上 下
21 / 23

21.

しおりを挟む
その夜、サミュエルは何度も角度を変え、体位を変えながらスーザンを貫き、スーザンの中に精を放った。二度目以降はかなり優しくスーザンの身体に触れてくれた。スーザンは何度も高みに上り何度も気を失いそうになったがその度にサミュエルから与えられる別の刺激に引き戻された。

サミュエルは酔いのためか疲れのためか、スーザンの中にモノを残したまま気を失うように眠りについた。

スーザンはその寝顔を見て心の底から愛しい思いが込み上げてきた。そして彼を失わなくてはならないと思うと心が張り裂けそうだった。

スーザンはサミュエルに触れるだけのキスをすると夜着を掴んだ。そしてうまく夜着に汁が垂れるようにしながら、体の中からサミュエルのモノを引き抜いた。

中からドロっとした白濁がたくさん出た。それは夜着で受け止めることができた。ほとんどずっと繋がっていたためか、ベッドはシーツが乱れてはいるものの、生々しい汚れはそれほどなかった。

もう夜着は使い物にはならないがこれなら隠蔽できると思った。

これまで何もなかった2人なのに、あと少しで別れると決まった今更のタイミングでこういうことになるなんて恥ずかし過ぎてマーサたちに顔向けできない。

スーザンは夜着を持って部屋に戻ると新しい夜着を着て汚れた夜着は暖炉に入れて燃やしてしまった。

夜の早い時間から始まったのでまだ1時を回ったところだった。
スーザンは満たされた気分で深い眠りについた。





翌日、二人にも屋敷にも何の変化もなかった。
サミュエルはいつも通りスーザンとは会わないように生活しているし、マーサやメイドたちも変化に気付いた様子は無かった。

スーザンはすこし残念なようなホッとしたような複雑な思いだった。

その一週間後に離縁に際しての条件が全て整ったと言うことで弁護士立ち会いの元、最後の話し合いがあった。
その時もサミュエルには何の変化もなかった。

きっとサミュエルは覚えていないのだろうとスーザンは結論付けた。

ハロー家から離縁の代償としてスーザンが希望していたニューユーリのアパートとニューユーリまでの一等船室のチケット、そして十年は贅沢に暮らしていけるだろうほどの金額の慰謝料をもらうことになった。

そして一週間以内にハロー家の屋敷を出て行く事で合意した。

気付けばもうイースター休暇の直前で、今年最初の王宮での舞踏会まであと数日という頃だった。

最後にこれまで買っていたサミュエルへのプレゼントを渡したかったが、サミュエルがスーザンを避けて家に戻って来なくなっているため渡せなかった。

プレゼントは机に置き、マーサに処分してくれるよう頼んだ。
マーサはスーザンとの別れを惜しみ、嘆いてくれた。ミスターゲーブルが休みをとって挨拶に来てくれた。
「スーザン様、あなたとご一緒できたことは今でも忘れません。とても良い時間を過ごすことができました」

スーザンはひとまず、セバスティアーノ=ストウ家の王都のタウンハウスに身を寄せた。
そこは従兄弟一家の住まいとなっている。
従兄弟はスーザンより十歳年上で妻と14歳の息子、12歳の娘の4人家族だ。

タウンハウスでスーザンは腫れ物扱いだった。どうも妻のアリスが離縁したスーザンのことを嫌っているようだった。

死別でない離縁を嫌う上流階級の人たちは少なくない。

数日滞在し、居心地の悪さに辟易したスーザンは数年ぶりにリアムの屋敷に戻ることにした。
シェーマス叔父は身体が弱っているようだったが快くスーザンを受け入れてくれた。

そこで1か月、穏やかな日々を過ごした。
たまに、社交界で自分たちがどう噂されているのだろうかと思ったがもうすぐ新大陸へたつのだから、どんな噂になっていたとしても関係ないと自分に言い聞かせた。

5月になるとスーザンはシープシャーを尋ねた。最後に思い出の場所を目に焼き付けておきたかったのだ。

これまでシープシャーではハロー家の屋敷でしか過ごしたことがなかったが、スーザンは既にハロー家とは関係なくなっているのでホテルに宿泊した。
ホテルの部屋からは湖が一望出来た。
サマンサがサミュエルから告白された湖のほとりも見ることができた。湖の向こうに見える森の新緑が目に眩しかった。

あれからもう十五年も経ってしまった。私も彼も変わってしまった。

スーザンがホテルに泊まっていることはハロー家に筒抜けだったのだろう。ホテルに大旦那様が訪ねてきた。

「スーザン、聞いたよ。息子が本当にすまなかった」

「大旦那様に謝っていただく事ではありません。過分な慰謝料もいただきましたし」

「決心は固いのかな?」

「決心が固いのはサミュエル様の方です」

「新大陸に行くのかい?」

「えぇ。わたくし、自分がサマンサだということを告白してなんとか縋ろうとしましたの。でもサミュエル様は信じてくださらなかった。それでも、まだ彼のことが好きなんです。だから、この国に残って彼に憎々しげな眼で見られるのも、その度にそれでも彼を嫌いになれない自分にうんざりするのも、もう、終わりにしたいと思いましたの」

