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2-1『世界は異次元の存在を知る』
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午前7時。
「――すみません。はい、一応身体は大丈夫なんですが、大事を取って来週まで様子を見てみることにします。申し訳ないです、すみません。はい、失礼します。……ふぅ」
『一回の会話で、「すみません」が五回と「申し訳ありません」が二回。キミは随分と謙虚な人間なんだね』
「バカにしてんだろ」
スマホの通話を切った僕は、皮肉交じりにそう告げるアポストロスを睨みながら布団の上で横になる。
通話の相手は、僕が勤めるバイト先の店長。
昨日バイトをサボったことについて色々言われると思っていたんだけど、どうやらラブイーターの騒ぎは昨日夕方の時点で既にニュースになっていたらしく、報道を見てからずっと心配してくれていたらしい。朝早くだというのに、電話を掛けたら三コール以内で出てくれた。
その際、サボった件について色々と説明したり(流石にマジカル☆ナイト関連のことは話せなかったけど)相談に乗ってもらったりした結果、週末まで休みをもらえることになったんだ。
『行けなかった理由が「怪物から逃げる時に足を強く捻ってしまって」、か。うん、中々スマートな言い訳だ。連絡しなかったのも「気が動転していてそれどころじゃなかった」と、理解を得られやすい説明だね。口先八丁がモノをいう仕事とか向いてそうだ』
「うるさいなあ」
誤魔化すためとはいえ嘘を吐いたことには罪悪感を覚えているんだから、あんまり言わないで欲しい。
それにバカ正直に「僕、マジカル☆ナイトってのになったんですよ」なんて言おうものなら、ショックで頭がおかしくなったと思われるに決まってる。
それより、
「言い訳より、僕はジェット・ラビットの正体が自分だとバレないか心配だよ。顔を見られたのは楓さんだけだけど、夢子さんとも一瞬目があってるし……」
ジェット・ラビットの正体が自分だと知れたらなんて考えが繰り返し脳裏を過ってしまうせいで、そもそも学校やバイトに向かう気が起きないのだ。
またそれとは別に、僕は週末まで極力家に引き篭もろうと考えていた。
この引き篭もり期間中に正体を特定されなければ大丈夫なんじゃないか、なんていう浅はかな目安だ。
でも、
『ああ、それなんだけどね。問題ないよ。ジェット・ラビット=守多進治という発想は、変身している所を見られるかキミ自身が明かさない限り、誰も“可能性の一つとすら捉えない”だろうからね』
その言葉に、僕は拍子抜けした表情でアポストロスを見た。
「え、それってどういうこと?」
『マジカル☆ナイトには、他者からの認識を狭める力が備わっているんだよ』
「認識を、狭める?」
『そう。例えば――』
いまいちピンと来ていないのが伝わったんだろう。
小首を傾げる僕に、アポストロスはどう説明すべきかという風に腕を組む。
でも、やがてアイデアが浮かんだようで、咳払いをしながら解説してくれた。
『キミが食べようとしているこのカップ麺。これから連想することを、なんでもいいから思いつく限り列挙してみてくれるかい』
「? いいけど……」
僕は言われるがまま、ジっとカップ麺を見つめながら思いついたことを口にしていく。
「食べ物、白い容器、美味しい、ラーメン、お湯を入れて三分、百二十円のを特価で買ったから九十八円――」
およそ一分ほど、僕はカップ麺の見た目や種類、味や値段、賞味期限から製造日まで実に十数個の特徴を上げ連ねた。
途中『もういいよ』とアポストロスが止めたので、そのまま閉口。
『今キミは、あらゆる情報を連想し思い浮かべたよね。これがマジカル☆ナイトになると、そういった情報の連想が強制的に隔絶・限定されるんだ』
「……?」
再び首を捻る僕。
アポストロスは、より噛み砕いた説明をしてくれる。
『ようはマジカル☆ナイトになったカップ麺を見た時、白い容器に入っていることやお湯を入れて三分ってことくらいしか連想出来なくなるのさ。それと、これの本質がカップ麺であるという認識すら持てなくなる」
「うーん。分かるような、分からないような」
『……自分からバレるような行動しなきゃ、絶対にバレないってことさ』
『これ以上は好きに解釈してくれ』とでも言わんばかりに、アポストロスは溜息を零しながら僕にそう言った。
どうしよう、匙を投げられてしまった。
でも、結局のところバレないよう気を付けるということに変わりはないんだ。
それに、なんだかよく分からないけどバレにくくなるというのなら、むしろありがたいことじゃないか!
