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第三章 平和のための戦い

第二十二話 町長からの手紙

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Szene-01 レアルプドルフ、町役場

「無事ならばそろそろ着く頃ですな。陛下はどのような表情をされるのだろうね」

 町長は案件を受けに来ている剣士たちの声を背に、窓の外を眺めて言った。

「会わずにいる方が良いのかも知れませんが、生きているからこそ満たされるものがある。生きているから実感できる――実感できるのなら、終わりではないですからね」

 呟いていた町長は手を後ろで組むと、窓からゆっくり離れて振り返り、複数のデュオたちでにぎわう様子を眺めていた。

Szene-02 カシカルド王国、カシカルド城王室

 ローデリカに指示された侍女は、女中に急いでティーを用意させて、王室内で会話ができるように支度をした。

「無事に着いて何より。山越えの疲れを癒すには物足りないかもしれぬが、レアルプドルフで飲むものとは一味違うはずだ。口だけでも休ませられるといいが――」

 ローデリカが言い終わるのに合わせて、侍女は並べた二人分の椅子へ座るよう促した。

「従者にまで用意していただき痛み入ります。ではせっかくなので、座らせてもらいなさい」

 剣士は従者にも座るように言った。従者は緊張がひしひしと伝わるような固い動きで、深々とお辞儀をする。

「それにしても、そなたの従者は随分と大人しいようだな。従者なのだから良いことではあるが」
「はい。以前仕えてくれた従者が病で亡くなりまして。その子の後を継いでもらった形になるのですが――」
「ふむ」

 ローデリカは剣士の話を流さず一言一句しっかりと耳を傾けている。

「陛下が面会をご所望されているエールタインの影響で、家族になる子という意識で選んだのがこの子でした」
「おお、エールタイン……そうか、従者に対する考えを受け継いでいたか」

 ローデリカはティーカップを手に取って芳香を楽しむと、目線を天井へ向けて何かを思い浮かべているような仕草をする。
 剣士と従者の二人は、ローデリカがティーに口をつけたのをきっかけに、同じように香りを味わってから口にした。
 剣士は到着して間もないこともあってか、ゴクリと喉をならしてから言う。

「そのエールタインについて、町長から手紙を預かってまいりました」

 従者は淀みない動きで剣士に手紙を渡す。
 手紙を目にしたローデリカは、面会が叶ったような表情をして受け取った。
 侍女がこれもまた無駄のない動きでナイフを差し出すと、ローデリカも普段から行っているとわかる慣れた手つきで開封していく。
 ローデリカが手紙を読み始めると、王室内はしばしの間沈黙に包まれた。
 手持ち無沙汰になってしまった剣士と従者は、交互にティーを飲んで時を誤魔化している。
 剣士たちの飲み干されたティーカップに侍女がティーをつぎ足そうとした時、ローデリカは読み終えた。

「まったく……何もかも見透かしたようなことばかり並べて。あの人も歳をとったということか。ふふ、実に楽しい手紙だ」

 ローデリカは手紙を丁寧に封筒へ戻すと、剣士たちに言った。

「確かにスクリアニアは気になるところだ。しかし町壁が出来た今なら以前よりは気に病むことは無いと言いたいのだが――」

 含みを持たせたままローデリカはティーを一口飲み、話の間を作ってから続けた。

「防御が強化されたことで、それを超える攻撃の準備をさせることにつながる。悪く捉えてしまいがちだが、見方を変えれば意識が変わる」

 ローデリカは立ち上がり、窓際へと移ってから話を続けた。

「今となっては避けられないことなのだから、危惧しても仕方がない。私も町長と同じ考えだ。スクリアニアが準備する間、こちらには時間が出来る。要するにすぐ攻撃されることは無いのだ。ここでエールタインと会わせようというのだから、町長には困ったものだ」

 剣士と従者は分かったような分からないような、複雑な表情をして互いに理解できているかを目で聞き合っている。

「私が会いたい思いを抱いている今、エールタインに会わせる。だがレアルプドルフは守りを固めたい時期だ。町に必要なエールタインを不在にさせるまでしなくても、こちらは初めから手を貸すつもりだぞ、町長!」

 ローデリカは窓から山脈へ向けて、笑い交じりに大きな声を放った。

「さて、こちらの調査員が世話になったお返しをせねばな。二人に良い物を見繕ってあげなさい。荷物持ちを兼ねて護衛も付けよう」

 剣士が慌てて両手を振りながら遠慮する。

「そ、そこまでしていただく必要はございません。この子もいますし」
「何を言う、こちらは以前のお返しをするだけだ。気にせず受け取り、町長に報告して欲しい」

 剣士の顔をまっすぐに見つめ、ローデリカが微笑んで見せた。
 どこか優しさを滲ませる笑みに負けたのか、剣士の遠慮は一度きりとなった。

「では、お言葉に甘えさせていただきます」
「うむ、それでよい」

 ローデリカが侍女に目で合図を送ると、速やかに王室を出て女中と共に支度へ走る。
 改めて剣士たちの前に座り直したローデリカは、レアルプドルフの近況を派遣者ではなく、町民である剣士に直接聞けることを楽しむことにした。
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