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Folge 97 饅頭
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ぶ、無事に帰宅した。
全員が無言のままリビングに雪崩れ込む。
荷物を手放すなり、その場で倒れていった。
オレも同じ状況。
でも、全員の状況だけは把握しておきたい。
最後に目を瞑ったタケルを見るまでは起きたぞ。
そして、暗転――――
「ん~、ん~、はぁむっ! はむはむ……」
ウチって猫飼っていたっけ。
ちょいと大型のようだけど。
「はむはむ。んふふ、はぁむっ! はぁむっ!」
えっと。
ほっべたスリスリされて、甘噛み。
甘噛みされて甘噛み。
そして甘噛み。
甘噛みの後に吸い付かれて引っ張られる。
夢で饅頭でも食べているんだろうか。
そろそろ唾臭くなってきている。
でもね、嬉しい。
こういうことをするのは、ツィスカしかいない。
カルラは寝ぼけていても、ここまでのことは――――
「はぁむっ! んーまっ! はむはむはむはむ……」
おかしいな。
こちらはカルラのはず。
ツィスカと同じことをしているぞ。
目を開ければ済むことなのだが。
心地はいいんだよね、これ。
放っておくと酷い顔になりそうだ。
さすがに起きますか。
重い瞼を上げてみる。
…………うっわぁ。
激可愛い顔二つがほっぺたに吸い付いている。
アップ過ぎてボヤけているけど激可愛いことは分かる。
凄い妹だ。
はぁ、幸せ。
それにしても、二人とも饅頭食べているのかな。
お餅になった気分だよ。
「サダメちゃん、ミルク飲むからじっとしていてね、むにゃむにゃ……」
そこまではっきりと寝言を言わないでくれよ、美咲。
おまけにミルク飲んじゃだめだから。
ミルク飲まなくてもゆっくり出来ただろ?
まったく。
「サダメはボクの。サダメはね、ボクのなんだよ。サダメは、ボ……」」
咲乃は独占アピール。
ふむ。
なんだか嬉しい。
それだけ好きなのが分かるからね。
「兄ちゃん、僕もね、大好きなんだよ。分かってる? 僕も、……なん……てる?」
こいつら、寝言の域を超えているだろ。
なんで寝ているのに気持ちを伝えられるんだ?
全員の気持ちを伝えられちゃったよ。
すでに知っていることばかりだけども。
「それにしても、はむはむが止まらないな」
妹たちのおやつタイムが終わってくれない。
可愛い。
あ、携帯端末が鳴っている。
めっずらしい。
オレに電話を掛ける奴なんていたっけ。
裕二ですら掛けてこないのに。
いや、裕二ならば出ないけどな。
「もしもし?」
『あら、サダメ? 何よ、寝ていたの?』
掛けてくる人いたな。
親だ。
「ああちょっとね。旅行から帰ってきて疲れちゃってさ」
『旅行!? 珍しい。そういうことをするようになったのねえ』
親のアンタらが連れて行かないから珍しいことになっちまったんだろ?
こんにゃろ。
『それで? 他の可愛い三人は元気?』
「妹は今寝ながらオレを食べていて、弟はオレに告白しながら寝ているよ」
『あらまぁ。相変わらず仲がいいのね』
「ところで、こっちより珍しいそちらの電話なんだが、何?」
『そうそう。サダメにキスしたくて帰ろうと思うのよ』
……そうなんだ。
ウチがキスだらけな理由。
この母親が植え付けたと言っても過言ではない。
今、帰るって言ったな。
マジかよ。
『なあに? 黙っちゃって。嬉し過ぎて言葉が出ないの?』
「まあ、そんなとこだよ。帰ってくるなら色々と話しがあるんだけど」
『はいはい。いつもごめんね。サダメからの話を聞くために帰るんだから、色々話して』
「相談もあるから」
『へえ。そういうの親らしいことが出来るからしてして!』
「相談事を喜ぶなよ。母ちゃんなら何を言っても驚かないだろうけど」
『あらやだ。ママって言ってくれないの?』
「高一だからね。さすがにママは無いだろうと思って」
『家族だけの時はいいじゃないの。私はママがいいなあ』
そう。
ママと呼んでいる。
よって、父親はパパだ。
これは親からのリクエスト。
パパママで呼ばないと拗ねる。
「そうだね、外では勘弁してくれる?」
『オーケー。その気持ちは分かるからいいわよ』
実は、この母親。
ドイツ人だ。
オレが言うのもなんだけど、超美人でカッコいい。
子供として誇れる程だ。
さすが弟妹を産んだ人なだけのことはある。
そして、長男のオレを弟妹よりも溺愛している。
ひょっとしたら父親よりも愛されているかもしれない。
『帰るのが楽しみだわあ。ああそうそう。パパも合わせて帰るそうだから』
「そうなの?」
『ママが帰るならオレもなんとかするっ! って気合入っていたわ』
両親はほとんど離れているけれど、仲はすこぶる良い。
そっか。
二年ぶりだっけ。
中学の卒業式と高校の入学式は二人とも欠席。
修学旅行だとか、色々と親抜きで過ごしてきている。
その親が帰ってくるんだ。
弟妹もテンション上がるなあ。