そう開き直る僕の様子を見ていたアポストロスは、ふと不思議そうに首を傾げた。
『ところで守多進治。学校での振る舞いでも気になっていたんだけど、そもそもキミはどうしてマジカル☆ナイトであることを隠そうとするんだい? ヒーロー願望とか自己顕示欲とか、そういうのはないのかい? 上手く立ち回れば、成功者と呼ばれる人々と肩を並べられるだけの財だって得られるかもしれないのに』
「あー……」
ギクリと、僕の肩が一瞬揺れた。なかなかどうして痛いところを突いてくるじゃないか……。
正直言って、そういう願望が無いわけじゃない。僕だってチヤホヤされたいし、世界の中心に居るような経験を人生で一度はしてみたい。
でも、そんな私情を挟む余地のない理由が僕にはあった。
「マジカル☆ナイトってさ、やることはかなり危険だろ? もし母さんがそれを知ったら、ちょっとマズイというか……」
我が守多家は現在、母一人子一人の母子家庭だ。ただ色々と事情があって、母さんは遠く離れた祖父母の家に居候していて一緒に暮らしていない。
母さんは極度の心配性なうえに、ちょっと精神が不安定な人なんだ。だからあんまり心配を掛けてストレスを溜めさせたくない。それにマジカル☆ナイトなんて危険なことやってると知れたら、間違いなく引き止めに来るに決まっているしね。
だから周囲に正体がバレて親にそのことが伝わるような事態は、何より都合が悪かった。
そんな訳で今の僕は、六畳一間(ユニットバス付き)の木造アパートの一室で絶賛一人暮らし中なのだ。
『親、か。うーん、ボクにはよく分からない感覚だ』
「分からないって、お前には居ないのか? 親」
『アポストロスの場合は、産まれたというより創られたと表現した方が正しいからね。概念的には彼女を親と呼んでいいのかもしれないけど、キミ達とはニュアンスが違ってくるかな』
「創られた?」
『うん。……気になるなら、その辺について話そうか? ちょっと長い話になるけど』
「いや、長いなら遠慮しとく」
『そうかい? ま、キミの話とは無関係だし、確かにその方がいいね』
アポストロスを創ったという存在についてはちょっとだけ気になりもしたけど、それより今は目の前のことを優先したい。
ここらで互いに一旦話を区切り、僕は再びニュースサイトを閲覧しながらカップ麺を啜る。
でも、スクロールした画面に映るのは、ラブイーターが齎した被害(交差点のモノを含む)やジェット・ラビットについての話題ばかり。
芸能人の浮気発覚とかアイドルの引退なんてニュースも端っこの方に少しだけあったけど、そっちは心底どうでもいいのでスルー。
どうやらこれ以上の情報は無さそうだ。
――ジェット・ラビットの正体は、あくまでも不明っと。
正直ホっとした。マジカル☆ナイトの情報を狭める力のおかげか、守多進治の“も”の字も無い。
僕は心の中で息を吐きながら、何か明るいニュースはないかと画面を更新する。
けど、画面の更新が終わった次の瞬間、再びとんでもない見出しが目に飛び込んできた。
[緊急放送。異次元の存在を名乗る謎の生物が総理官邸に出現。現在総理と会談中]
「ングッ!?」
飲み込もうとしていた麺が喉に詰まり、気道が塞がれ呻き声が漏れる。
けど僕は、咄嗟に激しく胸を叩くことでどうにか事なきを得た。
そして息を整えると、自分が見たものが事実であるのかを確かめる為に再びスマホの画面を見る。
[緊急放送。異次元の存在を名乗る謎の生物が総理官邸に出現。現在総理と会談中]
そこには変わらず、意味不明な文字の羅列があった。
「……。……ふぅー」
箸を持つ手が止まり、暫くの沈黙。気持ちを落ち着かせるために小さく息を吐く。
……なにやってんの? ねぇ、なにやってんの異次元の存在。
僕は現在進行形で起きている事態に理解が追いつかず、頭に疑問符を浮べながら真顔で画面を見つめることしか出来ない。
『おや。今回の接触は、また随分と時間が掛かったみたいだね』
その時、ウサギっぽい謎生物が僕とスマホの間からニョッキリと顔を出し、まじまじと画面を覗き込んできた。
