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「お、お前、は…………!」
「おや、わたしのことを覚えていてくれたようで。光栄だな。」

そう言いながら、シェイラの横に座り、うっすらと酷薄な笑みを浮かべたのはレナードだった。
彼の存在は、クリスにとってもうすっかりトラウマと化してしまっているようだ。


「お前を愛している?……誰が?」
「シェイラは俺t「気安く名前を呼ぶな。」」

一気に温度の下がった彼の声色に、思わず身を震わせる。
そんな彼を尻目に、レナードはシェイラの腰に手を回して引き寄せた。


「わたしたちはお前に用などない。もちろん、そっちの恥知らずの女もだ。」
「はぁ?そこの女が不妊なせいで跡継ぎができないんだっていうからわざわざ来てやったんじゃ……」
「一体いつわたしがお前に発言を許可した?…………立場を履き違えるなよ。妻が話を聞いてやっているようだから黙っているが、お前たちの立場はあくまでも貴族の邸宅に不法に押し入った一介の平民なんだ。この場で切り捨てられたって文句を言える立場じゃない。」

レナードの言葉を受けてサッと青ざめた二人だったが、ナターシャはなおも言い募る。
クリスとは教育水準が違ったことが彼女の無謀さ――愚かな行動としか言えないが――の原因だろうか。


「でも、私はこの家の跡継ぎの生母なのよ!」

彼女の中ではシェイラが己の息子を引き取ることが確定しているのだろう。――――そんなこと、天地がひっくり返ったってありはしないのに。


「まず初めにはっきり言っておくわ。私があなたの子供を引き取ることなど絶対にありえない。「何いって」口を挟まないで。……そもそも、貴族の中の全員が全員、自分の子供を授かれるとでも本気で思っているの?……子供は授かりものなのよ。」 
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