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第二章 剣士となりて
第四話 英雄が生み出した絆
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Szene-01 レアルプドルフ三番地区、エールタイン生家
ダン家一行はエールタイン生家敷地内にあるアウフリーゲンの墓前にいる。
アウフリーゲンと仲の良かったダンは彼の生前、毎日のように話し合っていた。
その中で毎度溺愛するエールタインについて聞かされた。
ダンはエールタインを引き取ることをアウフリーゲンに頼まれなくてもしていたであろう。
そしてエールタインは成長し、剣士となった。
ダンの目の前で父に報告をするエールタインを見て目を潤ませていた。
「ダン、さま?」
隣にいるヘルマはダンの変化には敏感だ。
目を潤ませていることに気づいたのかもしれない。
「ん?」
ダンはヘルマに反応を返しつつもヘルマとは別の方向へ目をやった。
「私にぐらい隠さないでくださいな」
「お前はたまによくわからないことを言うな」
「そうですか? ダン様のことは誰よりも分かっているつもりでしたが」
方向は変えずに目線を少し上に向けるダン。
「まだまだだな。もっと助手として精進するように」
「はあい。もっとがんばりまーす」
ヘルマは少し茶化し気味に返事をした。
墓前ではエールタインに紹介されたティベルダが緊張しながら挨拶をしている。
「エ、エールタイン様に選ばれた奴隷の、ティ、ティ、ティベルダと申す……申します」
ぺこりとお辞儀をするティベルダ。
エールタインとヨハナがクスクスと笑う。
「ティベルダどうしたの、そんなに緊張しちゃって」
ヨハナに問われるティベルダ。
長いお辞儀から頭を上げてヨハナを見る。
「だ、だって、レアルプドルフの英雄様ですよ! 剣聖様ですよ! エールタイン様のお父様ですよ!」
ティベルダは両拳を握りしめて上下に振り、興奮して言う。
「あ……私、そんなすごい方の娘様に選ばれた奴隷なのですね。あ、あわ、あわわ」
緊張が限界に達してしまったのだろうか。
まともに話せなくなっていくティベルダの肩をエールタインが抱えた。
「そんなこと気にしない子かと思っていたよ。今、父は笑っているんじゃないかな」
エールタインは言う。
「ボクも父を尊敬している一人としていうとね、この英雄の娘に付く従者として文句なし。あれだけの能力を持っていてダン家のみんなを楽しませてくれている。立派なんだぞ、ティベルダは」
ティベルダを自身の前に来させて父に語りかけるエールタイン。
「父さん。こんなに可愛いくて頼りになる子が来てくれましたよ。わかっているよ、ボクが剣士にふさわしい腕を付けないといけないんだよね」
ヨハナの片目から一筋の涙がこぼれた。
その様子にも気づいたのか、ヘルマが声をかける。
「ヨハナ、涙が止まらないわねえ」
「しょうがないじゃない。こんな光景、一番見たかったのはアウフ様のはず」
こぼれる涙も気にせず続けるヨハナ。
「もちろん今見ていらっしゃるとは思うけれど、代わりに私が見ているとも言える。アウフ様に仕えたからこそ私はここにいるの……」
ヘルマが近寄りヨハナの肩を抱く。
ヨハナはようやく涙を拭いた。
その場にいる全員が温かい気持ちに包まれていく。
英雄は今でも従者を家族とするという意思により、新しい従者も喜んで迎え入れたようだ。
Szene-02 ダン家
墓参りをした五人はダン家に戻った。
エールタインたちは新居に持って行く荷物を整理しようとしていた。
そこへダンが来てエールタインに声をかける。
「エール、ちょっといいか」
「いいけど、何か話でもあるの?」
「ああ。まだ言っておかねばならんことがあってな」
「ティベルダ、ちょっとの間一人だけどお願いできる?」
ティベルダはキリッとした表情でエールタインを見る。
「頑張ります!」
「う、うん。なるべく早く戻ってくるからね」
軽く謝る仕草をしながらエールタインは部屋を出た。
ダンとエールタインは暖炉の部屋へと移動した。
「ティベルダについてだ。知っているとは思うが剣士は従者の家族に資金援助をしている」
「うん、ヨハナから軽くだけど聞いたことがあるよ」
レアルプドルフでは、剣士に仕える奴隷の実家に資金援助をする。
上乗せ金は主人への貢献度に応じて基本金に上乗せされる。
今までは師匠であるダンがティベルダ分も出していた。
これからは剣士になったエールタインが援助金を送ることとなる。
「そういうことだったんだね。でもティベルダに何かしてあげたい気持ちがあったから、これからはボクからそれができるのは嬉しいかも」
「お前は優しいなあ。たいていの奴は……まあ特に男だが、あまりいい顔をしない」
ダンはやれやれという仕草をする。
「やっぱり奴隷と思っているからだろうね。ボクは感謝の気持ちを表せたらと思うし……そうだ! ダン、ティベルダの家族に会ってもいいかな?」
エールタインは目を輝かせてダンに尋ねる。
「そこまでするか……ブーズの連中はこちらを良く思っていないことも多い。その辺りをティベルダに聞いてからなら構わないが」
少し顔を綻ばせてダンは続ける。
「まったく、エールらしいな。そこまでする奴は珍しいぞ」
