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58話

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「私の娘ではご不満だと。それならば丁度いい。私もあなたのような方々の元に可愛い可愛い我が娘を嫁がせるなんてことしたくはなかったのでな。そちらがどうしてもと言うから仕方なく受け入れた縁談だったのにこの仕打ち。婚約破棄は受け入れましょう。娘もそれを希望している。ただし、王家側の有責で、だがな。」
「はっ、責任がこちらにあるだと?そんな訳ないだろう!仕事もしない、俺の望むように動かない、将来の王妃として相応しい程の容姿もない!非があるのはお前たちの方だろう!」
「ロバートの言う通りよ!何度私が行っても一向に痩せないし、醜いったらありゃしないわ!自己管理くらい出来ないと、王妃になんて認められないわ!それに能面のようなあの顔!人間味を感じられない不気味な女だわ!」

公爵の言葉にロバートが反論、王妃が援護しだす。
だが、王妃のその言葉に、今まで黙っていた公爵夫人が動いた。公爵の隣から一歩踏み出し、王妃の目の前に立つ。
じろじろと無遠慮に彼女を上から下まで舐めるように眺め、ふ、と鼻で笑い、言い放つ。


「王妃に相応しい程の容姿?それをあなた方がおっしゃるの?そんななりで?……あなた、『自己管理くらい出来ないの?』…………。……一度、しっかり鏡を見られたらいかが?」

公爵夫人は美しい。
シャーロットの恵まれた容姿も、彼女からの遺伝だ。
昔から完璧な美貌を誇っていた彼女ではあったが、公爵と結婚して人妻となり、その美しさに更に磨きがかかっていた。
独身時代の氷のような、高嶺の花の様な不可触の美しさではなく、どこか柔らかく、妖艶な雰囲気を纏っていた。
それは、世界一愛する夫の前で常に美しくありたいという公爵夫人の努力の賜物であった。
公爵も健康の為に、また、貴族の子息としての責務として剣術や武術を修め、鍛えていた事が項を奏したのか、その生来の顔の造形の良さも相まって、歳を重ねてなお衰えてはいなかった。
歳をとってなお衰えない美貌を誇る公爵と公爵夫人のカップルは、全貴族の憧れと言っても過言では無いのだった。
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