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第二章 剣士となりて
第四十二話 始まり
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Szene-01 ハマンルソス山脈、中腹
カシカルド王国の人材調査員は、無事にトゥサイ村を抜けることができた。
トゥサイ村と、カシカルド王国領の間には山脈が立ちはだかる。
ハマンルソス山脈と呼ばれる険しい山を登っていた調査員は、中腹で振り返って眼前に広がる景色を見ると呟いた。
「レアルプドルフ、いい町でしたね。陛下との関係も深そうでしたし」
手前からトゥサイ村、その奥にレアルプドルフが見える。
眺めていると、上方から声を掛けられた。
「大丈夫だったか。遅いから何事かあったのではと心配したぞ」
「すみません。レアルプドルフの町長にもてなしを受けまして。休息と山越えの準備をしてから出発したので遅くなりました」
護衛は調査員の帰りが遅いため、野営地から下りて来たようだ。
通常、カシカルド王国からの使者がレアルプドルフ側へ出向く場合、山賊からの襲撃に備え、峠にある野営地で護衛と待ち合わせている。
しかし調査員はカシカルド王国の使者。
レアルプドルフとの友好を示すため、護衛とは峠の野営地で別れて単独で下山をしていた。
山に差し掛かる辺りまでは、レアルプドルフの剣士たちが案件も含めて見回っている。
峠から下山をすれば、レアルプドルフの管轄内となる。
信用している剣士たちがいる。その安心感が単独での訪問を続けさせていた。
「ほう。では町長との謁見は叶ったのだな」
「はい。陛下のご要望を快諾していただきました。時期を見てとのことでしたが」
「なんと、それは素晴らしい。急いで陛下に伝えよう」
調査員は、ちらりと麓を見てから踵を返した護衛たちに付いていった。
Szene-02 ブーズ、共同保管庫
ダンからの要請により、各家から代表者が共同保管庫に集まっていた。
代表者たちの対面に、ダン一行と区長が並んでいる。
短い白髭を生やした区長は、ダンへの謝罪から始めた。
「こんな所しか無くて申し訳ない」
「いえ、何も問題は無いですよ。話す内容からすれば有り難いぐらいです」
集まった代表者たちにとって、ブーズで剣聖と剣士を目にすることが珍しい。
懐かしそうにする者から緊張を隠せない者まで様々だ。
そして、ブーズ出身であるヘルマ、ティベルダ、ヒルデガルドに目線が集中する。
ダンが自分に向けて指を差し、区長に向けて話し始める合図をした。
「早速で悪いが今回訪れた要件を話させてもらう」
ダンは、町壁をブーズ周辺に作るということだけ伝えた。
町がブーズに対して動いたことを知った代表者たちがざわついている。
その様子には触れず、エールタインの紹介へ移った。
「その指揮をこのエールタインに執ってもらう。彼女はアウフリーゲンの娘だ」
「む、娘だったのですか!?」
代表者の中からそんな声が漏れる。
エールタインについて詳しく知るものはごく限られた者のみだ。
『英雄の子』という言葉に対して、皆が何となく男として想像していたことをダン一行は改めて知る反応だった。
ダンはエールタインの肩に手を置き、話すように促した。
「初めまして、エールタイン・カーベルと申します。町壁の話をする前に話しておきたい事があります。父をよく知る皆さんなら、父がずっとブーズについて訴えていたものをご存じだと思います」
エールタインはティベルダの手をしっかりと握り締めている。
それに答えるように、ティベルダも指を絡ませて一緒にいることを伝えた。
その手を挙げてエールタインは言う。
「それは奴隷という言葉、そして扱いについて改めたいということ。ボクはこのティベルダを家族として迎えています。今回手伝ってもらうルイーサ・マイナードもそのようにしています」
エールタインはルイーサと目を合わせる。
自分の名を出されたルイーサは少し困惑したようだが、すぐに微笑んで見せた。
それからヒルデガルドと手を繋いで見せ、エールタインと同じだということを示す。
「役目としては剣士の支援ですから、従者ではあります。しかし奴隷とは違う。誰よりも信頼でき、剣士と同じもしくはそれ以上の技術を持ったデュオの相棒」
ティベルダと繋いだ手を見せながら話すエールタイン。
代表者たちは黙って聞き入っていた。
「ボクはとても大事な存在だと実感しています。嬉しい事に剣士の間では、徐々に従者の扱いが変わってきています。いずれ全剣士が大切な相棒として迎え入れるように、父に代わって訴え続けていきます」
代表者の一人が拍手をする。
他の者も続いて拍手をし、保管庫の中で鳴り響いた。
エールタインは空いている手で拍手を抑えさせる。
「外に響きますので。でも、ボクの考えを受け入れてもらえて嬉しいです。こんな剣士もいるって事を知ってもらえればと思います」
エールタインは話を続ける。
「えっと、いきなり言いたいことを伝えてしまってごめんなさい。それでは町壁の増築についてお話していきましょう」
本題の町壁について話を移すエールタイン。
