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55話

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睨み合う二人の王太子と、戦々恐々とする周囲。その中で突然場違いなファンファーレが鳴り響く。騒ぎが大きくなって来たところに国王夫妻が入ってきたのだ。

ゆうゆうと入場してきた二人だが、ホールの空気がおかしい事に気がついたようだ。
しかも、その騒ぎの中心には我が子がいる。
無視しようにも、それは不可能であった。


「ロバート、何があったのか説明しろ。」

歩み寄った国王から心底面倒臭そうな空気とともに端的な言葉が発せられる。
王妃は彼の後ろですました表情を浮かべ、我関せずといった風体だ。


「はい、父上。この女が俺の言いつけを無視して逃げ出そうとしたので追いかけたところ、その男に邪魔をされたのです。この男は学園内でも何度も俺の行動の邪魔を…………何がおかしい?」

彼の話している言葉の途中でユリウスが小さくではあるが、肩を震わせ出したのだ。
上擦った声から一転、ロバートの声は地を這うようなものに変わった。


「いえ……。前回は私的な場だったので見逃しましたが、流石に公的な場で『この男』呼ばわりはいただけません。」
「俺がこの国の人間をどう呼ぼうが勝手だろう!」

ロバートが声を荒らげる。


「そうですわ!何様のつもりです!?この子はこの国の王太子です。お前みたいなのにそんな事言われる筋合いないわ!」

そんな彼に、突然王妃が加勢した。
息子であるロバートと同じくめちゃくちゃな理論を展開し出す。

流石のユリウスも目が点になっている。


「それより母上、わたしはシャーロットと婚約破棄して、こちらのシャルを正妃に迎えたいのです。よろしいでしょう?」
「ええ、勿論!あの女は私もずっと気に入らなかったのよ!見た目も醜いし、生意気だし、可愛げの欠けらも無いし、……あの女の娘だし。……その点、その子なら可愛らしいしあなたに相応しいわ!」

二人の間で勝手に話が進んでいた。
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