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幽霊島【怪談】
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私は心霊研究家。
日本全国の心霊スポットを、調査して回っている。
今回は、耳寄りな情報を聞きつけた。
ある小さな島の集落は、
出ていく人もおらず、入っていく人もおらず、
全く情報が外に出ない不思議な所らしい。
こういう場所にこそ、
奇妙な風習と、心霊現象があるはずだ。
私は浮かれていた。
特別に渡し船をチャーターし、
島へと向かう。
船頭が忠告した。
「お客さん、悪い事は言わない。
あの島だけは辞めておきなさい。
上陸したら最後、出られないよ。
どうしてもというなら、
途中まで行くから、降りて泳いで行ってね。」
私が泳いでたどり着いた頃には、
もう日が暮れていた。
すると、15人くらいの村人達が
ご飯を振舞ってくれたのだ。
「遠いところから、よく来たねえ。
はい、この島では鯛がよくとれるのだよ。
お腹いっぱい食べてね。」
どんな村かと正直、怯えていたが、
馴染みの食べ物が出てきて安心した。
村人達も温かく、良い人そうだった。
世間話等をし、たくさんお酒も飲んで、
そろそろ眠りに着こうかと思った時、
足元に何やらうごめく黒い影が見えた。
村長が言った。
「いけない、そいつは幽霊だ。
新しく来た者に取り憑いてしまう。
さぁ、この棒で叩きのめしなさい。」
私は、村長の持っていた
何やら魔力の高そうな棒で、
黒い影を動かなくなるまで打ち尽くした。
問題の全てが分かったのは、
明るくなってからだった。
私が昨日の現場を見に行ってみると、
そこには血だらけの男が倒れていた。
「これはいけない。死んでるじゃないか。
さては、私をはめたな。」
パニックになり、泣き叫ぶ私。
すると、村長が答えた、昨日と変わらない笑顔で。
「違う違う、全く違うぞ。
君は確かに幽霊を倒したのだ。
皆も見ていたはずだ。
明らかに幽霊だった。」
頷く村人達。
まだ落ち着けない私。
「そんなはずない、どう見たってこれは…」
村長は言った。
「これは、明らかに幽霊だ。
皆が見た事は本当だぞ。
しかし、これが人間に見えるというなら、
君こそが幽霊なのではないかね。」
私は口を閉ざすしかなかった。
何と言う事だ。
本当にこの島から出られなくなった。
魔女狩り、マヤ文明の生贄、ギロチン、
縛首、打ち首…
「儀式」とは長らく、人間、
ひいては生物達の団結を培ってきた物だが、
まさしく、これ。この儀式こそが、本質なのだ。
最も原始的で、単純で、強力な物だろう。
共犯者になってしまった今、
これがどれ程の力を持つか、理解したが、
もう戻る事は出来ないのだ。
思えば、「儀式」に限ったことではない。
会社、学校、家族、兵隊、部隊、班…
ありとあらゆる集団は
大なり小なりこのような事で結束を高めている。
そこまで考えて、ようやく気づいた。
あの船頭、知りすぎている。
きっと彼も仲間に違いない。
もっと言えば、今回の情報源も怪しい。
都合よくスカウトしてきて、
仲間を増やす、人事班があるらしい。
個人の能力に合わせて。
最初から仕組まれていたのだ。
果たしてどこからだろう。
もう辞めておこう。
考えれば考える程、抜け出せなくなるのだから。
日本全国の心霊スポットを、調査して回っている。
今回は、耳寄りな情報を聞きつけた。
ある小さな島の集落は、
出ていく人もおらず、入っていく人もおらず、
全く情報が外に出ない不思議な所らしい。
こういう場所にこそ、
奇妙な風習と、心霊現象があるはずだ。
私は浮かれていた。
特別に渡し船をチャーターし、
島へと向かう。
船頭が忠告した。
「お客さん、悪い事は言わない。
あの島だけは辞めておきなさい。
上陸したら最後、出られないよ。
どうしてもというなら、
途中まで行くから、降りて泳いで行ってね。」
私が泳いでたどり着いた頃には、
もう日が暮れていた。
すると、15人くらいの村人達が
ご飯を振舞ってくれたのだ。
「遠いところから、よく来たねえ。
はい、この島では鯛がよくとれるのだよ。
お腹いっぱい食べてね。」
どんな村かと正直、怯えていたが、
馴染みの食べ物が出てきて安心した。
村人達も温かく、良い人そうだった。
世間話等をし、たくさんお酒も飲んで、
そろそろ眠りに着こうかと思った時、
足元に何やらうごめく黒い影が見えた。
村長が言った。
「いけない、そいつは幽霊だ。
新しく来た者に取り憑いてしまう。
さぁ、この棒で叩きのめしなさい。」
私は、村長の持っていた
何やら魔力の高そうな棒で、
黒い影を動かなくなるまで打ち尽くした。
問題の全てが分かったのは、
明るくなってからだった。
私が昨日の現場を見に行ってみると、
そこには血だらけの男が倒れていた。
「これはいけない。死んでるじゃないか。
さては、私をはめたな。」
パニックになり、泣き叫ぶ私。
すると、村長が答えた、昨日と変わらない笑顔で。
「違う違う、全く違うぞ。
君は確かに幽霊を倒したのだ。
皆も見ていたはずだ。
明らかに幽霊だった。」
頷く村人達。
まだ落ち着けない私。
「そんなはずない、どう見たってこれは…」
村長は言った。
「これは、明らかに幽霊だ。
皆が見た事は本当だぞ。
しかし、これが人間に見えるというなら、
君こそが幽霊なのではないかね。」
私は口を閉ざすしかなかった。
何と言う事だ。
本当にこの島から出られなくなった。
魔女狩り、マヤ文明の生贄、ギロチン、
縛首、打ち首…
「儀式」とは長らく、人間、
ひいては生物達の団結を培ってきた物だが、
まさしく、これ。この儀式こそが、本質なのだ。
最も原始的で、単純で、強力な物だろう。
共犯者になってしまった今、
これがどれ程の力を持つか、理解したが、
もう戻る事は出来ないのだ。
思えば、「儀式」に限ったことではない。
会社、学校、家族、兵隊、部隊、班…
ありとあらゆる集団は
大なり小なりこのような事で結束を高めている。
そこまで考えて、ようやく気づいた。
あの船頭、知りすぎている。
きっと彼も仲間に違いない。
もっと言えば、今回の情報源も怪しい。
都合よくスカウトしてきて、
仲間を増やす、人事班があるらしい。
個人の能力に合わせて。
最初から仕組まれていたのだ。
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