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エピローグ

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エピローグ

俺はアメリカからwebを利用して記者会見を開いた。
ジュンさんは妊娠するだろう。結婚もしたい。出来れば祝福されて結婚したい。

そのためには十二月田家がこのまま落ちぶれて貰っては困るのだ。

そして戸籍も公開した。これは俺がアルファになったのが17になってからだという事を証明するため。

「はじめまして。十二月田マヒロと言います。この度はお集まりいただきありがとうございます。これまでの母の発言が批判されているみたいですが色々と弁解させていただくために記者会見を開かせていただきました。
母はかつてインタビューなどで私のことをベータだと偽っていてそれが差別なのではないかと一部で騒がれていました。しかし、私がアルファだと判定されたのは17歳、高校3年になってからです。中学で受ける一斉検査ではベータだという結果がでました。ですのでインタビューを受けた時点での母の発言は間違いではありません。
私は第二の性の成長が遅い病気だったので、第二の性がきちんと判明するのが人より遅かったのです。」

--ご両親はアルファだと本当に気付いていらっしゃらなかったのですか?

「そうだと思います。私がアルファになったと言ったらびっくりしてましたから」

--でも普通は気づかないですか?

「普通ってなんですか?能力のあるベータはおかしいから自分の子供が優秀ならアルファじゃないかと疑うはずだと、そういう事ですか?そういうのが差別だと騒がれていたんではないですか?母は私がアルファになったと報告した際に『アルファでもベータでもマヒロはマヒロよ』と言っていました。母が子育てについて語る時、私がベータだから有権者の皆さんに親近感を沸かせようとかそういう意図は無かったと思います。」

--お兄様と比較して差別されていると感じたことはありますか?

「ふふっ。万が一あったとしてもそんな質問をされてこの場であると答えるわけがないじゃないですか?親から差別を受けた事はないですよ。学校でも差別は受けたことがないです。アルファばかりの名門校だとどうかわからないですけど、公立だとむしろ兄の方が学校に馴染めず周りから差別というか区別されていたと思います。皆さんも覚えていらっしゃるのではないですか?小さい頃から優秀な子の事をきっとアルファなんだと決めつけて遠巻きに接するクラスメイトがいた事を。私はそういうところで立ち振る舞いがうまく、また周りにも恵まれましたので兄より幸せな子供時代を過ごせた事は間違いありません。」

--ベータからアルファに変わった時はどう思われましたか?

「普通は何もない時に検査をして結果が来るので色々と考えるのかもしれませんが、私の場合、先に「未分化」という成長が遅くて第二の性の分化がまだ出来ていない状態だという事は分かっていましたし、検査で判明する前にラットを起こしたので、あぁやっぱりな、と思いました。」

--ではラットが起こった際はどう思われました?

「ラットが起こった時には何も考えられないですよ。」

--性別が変わった後にすぐアメリカに行かれましたがアメリカに行かれたことと性別が変わった事は関係があるのですか。

「はい。先程ラットを起こしたと言いましたが、いわゆる運命の番に出会ったんです。彼は兄の婚約者でした。しかも事情があって向こうは運命の番だと気付かなくて。それが辛くて私は逃げるためにアメリカに行きました。一部報道で私と両親が不仲なのではないかと言われていましたが、私が家に近付かなかったのは両親と不仲というよりは、その運命の番のことがあったためです。元々は自分が運命だと知らせるつもりはなかったのですが、相手が気付いてくれて、今は良い形におさまっています。」



***


その後、俺は講師を務めていた大学の政治学部に入学した。諸手続きは大変だったが、ベンの後ろ盾もあり、何とか入学出来た。もしかするといつか親の跡を継ぐ時がくるかもしれない。その時にはこの経歴がモノを言うだろう。

そう匂わせる事はジュンさんとの結婚に一役買った。

大学講師の仕事と立ち上げた会社の役員もしながらだったので大変だったが、もうすぐ卒業である。

大学2年の頃に衆議院の解散総選挙があった。両親は共に代議士に返り咲き、母は初入閣を果たした。日本初の女性首相になるのではないか、と言われている。

俺はあの記者会見で有名になったらしいが、アメリカに居るので実感はない。

「パパー」
そう言って走ってくるのは息子の穣だ。
その後ろからゆっくりとジュンさんが近づいてくる。

そのお腹には2人目が宿っている。
帰宅するなり抱きついてきたジョーを抱き上げる。

「おかえりなさい」

と言うジュンさんは最高に愛しいと思う。

「ただいま」

そう言いながらジュンさんにキスをした。
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