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第二章 剣士となりて
第十三話 初めての仕事探し
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Szene-01 レアルプドルフ、町役場
エールタインは掲示板に所狭しと貼られた依頼書を眺めている。
従者であるティベルダも恰好を真似して眺めていた。
「……仕事?」
「そのようですね」
ルイーサは、エールタインたちが役場に来た理由も分からず付いてきた。
二人の動きを見てようやく分かったらしい。
「確かに剣士になったのだから、仕事……よね」
「寧ろ仕事、かと」
ゆっくりと掲示板へ向けて歩き出したルイーサにヒルデガルドが続く。
ルイーサは一枚ずつ丁寧に読んでゆくエールタインの隣へと近づいた。
「色々あり過ぎて迷うね。初めてだから簡単なものにしようか」
「その方が良いと思います。仕事となるとなんだか緊張しますし……」
エールタインはティベルダの頭を撫でて言う。
「そうだね、なんだろ。妙に緊張する」
撫でる手を、背中へと長く垂れた髪に変えるエールタイン。
軽く掴んでは髪をさらさらと滑らせる。
感触を楽しんでいるのだろうか。
弄られているティベルダは微笑みが絶えない。
主人に構ってもらえているからか、とても機嫌が良いようだ。
「仕事を探しているの?」
ルイーサはエールタインに答えを知っている問いを投げた。
「そうだよ。ルイーサは違うの?」
「私は……私も剣士になったことだし、仕事をしないとと思って」
エールタインはティベルダの髪弄りを続けながらルイーサへ振り向いた。
「だよね! ティベルダの里へ行ったらさ、なんだか剣士であることの重みを実感したんだ」
いきなり張りのある声で返されたルイーサは少しビクッと震えた。
「ブーズへ行ったのよね。いきなり動くから、あなたにはハラハラさせられるわ」
「あれ? 行ったことルイーサに伝えたっけ」
一瞬ハッとしたルイーサだが、平静を装って答える。
「いいえ、聞いていないわよ。なぜそういうことを早く教えてくれないの?」
ルイーサは逆に問い返すことでかわすことにした模様。
「え、いや……なんかごめん」
エールタインは頭だけ軽く下げて謝った。
ティベルダの髪の毛からは手を離さずに。
「私も引っ越しのことを教えていなかったからお相子ね。少し言い過ぎだったわ」
二人のやりとりを聞いているティベルダの表情に陰りが見え始めた。
エールタインに髪を撫でられているために、かろうじて抑えているようだが。
「家が近いなら話もしやすいね。仕事のこともあるし、お話できると助かるなあ」
「私は初めからそのつもり。色々な面で連携していきましょう」
エールタインの袖をティベルダが掴んだ。
それを見たヒルデガルドもルイーサの袖を掴む。
「何、ヒルデ?」
「仕事、どうします?」
「そうね……私たちも初めてだから簡単なものから――」
ヒルデガルドはティベルダにウインクをしてみせた。
どうやらティベルダに気を使ったとみえる。
ティベルダは意図をくみ取ったらしく、ウインクで返そうとした。
「うふふ」
ティベルダはウインクができないので、両目をパチパチとさせている。
それを見てヒルデガルドは笑ってしまった。
「気持ち悪いわね、急に笑い出したりして。何か面白い仕事でもあったの?」
「エールタイン様と連携する良い機会ではないですか?」
ティベルダに気を使ったはずのヒルデガルドは一転、主人の気持ちを満たそうと試みる。
目をぱちくりさせていたティベルダが不思議そうな顔でヒルデガルドを見た。
ヒルデガルドは苦笑いをして謝罪をする。
しかしティベルダは頬を膨らませてしまった。
「ティベルダは何を怒っているの? ちゃんとボクの手伝いをしなよ」
膨れた顔のまま主人の顔を見るティベルダ。
エールタインは思わず噴いた。
「あはは。そんな顔でも可愛いね。でもだーめ!」
エールタインはティベルダの膨れた頬を両手で挟んでしぼませた。
ぷしゅるるる――――
小さな口から空気が抜けてゆく。
エールタインは両手で挟んだまま顔を近づけようとした。
「あ……危ない。ついしちゃうところだった」
「しないんですか?」
「ここでは、ね。ティベルダは可愛いから困る」
頬を挟まれたまま笑みを作るティベルダは主人に問う。
「困らせているのですか?」
「うーん、あんまり困ってはいない。ただ場所を選ばないといけないから……困るんだ」
「私はいつでも構いませんよ?」
「知ってる……ああもう! 帰ったらね」
ティベルダは挟まれてとんがり気味な唇で、
「やった!」
と喜んでみせる。
エールタインは、何かをするのを我慢してティベルダの頭を抱えた。
「あなたたち、ここですることではないでしょ」
ヒルデガルドにしっかりと腕を組まれながら言うルイーサに説得力は無かった。
そんな二組のデュオをカウンターからじっと受付係は眺めている。
「ヒルデガルドとティベルダは幸せそうね」
受付係は様々な奴隷たちを知っている。
彼女が送り出した二人の少女を見て、安堵したようだ。