「そうか。向こうで生活の充てはあるのかい?」

「・・・ありませんわ」

「新大陸は進歩的だとは言え、女性が何の後ろ盾もなく一人で生計を立てていくのは大変だろう」

「そんなことありませんわ」

「でも、まさか君が売り子になるわけにもいかんだろう?」

「いけませんの??」

「君のそういう職業の貴賎に囚われない進歩的な考えは嫌いじゃないがね、君がハロー家から離縁されて売り子に身を落としたなんてことになったらうちの外聞にも関わる。そうだな、確か出港は3日後だったかな?それまでには君の推薦書を用意しておこう。君が大陸に渡ってから頼れる人のリストも一緒に渡すよ」

「まぁ、アパートを用意くださっただけでも過分な対応ですのにそこまでしていただけるなんて、ありがとうございます」

「いや、当然のことさ。君は優秀だし、本当ならうちで雇いたいくらいなんだが、そういう訳にもいかんだろうから」

「そうですね」


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

お姉さまは最愛の人と結ばれない。

りつ
恋愛
 ――なぜならわたしが奪うから。  正妻を追い出して伯爵家の後妻になったのがクロエの母である。愛人の娘という立場で生まれてきた自分。伯爵家の他の兄弟たちに疎まれ、毎日泣いていたクロエに手を差し伸べたのが姉のエリーヌである。彼女だけは他の人間と違ってクロエに優しくしてくれる。だからクロエは姉のために必死にいい子になろうと努力した。姉に婚約者ができた時も、心から上手くいくよう願った。けれど彼はクロエのことが好きだと言い出して――

記憶のない貴方

詩織
恋愛
結婚して5年。まだ子供はいないけど幸せで充実してる。 そんな毎日にあるきっかけで全てがかわる

その日がくるまでは

キムラましゅろう
恋愛
好き……大好き。 私は彼の事が好き。 今だけでいい。 彼がこの町にいる間だけは力いっぱい好きでいたい。 この想いを余す事なく伝えたい。 いずれは赦されて王都へ帰る彼と別れるその日がくるまで。 わたしは、彼に想いを伝え続ける。 故あって王都を追われたルークスに、凍える雪の日に拾われたひつじ。 ひつじの事を“メェ”と呼ぶルークスと共に暮らすうちに彼の事が好きになったひつじは素直にその想いを伝え続ける。 確実に訪れる、別れのその日がくるまで。 完全ご都合、ノーリアリティです。 誤字脱字、お許しくださいませ。 小説家になろうさんにも時差投稿します。

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。

松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。 そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。 しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。

おしどり夫婦の茶番

Rj
恋愛
夫がまた口紅をつけて帰ってきた。お互い初恋の相手でおしどり夫婦として知られるナタリアとブライアン。 おしどり夫婦にも人にはいえない事情がある。 一話完結。『一番でなくとも』に登場したナタリアの話です。未読でも問題なく読んでいただけます。

夜会の夜の赤い夢

豆狸
恋愛
……どうして? どうしてフリオ様はそこまで私を疎んでいるの? バスキス伯爵家の財産以外、私にはなにひとつ価値がないというの? 涙を堪えて立ち去ろうとした私の体は、だれかにぶつかって止まった。そこには、燃える炎のような赤い髪の──

貴方に私は相応しくない【完結】

迷い人
恋愛
私との将来を求める公爵令息エドウィン・フォスター。 彼は初恋の人で学園入学をきっかけに再会を果たした。 天使のような無邪気な笑みで愛を語り。 彼は私の心を踏みにじる。 私は貴方の都合の良い子にはなれません。 私は貴方に相応しい女にはなれません。

彼の過ちと彼女の選択

浅海 景
恋愛
伯爵令嬢として育てられていたアンナだが、両親の死によって伯爵家を継いだ伯父家族に虐げられる日々を送っていた。義兄となったクロードはかつて優しい従兄だったが、アンナに対して冷淡な態度を取るようになる。 そんな中16歳の誕生日を迎えたアンナには縁談の話が持ち上がると、クロードは突然アンナとの婚約を宣言する。何を考えているか分からないクロードの言動に不安を募らせるアンナは、クロードのある一言をきっかけにパニックに陥りベランダから転落。 一方、トラックに衝突したはずの杏奈が目を覚ますと見知らぬ男性が傍にいた。同じ名前の少女と中身が入れ替わってしまったと悟る。正直に話せば追い出されるか病院行きだと考えた杏奈は記憶喪失の振りをするが……。

処理中です...