「えへへ。あちらの様子に合わせて動くね。無理にすることでは無いからさ」
ティベルダの実家に行くという提案をしたエールタイン。
アウフリーゲンの意思をしっかりと受け継いでいるようだ。
ダン家一行はエールタイン生家敷地内にあるアウフリーゲンの墓前にいる。
アウフリーゲンと仲の良かったダンは彼の生前、毎日のように話し合っていた。
その中で毎度溺愛するエールタインについて聞かされた。
ダンはエールタインを引き取ることをアウフリーゲンに頼まれなくてもしていたであろう。
そしてエールタインは成長し、剣士となった。
ダンの目の前で父に報告をするエールタインを見て目を潤ませていた。
「ダン、さま?」
隣にいるヘルマはダンの変化には敏感だ。
目を潤ませていることに気づいたのかもしれない。
「ん?」
ダンはヘルマに反応を返しつつもヘルマとは別の方向へ目をやった。
「私にぐらい隠さないでくださいな」
「お前はたまによくわからないことを言うな」
「そうですか? ダン様のことは誰よりも分かっているつもりでしたが」
方向は変えずに目線を少し上に向けるダン。
「まだまだだな。もっと助手として精進するように」
「はあい。もっとがんばりまーす」
ヘルマは少し茶化し気味に返事をした。
墓前ではエールタインに紹介されたティベルダが緊張しながら挨拶をしている。
「エ、エールタイン様に選ばれた奴隷の、ティ、ティ、ティベルダと申す……申します」
ぺこりとお辞儀をするティベルダ。
エールタインとヨハナがクスクスと笑う。
「ティベルダどうしたの、そんなに緊張しちゃって」
ヨハナに問われるティベルダ。
長いお辞儀から頭を上げてヨハナを見る。
「だ、だって、レアルプドルフの英雄様ですよ! 剣聖様ですよ! エールタイン様のお父様ですよ!」
ティベルダは両拳を握りしめて上下に振り、興奮して言う。
「あ……私、そんなすごい方の娘様に選ばれた奴隷なのですね。あ、あわ、あわわ」
緊張が限界に達してしまったのだろうか。
まともに話せなくなっていくティベルダの肩をエールタインが抱えた。
「そんなこと気にしない子かと思っていたよ。今、父は笑っているんじゃないかな」
エールタインは言う。
「ボクも父を尊敬している一人としていうとね、この英雄の娘に付く従者として文句なし。あれだけの能力を持っていてダン家のみんなを楽しませてくれている。立派なんだぞ、ティベルダは」
ティベルダを自身の前に来させて父に語りかけるエールタイン。
「父さん。こんなに可愛いくて頼りになる子が来てくれましたよ。わかっているよ、ボクが剣士にふさわしい腕を付けないといけないんだよね」
ヨハナの片目から一筋の涙がこぼれた。
その様子にも気づいたのか、ヘルマが声をかける。
「ヨハナ、涙が止まらないわねえ」
「しょうがないじゃない。こんな光景、一番見たかったのはアウフ様のはず」
こぼれる涙も気にせず続けるヨハナ。
「もちろん今見ていらっしゃるとは思うけれど、代わりに私が見ているとも言える。アウフ様に仕えたからこそ私はここにいるの……」
ヘルマが近寄りヨハナの肩を抱く。
ヨハナはようやく涙を拭いた。
その場にいる全員が温かい気持ちに包まれていく。
英雄は今でも従者を家族とするという意思により、新しい従者も喜んで迎え入れたようだ。
Szene-02 ダン家
墓参りをした五人はダン家に戻った。
エールタインたちは新居に持って行く荷物を整理しようとしていた。
そこへダンが来てエールタインに声をかける。
「エール、ちょっといいか」
「いいけど、何か話でもあるの?」
「ああ。まだ言っておかねばならんことがあってな」
「ティベルダ、ちょっとの間一人だけどお願いできる?」
ティベルダはキリッとした表情でエールタインを見る。
「頑張ります!」
「う、うん。なるべく早く戻ってくるからね」
軽く謝る仕草をしながらエールタインは部屋を出た。
ダンとエールタインは暖炉の部屋へと移動した。
「ティベルダについてだ。知っているとは思うが剣士は従者の家族に資金援助をしている」
「うん、ヨハナから軽くだけど聞いたことがあるよ」
レアルプドルフでは、剣士に仕える奴隷の実家に資金援助をする。
上乗せ金は主人への貢献度に応じて基本金に上乗せされる。
今までは師匠であるダンがティベルダ分も出していた。
これからは剣士になったエールタインが援助金を送ることとなる。
「そういうことだったんだね。でもティベルダに何かしてあげたい気持ちがあったから、これからはボクからそれができるのは嬉しいかも」
「お前は優しいなあ。たいていの奴は……まあ特に男だが、あまりいい顔をしない」
ダンはやれやれという仕草をする。
「やっぱり奴隷と思っているからだろうね。ボクは感謝の気持ちを表せたらと思うし……そうだ! ダン、ティベルダの家族に会ってもいいかな?」
エールタインは目を輝かせてダンに尋ねる。
「そこまでするか……ブーズの連中はこちらを良く思っていないことも多い。その辺りをティベルダに聞いてからなら構わないが」
少し顔を綻ばせてダンは続ける。
「まったく、エールらしいな。そこまでする奴は珍しいぞ」
「えへへ。あちらの様子に合わせて動くね。無理にすることでは無いからさ」
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