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王子への進言 ヴァージニアside
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馬車が到着してもヴァージニアはマーガレットを起こさなかった。マーガレットはとても疲れて見えたし、明らかに休養が必要だった。
マーガレットは婚約が解消されるまで毎日王宮に通っていた。だから王宮にも知り合いは多い。
護衛を呼びマーガレットを部屋に運んでもらうよう手配するのも容易かった。
マーガレットを護衛に運ぶよう伝えた際に護衛が顔をしかめたのをヴァージニアは決して見逃さなかった。
マーガレットのことを王宮全体で拒否しているようだ。
その辺にいたメイドに医師を呼ぶように伝え、ヴァージニアもマーガレットに付き添い部屋まで行った。
マーガレットにあてがわれた部屋はかろうじて客間であるが北向きのじめじめとした場所にある、全体的に暗い雰囲気の部屋だった。
ヴァージニアは若い女性が来るのだからもう少し明るい色合いや、華やかな柄のカーテンやベッドカバーにしてあげれば良いのにと思った。
机の上には本日の課題と書かれた書写のお手本の紙が乗っていた。字からフューリー夫人の課題だと言うことが見て取れた。
そして、その下には丁寧に書かれた書写の課題が積まれていた。右上に小さく番号が振ってあり、一番上の紙には100と書かれていた。
字はかなり上手に見えた。これなら他の貴族と混ぜても遜色ない出来栄えだろう。この国の字を書き始めてまだ六ヶ月も経っていないことを考えると驚異的に感じた。
この100枚の書写を彼女は一体どのくらいの日にちを掛けて書いているのだろうか。ヴァージニアが子供の頃は1日せいぜい十枚だった。本日のと書かれているのでまさか、1日100枚?
彼女の顔色が死人のように悪い訳がわかった気がした。
それを隠すために厚化粧にしていたのか、させられていたのか。
ヴァージニアは沸々と怒りが湧いてきた。
その時、医者が来た。
医者の見立てでは寝ているのでなんとも言えないが、栄養失調だろう、ということだった。
一国の王太子の婚約者が栄養失調?なぜそうなる?食事を与えられていなかったのだろうか。
ヴァージニアの怒りは爆発寸前だった。
ロジャースの民ではないヴァージニアですら怒り狂うのに、これがロジャースの民にバレたら戦争は不可避だろう。王宮は一体何を考えているのか。繋がり作りのための婚約のはずが、さらに溝を深めてどうするのだ。
時計を見るとすでに夕方になっている。
ヴァージニアは先触れも出していないがアンソニーの執務室に殴り込みを掛けた。
「トニー、どう言うことなの?」
門の前に立つ護衛を無視してドアを勢いよく開けた。ヴァージニアの勢いにアンソニーはポカンとしている。
「マーガレット嬢のことよ。あなた、この婚約の意味をわかっていて?」
それでも尚アンソニーは意味がわからない、という顔でヴァージニアを見ている。ヴァージニアは何も理解していないアンソニーを見て大きくため息をつくと子供に言って聞かせるように伝えた。
「今日、マーガレット嬢があまりに顔色が悪いので学園を早退させました。マーガレット嬢は、帰りの馬車で気を失うようにお眠りになりました。王宮に戻って医師に診断させたところ栄養失調だそうよ。」
「栄養失調?どうしてまた?ハンガーストライキでもしているのか?」
「さぁ?本人がまだ目を覚さないから状況はわからないけれど、私は王宮内で彼女が蔑ろにされているのだと踏んでいるわ。そして、それはあなたが彼女を蔑ろにするからよ。」
「ないがしろ?そのつもりはないが。」
「じゃあ、私が婚約者だった頃と同じに扱ってあげているの?」
「それは流石にしないだろう?だって彼女はロジャースの王女だぜ?」
「ロジャースの王女だからこそ、私より更に丁重に接しなければならないのではなくて?」
そう言うとアンソニーは黙り込んだ。
「あなた、妃教育で彼女がどんな課題をどうやっているか把握しているの?」
「さぁ、ただ、フューリー夫人からはジニーにはまだまだ程遠いと聞いている。」
ジニーというのはヴァージニアの愛称である。
「トニー、あなた、彼女が簡単に私のようになれるとそう思っているの?私は17年、スターク国の公爵令嬢なのよ?逆に私がロジャースに行ってロジャースのマナーをマーガレット様並みに身につけるのにどれだけかかると思う?どう少なく見積っても三年はかかると思うんだけど。」
そう言うとアンソニーは鼻で笑ってこう言った。
「あの蛮族にマナーなんてあるのか?」
ヴァージニアはかつての婚約者がこれほどまでに無能だったのかと、眩暈がした。
