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宇宙観光

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X星に、
地球からの観光船が降り立った。

ツアーガイドが旗を振っている。


「ご覧下さい。
 我々がかつて映画や小説でしか
 想像することができなかった
 異星人の暮らし。

 
 また、技術が進んだ後も、
 
 一部の探検家や金持ちしか
 実際に見る事のできなかった
 異星人の暮らしは、まさに今、

 レジャー、観光となり
 こうして皆様に
 現地へお越し頂き、見て頂けるわけです。

 何という幸福な時代。
 さぁ、ごゆっくりお楽しみ下さい。」




現地のタコ型異星人が、沢山
洞窟からニコニコして出て来た。


触手を使い
協力して狩りを行う
デモンストレーションが行われ、

カタツムリの様な物をすり潰した
リゾットの様な物が
この星の伝統料理として振舞われた。

昼食後は、スキーの様な物を楽しんだ。
この土地の植物を
加工して作った板の様な物を足に着け、
山を一気に滑りおりる。
この星の伝統競技である。

現地のタコ型異星人は、足の本数が多いためか、
地球人よりも上手に滑り、尊敬の的となった。


他にも、伝統工芸教室や、
独特のメイク体験、彼等の住居等を楽しみ、

大満足のまま、
夜になって、観光船は帰って行った。




客が誰もいなくなったその星では、
観光船の忘れて行った
ドラマや、パンフレット、
本、映画等が上映された。

当然X星の事が描かれている。
自分達の星は地球に
どう映っているのだろう。
現地のタコ型異星人達は食い入るように眺める。


「これを見ると、どうやら
 もうちょっとゆっくり、大きい声で
 馬鹿みたいに叫んだ方が良さそうだ。」

「うん。この吹き矢みたいな武器も良いな。
 今度作って取り入れてみよう。」

「おい、このメイクいいな。
 やってみよう。
 お前ちょっと実験させろ。」


現地コーディネーターも熱心に眺める。

「確かに、この山、赤くなった方が
 異星感が出て良いのではないか。」

「そうだな。試してみよう。
 そして、もう少し住居も粗末にして…」



何ということだ。
現実を想像に寄せていくとは。
そんな物が文化と言えるのか。

憤りを感じた人もいるかも知れないが、
どうか彼等を責めないで欲しい。

確かに昔はその様な暮らしがあったかも知れないが
X星も、地球の貨幣経済に組み込まれ100年。
当時の暮らしを覚えている者等いないのだ。

もし仮にそんな者がいたとして、
正確な再現が何になるというのだ。
それは、観光という一大産業。
エンターテイメントショーに、果たして、
耐えうる物だろうか。




それなら、せめて記録映像や、
正確な資料をもとに…と言う者もいるだろう。

しかし、そのようなものこそ、
最も疑わしい物である。

遥か彼方の遠い星からやってきた存在を、
特別にもてなした記録が、
果たして彼等の本当の姿と
言えるのだろうか。

また、儀式やお祭りの様子の記録だけで、
彼等の本当の姿が分かるのか。

我々とて1年中クリスマスや正月を
しているわけではない。

それ以外の何気ない日常は、
我々本来の姿であっても、記録する程でもなく…





まぁ、それでも。
他にないオリジナリティが残り、
面白おかしくアップデートされて、
多くの人を楽しませる
一大産業になっているのだ。

難しい事は考えず、
ただ感謝して楽しむのが1番なのではないか。
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