「お仕事は初めてですよね。お手伝いしましょうか?」
受付係が二組の新人剣士に助け船を出しに向かった。
エールタインは掲示板に所狭しと貼られた依頼書を眺めている。
従者であるティベルダも恰好を真似して眺めていた。
「……仕事?」
「そのようですね」
ルイーサは、エールタインたちが役場に来た理由も分からず付いてきた。
二人の動きを見てようやく分かったらしい。
「確かに剣士になったのだから、仕事……よね」
「寧ろ仕事、かと」
ゆっくりと掲示板へ向けて歩き出したルイーサにヒルデガルドが続く。
ルイーサは一枚ずつ丁寧に読んでゆくエールタインの隣へと近づいた。
「色々あり過ぎて迷うね。初めてだから簡単なものにしようか」
「その方が良いと思います。仕事となるとなんだか緊張しますし……」
エールタインはティベルダの頭を撫でて言う。
「そうだね、なんだろ。妙に緊張する」
撫でる手を、背中へと長く垂れた髪に変えるエールタイン。
軽く掴んでは髪をさらさらと滑らせる。
感触を楽しんでいるのだろうか。
弄られているティベルダは微笑みが絶えない。
主人に構ってもらえているからか、とても機嫌が良いようだ。
「仕事を探しているの?」
ルイーサはエールタインに答えを知っている問いを投げた。
「そうだよ。ルイーサは違うの?」
「私は……私も剣士になったことだし、仕事をしないとと思って」
エールタインはティベルダの髪弄りを続けながらルイーサへ振り向いた。
「だよね! ティベルダの里へ行ったらさ、なんだか剣士であることの重みを実感したんだ」
いきなり張りのある声で返されたルイーサは少しビクッと震えた。
「ブーズへ行ったのよね。いきなり動くから、あなたにはハラハラさせられるわ」
「あれ? 行ったことルイーサに伝えたっけ」
一瞬ハッとしたルイーサだが、平静を装って答える。
「いいえ、聞いていないわよ。なぜそういうことを早く教えてくれないの?」
ルイーサは逆に問い返すことでかわすことにした模様。
「え、いや……なんかごめん」
エールタインは頭だけ軽く下げて謝った。
ティベルダの髪の毛からは手を離さずに。
「私も引っ越しのことを教えていなかったからお相子ね。少し言い過ぎだったわ」
二人のやりとりを聞いているティベルダの表情に陰りが見え始めた。
エールタインに髪を撫でられているために、かろうじて抑えているようだが。
「家が近いなら話もしやすいね。仕事のこともあるし、お話できると助かるなあ」
「私は初めからそのつもり。色々な面で連携していきましょう」
エールタインの袖をティベルダが掴んだ。
それを見たヒルデガルドもルイーサの袖を掴む。
「何、ヒルデ?」
「仕事、どうします?」
「そうね……私たちも初めてだから簡単なものから――」
ヒルデガルドはティベルダにウインクをしてみせた。
どうやらティベルダに気を使ったとみえる。
ティベルダは意図をくみ取ったらしく、ウインクで返そうとした。
「うふふ」
ティベルダはウインクができないので、両目をパチパチとさせている。
それを見てヒルデガルドは笑ってしまった。
「気持ち悪いわね、急に笑い出したりして。何か面白い仕事でもあったの?」
「エールタイン様と連携する良い機会ではないですか?」
ティベルダに気を使ったはずのヒルデガルドは一転、主人の気持ちを満たそうと試みる。
目をぱちくりさせていたティベルダが不思議そうな顔でヒルデガルドを見た。
ヒルデガルドは苦笑いをして謝罪をする。
しかしティベルダは頬を膨らませてしまった。
「ティベルダは何を怒っているの? ちゃんとボクの手伝いをしなよ」
膨れた顔のまま主人の顔を見るティベルダ。
エールタインは思わず噴いた。
「あはは。そんな顔でも可愛いね。でもだーめ!」
エールタインはティベルダの膨れた頬を両手で挟んでしぼませた。
ぷしゅるるる――――
小さな口から空気が抜けてゆく。
エールタインは両手で挟んだまま顔を近づけようとした。
「あ……危ない。ついしちゃうところだった」
「しないんですか?」
「ここでは、ね。ティベルダは可愛いから困る」
頬を挟まれたまま笑みを作るティベルダは主人に問う。
「困らせているのですか?」
「うーん、あんまり困ってはいない。ただ場所を選ばないといけないから……困るんだ」
「私はいつでも構いませんよ?」
「知ってる……ああもう! 帰ったらね」
ティベルダは挟まれてとんがり気味な唇で、
「やった!」
と喜んでみせる。
エールタインは、何かをするのを我慢してティベルダの頭を抱えた。
「あなたたち、ここですることではないでしょ」
ヒルデガルドにしっかりと腕を組まれながら言うルイーサに説得力は無かった。
そんな二組のデュオをカウンターからじっと受付係は眺めている。
「ヒルデガルドとティベルダは幸せそうね」
受付係は様々な奴隷たちを知っている。
彼女が送り出した二人の少女を見て、安堵したようだ。
「お仕事は初めてですよね。お手伝いしましょうか?」
受付係が二組の新人剣士に助け船を出しに向かった。
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