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自分は世界一の幸せ者だと思った。
美味しい食べ物と美しいドレス。美しい容姿に何不自由無く暮らせる身分。
その代わりに結婚は自由にならない。
愛する人と結ばれるなど夢のまた夢だと思っていた。それなのに恋した相手はいとも容易く自分の婚約者に。
それも、自分から働きかけた訳では無い。向こうからの打診だという。
期待しすぎないようにと向こうは恋愛的な感情は持たず、政略結婚なのだろうと舞い上がりすぎないように気をつけていたのに、彼もまた自分を愛していると言う。
外見は勿論、王としての器も十分、優秀でそれなのに驕り高ぶることなく民に寄り添い、また、自分の事も尊重してくれる。
社交界でもその仲の良さは有名であったが、実際はそれ以上だった。
こんなに幸せで良いのだろうかと思うほどに全てが上手くいっていた。

――だから、これは神様から下された罰なのだと思った。
世界が自分を中心に回っている筈などなかったのだ。
突然現れた少女。
時折おかしな事を口走る平民出身の変わり種。
確かに愛らしい容姿をしているが、自分には到底脅威になることは無いだろうと鷹を括った。
与えられた愛情をどこか当然だと胡座をかいてしまったのか。

気がついた時には全てが遅かった。

愛する人は奪われ、自分に親の仇のような目を向けてくる。
1度関わったが最後、何故か皆、無条件に彼女を擁護するようになる。何を言ってもまるでこちらが悪役かのように仕立てあげられる。

――彼女は平民だったんだから少しくらい――
――心優しい彼女がそんな事する訳ないじゃないか――
――彼女に嫉妬してるのか?醜いな――

みんな、手のひらを返したように向こうに味方する。盲目的なそれは最早新手の宗教の様。
でも彼女は抜けているようでいて驚く程に狡猾で、反撃の余地など無かった。
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