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60話
しおりを挟む再びホールに静寂が訪れた。
いつまでも続くかと思われたその重苦しい雰囲気を破ったのはユリウスであった。
「寂しいですねぇ……。僕の事は無視ですか?」
そんなユリウスの声に、国王は弾かれたように顔をあげる。そういえば先程、ロバートが聞き捨てならないようなことを言ってはいなかったか。
「いやぁ……びっくりしましたよ、本当に僕の事を知らないなんて。しかも、王太子殿下だけかと思ったら王妃殿下まで!学園でも散々暴言吐かれたりしましたしねぇ……。いやね、流石に国内外の人間全員の顔を覚えろだなんてそんな鬼畜な事は言いませんよ。でもね、僕だってこの国に国賓として招かれた筈なんです。そこそこ人数のいる他国からの国費留学生なんかならまだしも、招かれる数が決まっているはずの国賓の顔も分からないとは……そもそも、私達は一度顔を合わせた事がありますよね?この国に入国した日に。」
いつもと違う、どこか嫌味ったらしい言い回しをするユリウスの様子に、シャーロットはどこか違和感を感じていたが、何か考えあってのことだろうと口を噤むことにした。
そして、ユリウスの話が進むにつれて、流石のロバートと王妃も話が見えてきたようだ。
つまり、自分達がぞんざいに扱った上にこれ以上無いほどの無礼を働いた相手は国にとってものすごく重要な相手だったということだ。
外国から受け入れる客人にも、何段階かの明確なランク分けが存在する。
そして、今まさに自分たちの目の前の男・ユリウスが相当すると言った『国賓』は、その最上級に位置するものだったのだ。
『国賓』は、例え他国の王族だとしても全員がなれる訳では無い。その中でも更に選ばれし者がその立場として国へと受け入れられるのだ。
どれほど多くても1年で片手に収まる数しかその立場で受け入れる事はしない。
それゆえ、『国賓』として迎え入れる事は、相手国へのこれ以上無い程の友好の証とされるのだ。
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