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恋の季節にぬくもりを
因縁
しおりを挟むでも、説明はつく。
「——コヨ・タキッシェ氏は、サヌラの民だね。その力は根源的だから、セヴァにはわからない」
「……?」
「おっと、時間切れかな? この話はまたあとで」
「あ、はい——」
カルナは右耳の通信機にふれた。
自動的に変形して、右目だけを透明なディスプレイが覆う。
映像の中では、圭がリバの背に乗って移動をはじめようとしていた。
(さすが、圭クン、正解♥)
ルレンは、ジェレンよりも耐久力が低く、行動パターンも単純だ。
〝揺るぎなく確かな絆〟で生み出した障壁にぶつけるだけで破壊できる。
問題は、3桁に迫ると推定されるその数で、圭自身が狙われるとなれば、ユクルユフェーアをつむぐ余裕などありはしない。
その上、リバが守勢に回れば、ジリ貧は確実。
だとすれば、リバの背に乗り、高速で移動しつづけるが正しい。
とはいえ、動いているものの背中に身を預けながら、ユクルユフェーアを描くことは難しい。
まして、敵の攻撃を受けながらとあっては、至難の業だ。
ただ、いまの圭とリバならできるのだ。
絆があるから。
(では、こちらも)
境内の中央、石畳の上。
取り巻くギャラリー——ワクワク♡ キラキラ♥ と目を輝かせるファンの皆さまに「ども、ども~♪」と手を振ってから、表情をきりりとさせた。
こころを研ぎ澄ます。
(この風に身を任せよう)
指先で軽やかにユクルユフェーアを描く。
アルテリウアにもいくつかのタイプがあって、たとえば、攻撃を得意とする者もいれば、防御や治癒、補助に特化する者もいるし、単体に力を集中させることに優れる者もいれば、広い範囲に力を及ぼすことに長けた者もいる。
また、近距離・直接的なユーグネアを好むアルテリウアもいれば、遠距離・間接的なユーグネアに本領を発揮するアルテリウアもいる。
カルナは、ルクフェネと同じように、どのようなユーグネアも使いこなし、ありとあらゆる場面に対応できるタイプだ——というより、順番が逆で、カルナのスタイルに憧れ、真似をしたのがルクフェネだ。
ルクフェネ本人は認めないけれども。
ただ、空間的な意味では、カルナは遠距離・間接的なユーグネアを圧倒的に好む。
ほぼ百パーセントといえるほどに。
(ようするに、二十日兎と同じタイプなんだよね)
だから、ジェレンが二十日兎に遠隔操作されていたことも、ルクフェネより早く——というより、はじめから気がついていたのだ。
(まあ、これも因縁かな)
カルナはまた、表情を変えずに、口許だけに笑みを浮かべた。
(二十日兎殿——いや、サルヴォ・ボアッテネ・ペセトエイセ殿下)
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