「トニー!?本気で言ってるの?もういいわ。」
ヴァージニアにはもう一人、進言すべき人が居る。
アンソニーへの進言はもうこれ以上無駄だと踏んだヴァージニアは踵を返すとアンソニーの部屋を出た。
そして、目当ての人物の場所をたずねると、その返答に再度目眩を覚えた。
マーガレットは婚約が解消されるまで毎日王宮に通っていた。だから王宮にも知り合いは多い。
護衛を呼びマーガレットを部屋に運んでもらうよう手配するのも容易かった。
マーガレットを護衛に運ぶよう伝えた際に護衛が顔をしかめたのをヴァージニアは決して見逃さなかった。
マーガレットのことを王宮全体で拒否しているようだ。
その辺にいたメイドに医師を呼ぶように伝え、ヴァージニアもマーガレットに付き添い部屋まで行った。
マーガレットにあてがわれた部屋はかろうじて客間であるが北向きのじめじめとした場所にある、全体的に暗い雰囲気の部屋だった。
ヴァージニアは若い女性が来るのだからもう少し明るい色合いや、華やかな柄のカーテンやベッドカバーにしてあげれば良いのにと思った。
机の上には本日の課題と書かれた書写のお手本の紙が乗っていた。字からフューリー夫人の課題だと言うことが見て取れた。
そして、その下には丁寧に書かれた書写の課題が積まれていた。右上に小さく番号が振ってあり、一番上の紙には100と書かれていた。
字はかなり上手に見えた。これなら他の貴族と混ぜても遜色ない出来栄えだろう。この国の字を書き始めてまだ六ヶ月も経っていないことを考えると驚異的に感じた。
この100枚の書写を彼女は一体どのくらいの日にちを掛けて書いているのだろうか。ヴァージニアが子供の頃は1日せいぜい十枚だった。本日のと書かれているのでまさか、1日100枚?
彼女の顔色が死人のように悪い訳がわかった気がした。
それを隠すために厚化粧にしていたのか、させられていたのか。
ヴァージニアは沸々と怒りが湧いてきた。
その時、医者が来た。
医者の見立てでは寝ているのでなんとも言えないが、栄養失調だろう、ということだった。
一国の王太子の婚約者が栄養失調?なぜそうなる?食事を与えられていなかったのだろうか。
ヴァージニアの怒りは爆発寸前だった。
ロジャースの民ではないヴァージニアですら怒り狂うのに、これがロジャースの民にバレたら戦争は不可避だろう。王宮は一体何を考えているのか。繋がり作りのための婚約のはずが、さらに溝を深めてどうするのだ。
時計を見るとすでに夕方になっている。
ヴァージニアは先触れも出していないがアンソニーの執務室に殴り込みを掛けた。
「トニー、どう言うことなの?」
門の前に立つ護衛を無視してドアを勢いよく開けた。ヴァージニアの勢いにアンソニーはポカンとしている。
「マーガレット嬢のことよ。あなた、この婚約の意味をわかっていて?」
それでも尚アンソニーは意味がわからない、という顔でヴァージニアを見ている。ヴァージニアは何も理解していないアンソニーを見て大きくため息をつくと子供に言って聞かせるように伝えた。
「今日、マーガレット嬢があまりに顔色が悪いので学園を早退させました。マーガレット嬢は、帰りの馬車で気を失うようにお眠りになりました。王宮に戻って医師に診断させたところ栄養失調だそうよ。」
「栄養失調?どうしてまた?ハンガーストライキでもしているのか?」
「さぁ?本人がまだ目を覚さないから状況はわからないけれど、私は王宮内で彼女が蔑ろにされているのだと踏んでいるわ。そして、それはあなたが彼女を蔑ろにするからよ。」
「ないがしろ?そのつもりはないが。」
「じゃあ、私が婚約者だった頃と同じに扱ってあげているの?」
「それは流石にしないだろう?だって彼女はロジャースの王女だぜ?」
「ロジャースの王女だからこそ、私より更に丁重に接しなければならないのではなくて?」
そう言うとアンソニーは黙り込んだ。
「あなた、妃教育で彼女がどんな課題をどうやっているか把握しているの?」
「さぁ、ただ、フューリー夫人からはジニーにはまだまだ程遠いと聞いている。」
ジニーというのはヴァージニアの愛称である。
「トニー、あなた、彼女が簡単に私のようになれるとそう思っているの?私は17年、スターク国の公爵令嬢なのよ?逆に私がロジャースに行ってロジャースのマナーをマーガレット様並みに身につけるのにどれだけかかると思う?どう少なく見積っても三年はかかると思うんだけど。」
そう言うとアンソニーは鼻で笑ってこう言った。
「あの蛮族にマナーなんてあるのか?」
ヴァージニアはかつての婚約者がこれほどまでに無能だったのかと、眩暈がした。
「トニー!?本気で言ってるの?もういいわ。」
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