そして、さくみさを紹介しなければ。
ちょうどタイミングは良かったかも。
悩みを聞いてもらおうかな。
全員が無言のままリビングに雪崩れ込む。
荷物を手放すなり、その場で倒れていった。
オレも同じ状況。
でも、全員の状況だけは把握しておきたい。
最後に目を瞑ったタケルを見るまでは起きたぞ。
そして、暗転――――
「ん~、ん~、はぁむっ! はむはむ……」
ウチって猫飼っていたっけ。
ちょいと大型のようだけど。
「はむはむ。んふふ、はぁむっ! はぁむっ!」
えっと。
ほっべたスリスリされて、甘噛み。
甘噛みされて甘噛み。
そして甘噛み。
甘噛みの後に吸い付かれて引っ張られる。
夢で饅頭でも食べているんだろうか。
そろそろ唾臭くなってきている。
でもね、嬉しい。
こういうことをするのは、ツィスカしかいない。
カルラは寝ぼけていても、ここまでのことは――――
「はぁむっ! んーまっ! はむはむはむはむ……」
おかしいな。
こちらはカルラのはず。
ツィスカと同じことをしているぞ。
目を開ければ済むことなのだが。
心地はいいんだよね、これ。
放っておくと酷い顔になりそうだ。
さすがに起きますか。
重い瞼を上げてみる。
…………うっわぁ。
激可愛い顔二つがほっぺたに吸い付いている。
アップ過ぎてボヤけているけど激可愛いことは分かる。
凄い妹だ。
はぁ、幸せ。
それにしても、二人とも饅頭食べているのかな。
お餅になった気分だよ。
「サダメちゃん、ミルク飲むからじっとしていてね、むにゃむにゃ……」
そこまではっきりと寝言を言わないでくれよ、美咲。
おまけにミルク飲んじゃだめだから。
ミルク飲まなくてもゆっくり出来ただろ?
まったく。
「サダメはボクの。サダメはね、ボクのなんだよ。サダメは、ボ……」」
咲乃は独占アピール。
ふむ。
なんだか嬉しい。
それだけ好きなのが分かるからね。
「兄ちゃん、僕もね、大好きなんだよ。分かってる? 僕も、……なん……てる?」
こいつら、寝言の域を超えているだろ。
なんで寝ているのに気持ちを伝えられるんだ?
全員の気持ちを伝えられちゃったよ。
すでに知っていることばかりだけども。
「それにしても、はむはむが止まらないな」
妹たちのおやつタイムが終わってくれない。
可愛い。
あ、携帯端末が鳴っている。
めっずらしい。
オレに電話を掛ける奴なんていたっけ。
裕二ですら掛けてこないのに。
いや、裕二ならば出ないけどな。
「もしもし?」
『あら、サダメ? 何よ、寝ていたの?』
掛けてくる人いたな。
親だ。
「ああちょっとね。旅行から帰ってきて疲れちゃってさ」
『旅行!? 珍しい。そういうことをするようになったのねえ』
親のアンタらが連れて行かないから珍しいことになっちまったんだろ?
こんにゃろ。
『それで? 他の可愛い三人は元気?』
「妹は今寝ながらオレを食べていて、弟はオレに告白しながら寝ているよ」
『あらまぁ。相変わらず仲がいいのね』
「ところで、こっちより珍しいそちらの電話なんだが、何?」
『そうそう。サダメにキスしたくて帰ろうと思うのよ』
……そうなんだ。
ウチがキスだらけな理由。
この母親が植え付けたと言っても過言ではない。
今、帰るって言ったな。
マジかよ。
『なあに? 黙っちゃって。嬉し過ぎて言葉が出ないの?』
「まあ、そんなとこだよ。帰ってくるなら色々と話しがあるんだけど」
『はいはい。いつもごめんね。サダメからの話を聞くために帰るんだから、色々話して』
「相談もあるから」
『へえ。そういうの親らしいことが出来るからしてして!』
「相談事を喜ぶなよ。母ちゃんなら何を言っても驚かないだろうけど」
『あらやだ。ママって言ってくれないの?』
「高一だからね。さすがにママは無いだろうと思って」
『家族だけの時はいいじゃないの。私はママがいいなあ』
そう。
ママと呼んでいる。
よって、父親はパパだ。
これは親からのリクエスト。
パパママで呼ばないと拗ねる。
「そうだね、外では勘弁してくれる?」
『オーケー。その気持ちは分かるからいいわよ』
実は、この母親。
ドイツ人だ。
オレが言うのもなんだけど、超美人でカッコいい。
子供として誇れる程だ。
さすが弟妹を産んだ人なだけのことはある。
そして、長男のオレを弟妹よりも溺愛している。
ひょっとしたら父親よりも愛されているかもしれない。
『帰るのが楽しみだわあ。ああそうそう。パパも合わせて帰るそうだから』
「そうなの?」
『ママが帰るならオレもなんとかするっ! って気合入っていたわ』
両親はほとんど離れているけれど、仲はすこぶる良い。
そっか。
二年ぶりだっけ。
中学の卒業式と高校の入学式は二人とも欠席。
修学旅行だとか、色々と親抜きで過ごしてきている。
その親が帰ってくるんだ。
弟妹もテンション上がるなあ。
そして、さくみさを紹介しなければ。
ちょうどタイミングは良かったかも。
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