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プロローグ

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昔、世界にはたくさんの種族が存在しました。
人間族 精霊族 獣人族 吸血鬼族 鬼族 亜族
そして、これらの種族の中に稀にいる、神の血筋の「神家」悪魔の血筋の「悪魔家」がいました。
神家の代表であり、精霊族である「癒音」
悪魔家の代表であり、吸血鬼族の「ヴァンピール」
2つの種族は、長い間争い合ってきました。

そんな中、ある事件が起きました。
精霊族と獣人族の間に、混合人が生まれました。
これだけならよくあることなのですが、その混合人の瞳には、神話に出てきたダイヤあったのです。このダイヤは、神話「トランプ」に出てきた、世界を作った創神『ユンファル様』の化身と言われる神子の瞳に現れるというマークなのです。
この事件により混合人は神子が生まれやすいということがわかり、世界に混合人が増えていきました。
その中でも2つの神・悪魔家では、勢力を増すため、異族の血を加えつつ、元の血筋を絶やさないという決まりができました。

ある日のことだった。
悪魔家のものが、うちに生まれた末令嬢を奴隷にした。我が家に恨みがあるなら、コヤツにぶつけてもらおうか。と言いながら、突然吸血鬼族の令嬢を連れてきたのだ。
少女の名はニュイ。神家の人間を異族の血として迎えた結果、一人神族の異能を受け付いてしまったのだという。

たとえ吸血鬼族の血が流れていても、神家には変わりがない。預けられた亜族の一族は、その少女をどうするか悩みました。少女を見たことない者は、虐げ、殺してしまえ。というが、少女を見た途端、そんなことは言えなくなる。
少女の身体にはたくさんの呪傷のあとがあり、傷を回復できない呪傷を使うとは、神家の扱いに相応しい…さては、この子は無害なんじゃないか、?と思う者で溢れていく。

嵐が過ぎ、晴天の日のことだった…
ニュイはとうとう、神家になったのだ。
いつも怯えているような顔をし、あまり他者と関わることのなかったニュイ。亜族の長である、
「ピリャンクス」家の養子になった頃は、他のものを少し警戒していた。だが、一日、一日と日が立つに連れ、元の可哀想な面影は消えていった。


「ニュイ!」
狸の耳と尻尾が生えた亜族の子供が、ニュイに駆け寄った。
「コクリュンちゃん、!」
花かんむりをリスにかぶせていたニュイは、とっさに振り向いた。
「リュンでいいって、何回言ったら分かんのぉ~」
少年はオレンジに茶色を混ぜたような髪色をしていて、絹糸のような髪を2つに編み、他の髪と一緒にポニーテールの結んである。
「あっ!リュ、リュン…くん?」
「もぉ~!くんはつけないの!あと、僕はもうお兄ちゃんだから、ちゃんはめっなの!」
アカプルコの色をした瞳が、どんどんニュイに近づく。
「ごめん、リュン…」
ニュンの髪がシナっと垂れ下がる。
「あ、いや、言えればいーの!ほら、泣いたらもっとめっなのぉ!」
あわてる子狸のことを見つめ、ニュイは花が咲くように笑った。
「ニュイ、明日から学校でしょ?色々貰いに行かなきゃなんだよ!」
「はっ!しょっか!じゃー、ミキュイも誘っていこー!」
「うん!!」
笑顔をそこら中に振りまきながら、春の風のように温かい気持ちをまといながら、二人は街の方に走った。

「ミキュイ~!来た、よ…」
…反応がない。
「おかしいなぁ…いつもはすぐ来んのに。」
不思議がりながら、家の中に入る、。
「あ、ここミキュイの部屋だ!良かった、中から音がする!」
「…っ!」
コクリュンがなにかに気づき、顔を歪めた。
「ニュイっ!開けちゃ…」
言いかけたときにはもう、ニュイはドアを開けていた。
「ミ…キュイ…?」
そこには…
「う、うわぁぁっ!」
赤黒い水溜りに、熊の獣人の子が転がっていた。
「ミキュイっ!?あ、あぁ、、!」
ニュイは、みるみるうちに青ざめていき、ヘナヘナと座り込みかけた。
「リュン…ミキュイが…」
ニュイが後ろを振り向く、
「ニュイ…悪魔家のしゅーげきだよ!」
「悪魔家…」
力が入らないほどに怯えるニュイを、自分も震えているくせに、大げさに冷静さを見せながら、ニュイの手を掴んだ。
「立ってニュイ!逃げなきゃ!そして、みんなに伝えなきゃっ!」
「う、うん、。」
二人はそこら中に滲む血溜まりを見ないよう、下を向きながら走った。

「みんなっ!ミキュイが…」
外に出ると、耳のついた何かが、ゴロンと転がってきた。
「ユリアさん…?」
気付けば、そこらじゅうが血溜まりになっていたのだ。
「ぐあああ!」
「きゃあああ!」
「吸血鬼族よー!」
四方八方から、断末魔や悲鳴が聞こえる。
「吸血鬼族…って、もしかして、!」
「ヴァンピール家で…多分間違いない…」
「ニュイ…っ!落ち着いて…」
ニュイは、怯えるあまり過呼吸になっていた。
「っはぁ、はぁ、ごふっ、ぜぇ、はぁ…」
ニュイの身体に酸素が行き渡ってないようで、苦しそうに胸を抑えた。
「ニュイ、ゆっくり息して、!吸って、吐いて…」
「っはぁっ!はぁ、ふぃー、ふぅー…」
「走れる?どっか遠くに逃げよう!」
「ま、待って。まだミンとかフゥクスとかも生きてるかも、!」
生きてる人はなるべく全員逃げてほしい、。
ニュイが悪いわけじゃないのに、なぜだかニュイはひどく責任を負っているように見えた。
「う、うん、いぃよ。」

「ぎゃぁぁっ!」
「痛いよぉぉ!おかしゃあん!」
「たす…け…」
街は、思ったよりもよっぽど地獄絵図だった。
「たぶん、あいつらの狙いはニュイだよ。」
ニュイが、ポツリと呟いた。
「ニュイ?」
ニュイがおかしい、
「ニュイが行けば、ニュイが戻れば、みんなははっぴぃえんどだよね…?」
「ねぇ、ニュイっ!」
「ニュイ、はっぴぃえんど作れるよ!あはは…あはは!ニュイすごいよ!絵本作家なっちゃう!」
「ニュイ、ニュイ!だめだよ、!いっちゃやだ!」
コクリュンが涙声になりながら、ニュイの身体を揺さぶった。
「ごめん、しょせんニュンは…」

吸血鬼なんだよ。

「っ…」
「ばいばい。ありがと。ちゃんと逃げてね!」
「やだぁっ!」
「だめ!笑ってさよならする!」
「…ちがう」
「え、?」
「またね するの!」
「!」
「だってニュイはまぎれもなく神家の子だよ?
わたしは妖狸になって、何百年だって、ニュイを待っててあげる」
「リュン…」
ふたりとも、そのくらいは知っている。
悪魔家と神家の者が、襲撃以外で会えないことくらい…
だけども、ニュイは、満面の笑みでこう言った。
「うん!またね!」
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