「へ、何、接触?」
『うん。本当ならラブイーターが出現した時点で、アポストロスの代表がその国の代表とコンタクトを取る手筈だったんだ。マジカル☆ナイトの存在を公にすると同時に、それがラブイーターへの唯一の対抗手段であることを伝えるためにね。キミだって、今後活動を続けていくにあたってずっと「謎のコスプレ少年」という肩書きのままだと嫌だろう?』
「そりゃあ、まあ……」
一瞬(何言ってんだコイツ)と思ったけど、考えてみれば確かに理に適った話ではある。
四次元の力なんて胡散臭いものを個人が語り広げるより、偉い立場の人間が公の場でその存在を認めた方が、説明を始めとしたあらゆる手間が省けるに違いない。
だからといってすぐに世間に受け入れられるものではないだろうけど、そういう存在が実在すると周知されるだけでも周りの反応も違ってくるだろう。
「にしてもこの会談、どれくらい続くのかな……。他人事じゃないし、途中経過も気になるんだけど」
『この国、ひいては世界の行く末に関わることだからね、一昼夜では済まないだろうさ。それにボクらにはやるべきことがある』
ボクら、とは彼等のことだろうか? 総理との会談以外にも、まだやることがあるのか……。
なんて思っていると――。
『それじゃあ、行こうか』
「へ? 誰が、何処に?」
そう言って、目の前の謎生物は唐突に僕の方へ振り返ると目を細めた。
途端、僕は言語化しがたい妙な焦燥感に襲われる。
不思議だなぁ。暑くないのに汗が止まらないぞぉ?
『じきに世界は、異次元の存在を知る。なら――』
けど、そんな僕に構うことなくアポストロスは話を進める。
そして言った。
『次にやるべき事は、マジカル☆ナイトのイメージアップだよ』
「――すみません。はい、一応身体は大丈夫なんですが、大事を取って来週まで様子を見てみることにします。申し訳ないです、すみません。はい、失礼します。……ふぅ」
『一回の会話で、「すみません」が五回と「申し訳ありません」が二回。キミは随分と謙虚な人間なんだね』
「バカにしてんだろ」
スマホの通話を切った僕は、皮肉交じりにそう告げるアポストロスを睨みながら布団の上で横になる。
通話の相手は、僕が勤めるバイト先の店長。
昨日バイトをサボったことについて色々言われると思っていたんだけど、どうやらラブイーターの騒ぎは昨日夕方の時点で既にニュースになっていたらしく、報道を見てからずっと心配してくれていたらしい。朝早くだというのに、電話を掛けたら三コール以内で出てくれた。
その際、サボった件について色々と説明したり(流石にマジカル☆ナイト関連のことは話せなかったけど)相談に乗ってもらったりした結果、週末まで休みをもらえることになったんだ。
『行けなかった理由が「怪物から逃げる時に足を強く捻ってしまって」、か。うん、中々スマートな言い訳だ。連絡しなかったのも「気が動転していてそれどころじゃなかった」と、理解を得られやすい説明だね。口先八丁がモノをいう仕事とか向いてそうだ』
「うるさいなあ」
誤魔化すためとはいえ嘘を吐いたことには罪悪感を覚えているんだから、あんまり言わないで欲しい。
それにバカ正直に「僕、マジカル☆ナイトってのになったんですよ」なんて言おうものなら、ショックで頭がおかしくなったと思われるに決まってる。
それより、
「言い訳より、僕はジェット・ラビットの正体が自分だとバレないか心配だよ。顔を見られたのは楓さんだけだけど、夢子さんとも一瞬目があってるし……」
ジェット・ラビットの正体が自分だと知れたらなんて考えが繰り返し脳裏を過ってしまうせいで、そもそも学校やバイトに向かう気が起きないのだ。
またそれとは別に、僕は週末まで極力家に引き篭もろうと考えていた。
この引き篭もり期間中に正体を特定されなければ大丈夫なんじゃないか、なんていう浅はかな目安だ。
でも、
『ああ、それなんだけどね。問題ないよ。ジェット・ラビット=守多進治という発想は、変身している所を見られるかキミ自身が明かさない限り、誰も“可能性の一つとすら捉えない”だろうからね』
