上 下
18 / 20
【秋の詩アンソロジー②】紅葉が泣いている~古都の秋に想ふ~ フォトダイアリー

日本の時代劇を愛するラビ村が韓国時代劇にハマった理由~情感たっぷりorノリの良いスピード展開か?

しおりを挟む
☆ 「紅葉が泣いている~古都の秋に想ふ~」


赤児の手のひらのようなもみじが
宙(くう)を舞っている
はらはら はらはら
音もなく静かに土に降り積もる小さな葉たちは
鮮やかに色づき 永久(とこしえ)の眠りにつく


いつだったか
もみじが真っ赤に紅葉するのは
血の涙を流しているからだと聞いたことがある
調べてみたら 本当に血液型があるとか何とか
嘘か本当かは知れない
まだ大学に通うためにに京都にいた時代
誰かが話していた
その話を聞いて数日後
清水寺まで出掛けた


折しも季節は紅葉(こうよう)たけなわの季節
色づいたもみじの葉が空も見えないほどびっしりと重なり合い
涯(はて)のない秋の蒼穹に映えていた
壮絶なまでの美しさに
一瞬 心がふるえた



        ー紅葉(もみじ)が泣いている
        ひそやかな秋の大気に耳を澄ませば
         紅葉の慟哭が確かに聞こえる
         血の涙を流してまで
         紅葉よ
         あなたは何故そんなに哀しげに身を揉んで泣くのか
         何があなたをそこまで哀しませるのかー



その日は観光シーズン真っただ中の秋の盛りで
あまたの観光客で広い御寺の境内はごった返していた
もみじの慟哭を聞いたひと刹那
周りの騒音はふつりとかき消え
私はただ彼女たちの泣き声だけを聞いた



ぼんやりと立ち尽くしていた私の肩に
通りすがりの誰かがぶつかっていった
謝ろうと慌てて振り返っても
カメラを担いだ中年男性はとっくに遠ざかっていた
図らずも 止まっていた周囲の刻(とき)が再びゆっくりと動き出す
何故か その日は境内をあちこち見て回る気にもなれず
入り口のもみじを見たきりで引き返した
御寺から続く三年坂と呼ばれる長い坂道を辿りながら
考え込む
「彼女」らの嘆きの理由は何なのだろう


古都で過ごした想い出多き青春時代は遠く過ぎ去り
あれから気の遠くなるような幾年月を重ねた今でも
応えは見つかっていない
我が家の庭のもみじは今
かつてないほど美しく染め上がっている
はらはら はらはら
今日も 小さな葉たちが宙を舞う
ただ ひととき燃えるような情熱の色に我が身を染め
潔く散ってゆくもみじ
己れの運命(さだめ)の儚さに自ら涙しているのか
はらはら はらり
ひとひらの色づいた葉が眼の前をよぎって
地面に舞い降りた

 
画像はイメージです。作者の撮影したものではありません。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

卯野の独り言

卯野四葉
エッセイ・ノンフィクション
日々の徒然に関する駄文を綴っていきます。たまに創作の裏話。 ツッコミや自身の考えや、いろいろ聞きたいので気軽にコメント残してくださいね。

日々雑記

いとくめ
エッセイ・ノンフィクション
気を抜くとあっというまに散らかり放題になるわたしの頭の中の記録みたいなものですが、ひょっとして誰かの暇つぶしになればうれしいです。 ※以前投稿したものもたまに含まれます

「最初から期待してないからいいんです」家族から見放された少女、後に家族から助けを求められるも戦勝国の王弟殿下へ嫁入りしているので拒否る。

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢に仕立て上げられた少女が幸せなるお話。 主人公は聖女に嵌められた。結果、家族からも見捨てられた。独りぼっちになった彼女は、敵国の王弟に拾われて妻となった。 小説家になろう様でも投稿しています。

人斬り金秋と透明人間

蝶野ともえ
キャラ文芸
相模白峰は透明人間になっていた。 突然の不可解な現象のせいで会社もクビになり、人とも話せずに心身ともに疲弊している時、一匹の犬と腰に二本の刀を差している武士、金秋が現れる。その1人と1匹は相模の事が見えていた。 相模は素っ気なく時々震え上がってしまうほどの殺意を放つ金秋の仕事、死んだ人間を斬るという奇妙な手伝うことになり……。 透明人間と侍と一匹の旅が始まった。 相模の透明な体は治るのか。そして、金秋が幽霊斬りをする理由、そして金秋の正体とは? 相模白峰(さがみ しろみね) 27歳   ごく普通のサラリーマンだったが、ある日突然透明人間になり他人から見られない体になってしまう。人との関わりに飢えている。普段仕事以外は引きこもりでゲームと読書好き。料理は大の苦手。 金秋(きんしゅん) 年齢不明  不思議な二本指しの武士。人斬りだと話すが、訳あって死んだ人間を斬る仕事をしている。刀の腕はかなりなもので、運動神経も高い。そっけなく、無口。だが、迅にだけは笑顔を見せる。(他の相手には、得意気に微笑むことはあるが全て怖い) 迅(じん)  金秋の相棒。大型犬に見えるが、実は絶滅したはずのニホンオオカミ。人懐っこい性格をしているが、戦闘になると力を惜しまない。早い動きが得意で、金秋と連携して闘う。

「日常の呟き(雑談)」

黒子猫
エッセイ・ノンフィクション
日常のことを綴ってます✨

寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。

にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。 父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。 恋に浮かれて、剣を捨た。 コールと結婚をして初夜を迎えた。 リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。 ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。 結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。 混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。 もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと…… お読みいただき、ありがとうございます。 エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。 それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。

家族まるごと異世界に飛ばされた僕達のブログ

MJ
エッセイ・ノンフィクション
2006年春、僕達家族四人は異世界に飛ばされた。 異世界での生活は、私の長年の夢でもありました。 しかし、その世界での私の職業は、研究員(ポスドク)と言う一年先も保証されない状況でした。 その状況で家族を養って行くという状況はまさにこの世の地獄です。 しかも、そこは英語とフランス語が公用語でした。言葉の通じない家族四人での異世界での生活は想像以上に過酷でした。 しかし、何事もチャレンジしていれば、きっと先が見えてくるだろうと言う危険な考えの下、異世界での生活を楽しもうと覚悟を決めました。 我々の異世界での生活を参考に、皆さんが異世界での生活に憧れないように注意していただきたいと思っております。

夫が正室の子である妹と浮気していただけで、なんで私が悪者みたいに言われないといけないんですか?

ヘロディア
恋愛
側室の子である主人公は、正室の子である妹に比べ、あまり愛情を受けられなかったまま、高い身分の貴族の男性に嫁がされた。 妹はプライドが高く、自分を見下してばかりだった。 そこで夫を愛することに決めた矢先、夫の浮気現場に立ち会ってしまう。そしてその相手は他ならぬ妹であった…

処理中です...