【新作】読切超短編集 1分で読める！！！

予測裁判

R氏はある建物の一角の部屋を訪れた。

スーツ姿の男が1人、机の前に座って待っていた。



「これくらいの予算で、
　こういう内容なのだが、どうだろうか。
　担当者はこの人で…」






Ｒ氏が言った内容を、コンピュータへ
打ち込んだ男は、画面を確認し、こう返した。


「なるほど、それならば
　あなたの勝てる確率は30%と
　言ったところのようです。

　担当者を変え、予算を倍にしても、
　40%くらいでしょう。

　私どもの予測はAIを活用し、
　ビッグデータをもとに即座に分析できる
　非常に正確なものです。

　お金をドブに捨てる事になります。
　やめておいた方が良いでしょう。」






R氏はそっと胸を撫で下ろした。
20××年、このようなサービスが流行している。

AIの力で、
訴訟を起こす前に、結果を分析するというもの。
「予測裁判サービス」という名前。

初めは占い程度の気持ちで始まったものだったが、
やがてそれは予算も規模も大きくなり、
一大事業となった。



裁判にかかる莫大な費用に比べれば安いものだ。

訴えてお金を使い、
負けるという悲惨な事を考えれば
はるかに経済的と言える。






「それにしても…」

R氏はため息をついた。

安く済むとは言っても、5万円が飛んでいった。

裁判をする人が多いからか、
どんどん規模もその精度も上がり続け、
それに伴い値段も高くなる一方。


初めは占いのような遊びから始まったのに…




このまま値段が上がり続けたら…
N氏は考える。
いずれ本物の裁判より
高くなる事があるかもしれないな笑


いや待てよ。
彼は気づいてしまった。
予測が100%の確率になったとき、
本物の裁判自体が要らなくなるのだ。

ただの占いがここまで急激に進化を遂げ
精度が上がり、投資を受けた理由は実は
そこにあるのではないか。


世の中の遊びとされている物の中には
実はこう言う物が…

彼は少し怖くなった。