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「なるほど、それをご存じなのなら納得です。」

そう、我が物顔でシェイラを追い出したクリスは、シェイラと結婚したことによって伯爵の爵位を得た婿養子だった。元の名前はクリス・ベイツ子爵令息。彼も、レナードと同じく、長男ではなかった。だがしかし、彼はシェイラと結婚したことで実家を継ぐよりも良い待遇を手に入れたのだ。――まぁ、シェイラを追い出したことでそれも露と消えたのだが。


「既婚女性の方が力を持てるのは言わずもがな。ですが、これではこの契約は貴女にメリットがなさすぎる。――ので、僕は貴女にもう一つ、協力を申し出たい。」
「協力、ですか?」
「ええ。ですが、この計画を実行するにはまず、貴女に僕を心から信用して頂かなくてはならない。ですが、短期間で信用を得るなど不可能に近いでしょう。……ですので、これとは別に、これも契約という形を取りましょう。急ぎですので、立会人は申し訳ございませんが僕の両親でも構いませんでしょうか?」

そうして彼が語り出したのはたしかに面白い内容であった。だが、これでは――――


「これでは逆に、貴方にメリットがひとつもないではありませんか!」
「問題ありません。僕の目的は、貴女の信用を得ること。それが充分な見返りです。それに、リスクを負うのも貴女になってしまいます。それでもよろしいのですか?」
「私の負うリスクなど……!どちらにせよいつかはしなくてはならなかったことです。それに、危険な目に会うのは貴方の方ではないですか!」
「それはご心配には及びませんよ。流石に丸腰では行きません。」

そして彼はにっこりと笑みを深めると、その内容をサラサラと紙に書き出してシェイラに見せた。


「僕の話に、乗っていただけますか?」
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