの言葉をできるだけそのまま伝える。
「町に必要なエールタインを不在にしてまで合わせなくても、始めから手を貸すつもりだったとおっしゃいまして。てっきり気分を害されたのかと思って少々焦りましたが、笑っていらしたのでホッとしました」
町長は後ろで組んでいた手を前に出し、拍手をしながら言った。
「ははは、彼女とやりとりするのは楽しいですな。あなたも貴重な体験ができたのではないですか?」
「それはもう。この子のことも気にかけてくださいましたし、そこからエールタインの奴隷に対する考えを喜んでいらっしゃいましたよ」
町長は大きくうなずきながら答える。
「でしょうな。彼女が喜ぶ姿は容易に想像できる――エールタイン様に向かう準備をしてもらわないといけないですね」
町長と剣士が話しているところへ、受付係から町長へ声が掛けられた。
「町長! カシカルド王国の女王陛下がこちらに弓を贈られたそうです」
町長は目線を剣士から受付係、そして護衛の二人へと移した。
「なんと弓ですと!? そこまで動かれていたのですか――あ、これは失礼。ご挨拶が遅れました。私がレアルプドルフの町長です」
護衛の二人はその場で立ち上がり、礼をした。続けて護衛の一人が受付係の言葉に付け加えた。
「贈り物ですが、レアルプドルフでは弓を扱っていないとのことで、実戦用に加えて修練用にも用意しております。陛下からの伝言で、しっかりと修練していただき、町の守りに役立てて欲しいと――」
「やられましたな――これは私の負け。早速ダン様と話をせねばなりません。陛下にはくれぐれもよろしくお伝えください」
町長はその場で立ち上がり、護衛二人に礼をする。護衛も同じくその場で立ち上がり、礼を返した。
「弓は山脈を避けた道で運んでおりますので、届くまで日数が掛かります。それだけはご了承ください」
「もちろん了承しますよ。山賊が心配ですが、そちらの軍ならば危惧する必要もないでしょう」
Szene-02 ブーズ、区長宅
エールタインはルイーサたちとブーズを訪れていた。ヴォルフによる援護について説明するためだ。
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ブーズの民はその様子を目にすると、目じりを下げて安堵の表情を浮かべる。
「ヴォルフに援護をしてもらえるなど、考えたこともありませんでした。ヒルデガルドよ、能力をしっかりと使って剣士様のお役に立っている姿、とても誇らしいですよ」
「ありがとうございます」
ブーズの住民だからこそ思うところがあるのだろう。区長とヒルデガルドは互いに笑みを見せている。
区長と目を合わせたことをきっかけに、ヒルデガルドが言う。
「ヴォルフが援護するに当たり、こちらの森であの子たちの巣を用意したいのですが、よろしいですか?」
「ほう、巣の用意を。どのようにしたら良いのかな?」
「私たちも困っていたのですが、あの子たちがここの森のどこかで決めるそうです。みなさんには、巣を見掛けたら騒がないようにだけ気を付けてもらいたいのです」
「確かに、ヴォルフが決めるべきことですね。では皆に伝えておきましょう」
エールタインとルイーサは、ヒルデガルドが話を進める姿を見ながら、柔らかい笑みを浮かべている。
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