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第三章 平和のための戦い

第二十一話 対面と作戦の仕込み

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Szene-01 カシカルド王国、ツヴァイロート

 レアルプドルフの町長からローデリカへの手紙を託された一人の剣士が、カシカルド城のある町ツヴァイロートに到着した。

「王国を意識して来たから、城は大都市にあるものだと思ってたけど、普通の町だったのか」

 無所属の町で育った町民は、ほとんどの者が山脈を越えた経験はない。
 剣士の請け負う案件もほとんどが山脈の中腹までで、まれに峠にある野営地まで旅人や行商人に付き添うことがある程度。
 レアルプドルフを抜けている東西街道は、町から山脈までの間にトゥサイしかない。
 山脈が大きな壁のようになっている上、行商人やトゥサイとの交易があれば事足りていたため、わざわざ山を越える必要がない。
 歩く先に見える別の山脈を背にしたカシカルド城を見つけ、剣士は城を中心に町をキョロキョロと見ながら呟いた。

「これからは山越えも増えそうだな」

Szene-02 レアルプドルフ、ヴォルフ巣穴

 エールタインからダンとの話を伝えられたルイーサとヒルデガルドは、早速ヴォルフにブーズを守る手伝いをお願いするために巣穴を訪れていた。エールタインとティベルダも同行している。

「みんな揃ってるね、元気にしてた?」

 ヴォルフの一家が一頭ずつ巣穴から出てきて、そのままヒルデガルドに触れながら一周する。
 続けてティベルダにも同じように懐いてみせた。

「わあ来てくれた。挨拶してくれるのうれしいな」

 ティベルダが懐いてくるヴォルフを順番に撫でていく。従者二人の次に主人二人へ挨拶をするヴォルフ。

「別にかまわないのだけど、私たちが後なのね」
「しかたないよ、魔獣にしてみれば初めに主人となるのがヒルデガルドだから」
「わかってるの。でもちゃんとこうして来てくれるし、別にかまわないのだけど」

 頭を撫でられているヴォルフは、頭をぐるりと回してルイーサの手に擦りつけると、エールタインへ移動してゆく。
 ヴォルフの口は、人の手ならば難なく頬張れる大きさだ。しかし、懐かれている四人が怯むことは無い。

「可愛いからいいわ」
「ははは。ルイーサは一番じゃないと不満そうだね」
「できれば一番がいいに決まっているじゃない。エールタインにとっても一番だったらって思うわ――あ、今のは忘れて」

 ルイーサは思わず口にしたことを隠したくなったのか、次のヴォルフに気を移したフリをしてごまかした。

「ボクの中では一番の友達だけど。だから一番だよ?」
「……あなたってずるい」
「え、なんでえ?」

 主人二人のやり取りを、ヒルデガルドが楽しそうに見ていた――ティベルダの様子を伺いながら。
 全員に挨拶し終わり、戻って来たヴォルフにヒルデガルドは言った。

「またあなたたちにお願いをしに来たの。できれば遊びだけで来たいのだけど、ごめんね」

 ヒルデガルドは座ったヴォルフに囲まれながら、ブーズのことについて話した。

Szene-03 カシカルド王国、カシカルド城王室

 レアルプドルフから派遣された剣士は、訪れたツヴァイロートの見物をしながらカシカルド城の敷地内へと足を踏み入れる。
 岩肌の山脈を背にしている上、湾曲した川の内側に構えるカシカルド城。
 質素な外観ながらも、城に必要な条件は満たしているように見える。
 敷地の境界から城を回るように敷かれた道には、複数の門が築かれている。
 剣士はそれぞれの門に常駐する門番たちに、門から門へ交代で付き添われて城の内部へと案内される。

「見た目より良く考えられたお城ですね」
「貧弱な砦を改築してようやくここまでになりましたが、まだまだ弱点が多くて。陛下から改築の指示は出っ放しですよ」

 案内をする門番は、ローデリカが贔屓ひいきにしているレアルプドルフからの客人ということで、不出な事情まで話してしまう。

「城の情報は言わない方が良いのでは?」
「おお、余計な心配をおかけしてしまいました。陛下から丁重に扱うよう言われていたのでつい。しかし情報を漏らすという意味ではないですね。失礼しました」

 剣士の方が対応に困ってしまったが、これから会うローデリカの人柄を垣間見たようにも感じる。
 案内役が王室付きの侍女に変わるが、始めの門番から侍女に至るまで丁重な扱いを徹底されながら王室に到着した。侍女が王室の扉を叩く。

「陛下、レアルプドルフの剣士様をお連れしました」
「そうか! 話しの場を用意しなさい」
「かしこまりました」

 侍女が扉を開けると剣士は部屋へ入るよう促され、緊張した面持ちで入室した。
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