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5話
しおりを挟むとはいっても、その扱いの差は歴然であった。
その『聖女』たるに相応しい出で立ちと、愛くるしい笑顔でルチアは皆から愛され、逆に『不気味な王女』『呪われた子』と言われるセレナは皆から遠巻きにされていた。
ルチアは歴代の聖女と同じように皆に大切にされ、望んだものは全て叶える生活を送っていた。それは、彼女の明るくて広い部屋に所狭しと置かれた煌びやかな装飾品や可愛らしい彩りの花々、古今東西あらゆる場所から集められた玩具などを見ていれば一目瞭然だ。
反対に、セレナは日陰の狭くて暗いに押し込まれ、狭い部屋にもかかわらず、その何も無いがらんとした空間から彼女の扱いが見て取れる。
――成人と同時に力が完全に偏る――
その『神獣』の言葉によるものだった。
ルチアの外見から成人した時に力が片方に集まり、完全体の『聖女』となるのはルチアだと考えられたためだ。
現段階では神獣からの言葉により、セレナを殺すことは不可能だが、成人後は速やかに消されるのであろう事が容易に想像出来る。
与えられるのは生存に必要な最低限度のものだけ。
一応直系王族の一員であるセレナは、王宮内を自在に歩くことは出来たが、どこへ行っても冷たい視線と言葉を浴びせられ、満足な愛情を得られない彼女は次第に部屋に籠るようになった。
『不吉な王女』が部屋から出てこないのは、宮中の者達に取ってすれば、ありがたいことこの上ない。
とはいえ、何もしないで過ごすには彼女は幼すぎた。
暇を持て余して誰かに構ってもらおうと話しかけては冷たくあしらわれ続けた彼女は、本に出会った。
本は彼女に罵声を浴びせたり、冷たい視線を突き刺したりする事はなかった。
段々と王室所有の図書館に入り浸るようになり、その幼い日々を自室と図書館の往復に費やしたのだった。
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