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7話
しおりを挟む数刻の後、セレナは森の中に居た。
目的地の泉まであと少し。
想像よりも遥かに簡単にたどり着いてしまったのだ。
部屋に篭っているばかりだから体力がないのではないか、や、自分の読んでいる書籍は本当に正しい位置を指し示しているのだろうかなどといった心配もしていたのだが、全ては杞憂におわった。
森の中を歩くとさくさくと小気味の良い音が足元から響く。
息を大きく吸い込むと、緑の清々しい香りがした。こもりきりの自室の空気とは大違いだ。
気分よく歩いていると、視界が開けてくる。
どうやら目的地である泉に辿り着いたようだ。
周りにルチアやその付き人達の姿が見えないところから鑑みるに、彼女たちはもうお勤めを終わらせて王宮に帰ったのだろうか。
セレナとしてはその方が都合が良い。
どうしてここにいるのか、どうやって王宮を抜け出したのか、なんて聞かれてしまってはこれから監視が強化されてしまうかもしれない。
鉢合わせる事が一番の心配だったのだが、大した問題にはならなかった。
泉の水に手を触れてみると、不思議とあたたかいように感じた。丁度、人の体温のような、そんな温度。
セレナは、履いていた靴を脱ぎ捨てるとちゃぷん……と水に足をつけた。
柔らかな木漏れ日と何処か落ち着く香りに目を閉じる。自然と眠気を誘われるようだ。
どれくらいの間、そうしていただろう。
突然泉の水が揺らぎ出した。
驚いたセレナは飛び起き、泉を見つめる。
揺らぎは段々と一箇所に集まり、水は美しい黄金の輝きを含んで揺蕩う。
やがてその光が一箇所に集まると泉が内側から隆起しだした。
……いや、違う。
何かが泉の水を掻き分けて勢いよく飛び出そうとしている。
驚きに固まってしまったセレナが目にしたのは、
黄金に輝く龍であった。
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