借り暮らししてたらいつの間にかイケメンに捕まってました

人間×小人

人間に見つかった

人間の世界が好きだ。

全部僕の背よりも大きいけれど、沢山のものや人が溢れていて、キラキラしていて楽しそうで羨ましい。
そして何より美味しい食材！！
お使いを頼まれて今僕が運んでいる角砂糖も、入れるだけで料理がぐんと美味しくなる。

木の棚の上を静かに歩きながら、そう妄想に耽っていたのが悪かったのかもしれない。
僕は、自分と砂糖を縛り付けている紐が歩く振動でどんどん緩んでいくことに気付かなかった。

コトン....ｯ

「！！？？」

あと少しで家というところで、静かな部屋に何かが落ちたような音が響くと同時に背中が軽くなったのを感じ、慌てて下を覗くと背負ってたはずの角砂糖周りに欠片を散らしながら床に落ちているのが見えた。
一瞬何が起きたか分からず、床に落ちた角砂糖を呆然と見つめることしかできない。

”え、あ、どうしよう！人間に気付かれた！？“

ようやく思考が動き出し慌てて顔を上げるとちょうど人間の顔がスローモーションのようにこちらを向いて、そして目がパチっと合ってしまった。
初めてしっかりと見たこの部屋の主は、少し癖っ毛のある短髪がよく似合っていて大きな目と綺麗な鼻筋、シュッとした輪郭の綺麗な顔をした僕と同い年くらいの男。

「かっこいい...」

って違う！！！そうじゃない！
いつもベッドの上でぱそこんとやらをカチャカチャ弄ってたじゃないか...！！
なんでこんな音に反応するんだよ...！！

顔に見惚れ、そして彼に八つ当たりしたのも束の間、驚きもせず静かに体を起こしてこちらに近づいてきた男に手足が震え始める。
埃一つない綺麗な棚の上は普段は歩きやすくて好きだけれど、今は姿を隠せるものが見当たらずとっても憎い。
バクバク興奮している心臓の音と近付いてくる男の足音がとてもうるさい。

”逃げたいけど逃げる場所がない、
というかずっと目合ってるし...！！
どうしよう、体がくすんで動けない...人間に見つかったらどうなるんだろう？食べられちゃうのかな。嫌だ...怖い、怖い...！！”

お使いに出る前、初めて一人で外に行くことに浮かれている僕にしつこいほど注意してきたお父さんの言葉が頭に響いた。

”キョロキョロせず集中して進むんだよ。一人なんだからいつもより慎重に、そして絶対に人間には見つからないように“

ごめんお父さん、
僕、人間に見つかっちゃったみたいだ...