その言葉に、僕は拍子抜けした表情でアポストロスを見た。
「え、それってどういうこと?」
『マジカル☆ナイトには、他者からの認識を狭める力が備わっているんだよ』
「認識を、狭める?」
『そう。例えば――』
いまいちピンと来ていないのが伝わったんだろう。
小首を傾げる僕に、アポストロスはどう説明すべきかという風に腕を組む。
でも、やがてアイデアが浮かんだようで、咳払いをしながら解説してくれた。
『キミが食べようとしているこのカップ麺。これから連想することを、なんでもいいから思いつく限り列挙してみてくれるかい』
「? いいけど……」
僕は言われるがまま、ジっとカップ麺を見つめながら思いついたことを口にしていく。
「食べ物、白い容器、美味しい、ラーメン、お湯を入れて三分、百二十円のを特価で買ったから九十八円――」
およそ一分ほど、僕はカップ麺の見た目や種類、味や値段、賞味期限から製造日まで実に十数個の特徴を上げ連ねた。
途中『もういいよ』とアポストロスが止めたので、そのまま閉口。
『今キミは、あらゆる情報を連想し思い浮かべたよね。これがマジカル☆ナイトになると、そういった情報の連想が強制的に隔絶・限定されるんだ』
「……?」
再び首を捻る僕。
アポストロスは、より噛み砕いた説明をしてくれる。
『ようはマジカル☆ナイトになったカップ麺を見た時、白い容器に入っていることやお湯を入れて三分ってことくらいしか連想出来なくなるのさ。それと、これの本質がカップ麺であるという認識すら持てなくなる」
「うーん。分かるような、分からないような」
『……自分からバレるような行動しなきゃ、絶対にバレないってことさ』
『これ以上は好きに解釈してくれ』とでも言わんばかりに、アポストロスは溜息を零しながら僕にそう言った。
どうしよう、匙を投げられてしまった。
でも、結局のところバレないよう気を付けるということに変わりはないんだ。
それに、なんだかよく分からないけどバレにくくなるというのなら、むしろありがたいことじゃないか!
そう開き直る僕の様子を見ていたアポストロスは、ふと不思議そうに首を傾げた。
『ところで守多進治。学校での振る舞いでも気になっていたんだけど、そもそもキミはどうしてマジカル☆ナイトであることを隠そうとするんだい? ヒーロー願望とか自己顕示欲とか、そういうのはないのかい? 上手く立ち回れば、成功者と呼ばれる人々と肩を並べられるだけの財だって得られるかもしれないのに』
「あー……」
ギクリと、僕の肩が一瞬揺れた。なかなかどうして痛いところを突いてくるじゃないか……。
正直言って、そういう願望が無いわけじゃない。僕だってチヤホヤされたいし、世界の中心に居るような経験を人生で一度はしてみたい。
でも、そんな私情を挟む余地のない理由が僕にはあった。
「マジカル☆ナイトってさ、やることはかなり危険だろ? もし母さんがそれを知ったら、ちょっとマズイというか……」
我が守多家は現在、母一人子一人の母子家庭だ。ただ色々と事情があって、母さんは遠く離れた祖父母の家に居候していて一緒に暮らしていない。
母さんは極度の心配性なうえに、ちょっと精神が不安定な人なんだ。だからあんまり心配を掛けてストレスを溜めさせたくない。それにマジカル☆ナイトなんて危険なことやってると知れたら、間違いなく引き止めに来るに決まっているしね。
だから周囲に正体がバレて親にそのことが伝わるような事態は、何より都合が悪かった。
そんな訳で今の僕は、六畳一間(ユニットバス付き)の木造アパートの一室で絶賛一人暮らし中なのだ。
『親、か。うーん、ボクにはよく分からない感覚だ』
「分からないって、お前には居ないのか? 親」
『アポストロスの場合は、産まれたというより創られたと表現した方が正しいからね。概念的には彼女を親と呼んでいいのかもしれないけど、キミ達とはニュアンスが違ってくるかな』
「創られた?」
