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59話
しおりを挟むそんな彼女にこう言われてしまったら最早反論の仕様が無い。だが、これほどまでに露骨に馬鹿にされては、みっともないと分かってはいても、喚かずにはいられなかった。
「誰に言ってると思ってるの!?わたしはこの国の王妃なのよ!一介の貴族でしかないくせに生意気な!お前は私に負けたのよ、もう20年も前にね!」
「母上を馬鹿にするとは、この恥知らずめ!お前らなど婚約破棄の上、国外追放にしてくれる!」
「無論、そのつもりですわ。こんな所にいるなんてもうこりごり。」
王妃とロバートの言葉にそう言って踵を返した公爵夫人に慌てたのは国王だった。
「ま、待て、公爵夫人。今のは軽い冗談なんだ。そうだろ?いや、そうに決まっている。ロバートにはよく言って聞かせる。」
「結構です、陛下。冗談ですって?言っていい事と悪いことの区別もつかないんですのね。」
「冗談?俺は本気です、父上!」
「どうしてその女の肩を持つのです、陛下!?あなたの妻はこの私でしょう!?未だにその女に未練でもあるのですか!!??」
公爵夫人からの取り付く島もない程の冷たい返答に、ロバートと王妃からの力の抜けるような見当違いの台詞。
必死に取り繕おうとした国王だったが、にべもなく断られてしまった。
「婚約破棄の申し入れは本気だったのか……。」
自分がまともに取り合わず、突っ返し続けて来ていた物がここに来て正式なものであったとやっと理解したようだ。今ここでフェローニ公爵家に見捨てられるのはまずい。貴族の大半は最早王家ではなく、公爵家に絶対の信頼を置いており、その公爵家が仕えているからこそ王家へ忠誠を誓っているのだ。
白けた顔をした公爵家一同と、未だに事の重大性が分かっていない妻と息子を前にして、国王は、蒼白な顔でただ項垂れていた。
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