代表者たちは改めて姿勢を正し、エールタインの話に真剣な眼差しで聞き入っていた。
カシカルド王国の人材調査員は、無事にトゥサイ村を抜けることができた。
トゥサイ村と、カシカルド王国領の間には山脈が立ちはだかる。
ハマンルソス山脈と呼ばれる険しい山を登っていた調査員は、中腹で振り返って眼前に広がる景色を見ると呟いた。
「レアルプドルフ、いい町でしたね。陛下との関係も深そうでしたし」
手前からトゥサイ村、その奥にレアルプドルフが見える。
眺めていると、上方から声を掛けられた。
「大丈夫だったか。遅いから何事かあったのではと心配したぞ」
「すみません。レアルプドルフの町長にもてなしを受けまして。休息と山越えの準備をしてから出発したので遅くなりました」
護衛は調査員の帰りが遅いため、野営地から下りて来たようだ。
通常、カシカルド王国からの使者がレアルプドルフ側へ出向く場合、山賊からの襲撃に備え、峠にある野営地で護衛と待ち合わせている。
しかし調査員はカシカルド王国の使者。
レアルプドルフとの友好を示すため、護衛とは峠の野営地で別れて単独で下山をしていた。
山に差し掛かる辺りまでは、レアルプドルフの剣士たちが案件も含めて見回っている。
峠から下山をすれば、レアルプドルフの管轄内となる。
信用している剣士たちがいる。その安心感が単独での訪問を続けさせていた。
「ほう。では町長との謁見は叶ったのだな」
「はい。陛下のご要望を快諾していただきました。時期を見てとのことでしたが」
「なんと、それは素晴らしい。急いで陛下に伝えよう」
調査員は、ちらりと麓を見てから踵を返した護衛たちに付いていった。
Szene-02 ブーズ、共同保管庫
ダンからの要請により、各家から代表者が共同保管庫に集まっていた。
代表者たちの対面に、ダン一行と区長が並んでいる。
短い白髭を生やした区長は、ダンへの謝罪から始めた。
「こんな所しか無くて申し訳ない」
「いえ、何も問題は無いですよ。話す内容からすれば有り難いぐらいです」
集まった代表者たちにとって、ブーズで剣聖と剣士を目にすることが珍しい。
懐かしそうにする者から緊張を隠せない者まで様々だ。
そして、ブーズ出身であるヘルマ、ティベルダ、ヒルデガルドに目線が集中する。
ダンが自分に向けて指を差し、区長に向けて話し始める合図をした。
「早速で悪いが今回訪れた要件を話させてもらう」
ダンは、町壁をブーズ周辺に作るということだけ伝えた。
町がブーズに対して動いたことを知った代表者たちがざわついている。
その様子には触れず、エールタインの紹介へ移った。
「その指揮をこのエールタインに執ってもらう。彼女はアウフリーゲンの娘だ」
「む、娘だったのですか!?」
代表者の中からそんな声が漏れる。
エールタインについて詳しく知るものはごく限られた者のみだ。
『英雄の子』という言葉に対して、皆が何となく男として想像していたことをダン一行は改めて知る反応だった。
ダンはエールタインの肩に手を置き、話すように促した。
「初めまして、エールタイン・カーベルと申します。町壁の話をする前に話しておきたい事があります。父をよく知る皆さんなら、父がずっとブーズについて訴えていたものをご存じだと思います」
エールタインはティベルダの手をしっかりと握り締めている。
それに答えるように、ティベルダも指を絡ませて一緒にいることを伝えた。
その手を挙げてエールタインは言う。
「それは奴隷という言葉、そして扱いについて改めたいということ。ボクはこのティベルダを家族として迎えています。今回手伝ってもらうルイーサ・マイナードもそのようにしています」
エールタインはルイーサと目を合わせる。
自分の名を出されたルイーサは少し困惑したようだが、すぐに微笑んで見せた。
それからヒルデガルドと手を繋いで見せ、エールタインと同じだということを示す。
「役目としては剣士の支援ですから、従者ではあります。しかし奴隷とは違う。誰よりも信頼でき、剣士と同じもしくはそれ以上の技術を持ったデュオの相棒」
ティベルダと繋いだ手を見せながら話すエールタイン。
代表者たちは黙って聞き入っていた。
「ボクはとても大事な存在だと実感しています。嬉しい事に剣士の間では、徐々に従者の扱いが変わってきています。いずれ全剣士が大切な相棒として迎え入れるように、父に代わって訴え続けていきます」
代表者の一人が拍手をする。
他の者も続いて拍手をし、保管庫の中で鳴り響いた。
エールタインは空いている手で拍手を抑えさせる。
「外に響きますので。でも、ボクの考えを受け入れてもらえて嬉しいです。こんな剣士もいるって事を知ってもらえればと思います」
エールタインは話を続ける。
「えっと、いきなり言いたいことを伝えてしまってごめんなさい。それでは町壁の増築についてお話していきましょう」
本題の町壁について話を移すエールタイン。
代表者たちは改めて姿勢を正し、エールタインの話に真剣な眼差しで聞き入っていた。
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