『うん。……気になるなら、その辺について話そうか? ちょっと長い話になるけど』
「いや、長いなら遠慮しとく」
『そうかい? ま、キミの話とは無関係だし、確かにその方がいいね』
アポストロスを創ったという存在についてはちょっとだけ気になりもしたけど、それより今は目の前のことを優先したい。
ここらで互いに一旦話を区切り、僕は再びニュースサイトを閲覧しながらカップ麺を啜る。
でも、スクロールした画面に映るのは、ラブイーターが齎した被害(交差点のモノを含む)やジェット・ラビットについての話題ばかり。
芸能人の浮気発覚とかアイドルの引退なんてニュースも端っこの方に少しだけあったけど、そっちは心底どうでもいいのでスルー。
どうやらこれ以上の情報は無さそうだ。
――ジェット・ラビットの正体は、あくまでも不明っと。
正直ホっとした。マジカル☆ナイトの情報を狭める力のおかげか、守多進治の“も”の字も無い。
僕は心の中で息を吐きながら、何か明るいニュースはないかと画面を更新する。
けど、画面の更新が終わった次の瞬間、再びとんでもない見出しが目に飛び込んできた。
[緊急放送。異次元の存在を名乗る謎の生物が総理官邸に出現。現在総理と会談中]
「ングッ!?」
飲み込もうとしていた麺が喉に詰まり、気道が塞がれ呻き声が漏れる。
けど僕は、咄嗟に激しく胸を叩くことでどうにか事なきを得た。
そして息を整えると、自分が見たものが事実であるのかを確かめる為に再びスマホの画面を見る。
[緊急放送。異次元の存在を名乗る謎の生物が総理官邸に出現。現在総理と会談中]
そこには変わらず、意味不明な文字の羅列があった。
「……。……ふぅー」
箸を持つ手が止まり、暫くの沈黙。気持ちを落ち着かせるために小さく息を吐く。
……なにやってんの? ねぇ、なにやってんの異次元の存在。
僕は現在進行形で起きている事態に理解が追いつかず、頭に疑問符を浮べながら真顔で画面を見つめることしか出来ない。
『おや。今回の接触は、また随分と時間が掛かったみたいだね』
その時、ウサギっぽい謎生物が僕とスマホの間からニョッキリと顔を出し、まじまじと画面を覗き込んできた。
「へ、何、接触?」
『うん。本当ならラブイーターが出現した時点で、アポストロスの代表がその国の代表とコンタクトを取る手筈だったんだ。マジカル☆ナイトの存在を公にすると同時に、それがラブイーターへの唯一の対抗手段であることを伝えるためにね。キミだって、今後活動を続けていくにあたってずっと「謎のコスプレ少年」という肩書きのままだと嫌だろう?』
「そりゃあ、まあ……」
一瞬(何言ってんだコイツ)と思ったけど、考えてみれば確かに理に適った話ではある。
四次元の力なんて胡散臭いものを個人が語り広げるより、偉い立場の人間が公の場でその存在を認めた方が、説明を始めとしたあらゆる手間が省けるに違いない。
だからといってすぐに世間に受け入れられるものではないだろうけど、そういう存在が実在すると周知されるだけでも周りの反応も違ってくるだろう。
「にしてもこの会談、どれくらい続くのかな……。他人事じゃないし、途中経過も気になるんだけど」
『この国、ひいては世界の行く末に関わることだからね、一昼夜では済まないだろうさ。それにボクらにはやるべきことがある』
ボクら、とは彼等のことだろうか? 総理との会談以外にも、まだやることがあるのか……。
なんて思っていると――。
『それじゃあ、行こうか』
「へ? 誰が、何処に?」
そう言って、目の前の謎生物は唐突に僕の方へ振り返ると目を細めた。
途端、僕は言語化しがたい妙な焦燥感に襲われる。
不思議だなぁ。暑くないのに汗が止まらないぞぉ?
『じきに世界は、異次元の存在を知る。なら――』
けど、そんな僕に構うことなくアポストロスは話を進める。
そして言った。
『次にやるべき事は、マジカル☆ナイトのイメージアップだよ』
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