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恋の季節にぬくもりを
カルナはなんとも形容しがたい表情をした
しおりを挟む面白そうに笑って、それから、デンテナは心配そうに瞳を陰らせた。
「あの子、相変わらず、考え過ぎて空回りしたり、こだわり過ぎて意固地になったりしてるでしょ? そこは、カルナちゃんのほうで、支えてあげてね」
「もちろんですよ」
「あなたほどの実力の持ち主を、小さな総督府に押し込んで、申し訳ないと思ってるわ」
「それは陛下の思い違いです。どうぞ、お気になさらず」
「あいかわらずね……」
デンテナはため息をついた。
「次の昇格試験も受けないつもりなの? ギルブスは、こんど昇格試験をサボったら、懲罰として、強制的に昇格させる、っていってるわよ」
セーグフレードの防衛組織である蒼穹軍。
ギルブス・ロニオーシュは、その最高位である髭鷲将の1人だ。
「そこは、なにとぞ陛下からお口添えを」
「するわよ、ルクフェネのことも、助かってるし。でも、あたしも、強権をふるうことまではしないわよ。あなたの日ごろの言動と、あなたのことが嫌いな連中の、恨み・妬み・嫉み・厭み・僻み・やっかみのおかげで、しばらくは安泰?でしょうけど」
「よくよく嫌われたもんですな~♨」
カルナは、ほえほえ、と応じる。
「カルナちゃんねえ……」
デンテナはため息を漏らす。
「あなたのことは、昔からよく知ってるから、特別に階級を得たいわけではないのは、わかってるけど、あなたが欲しなくても、階級のほうがあなたを欲することだってあるの。そこのところ、よく考えて」
「なるべくは……」
「だからねえ——」
二、三、小言を付け加えようとして、デンテナはやめた。
「じゃあ、兄のことで、手に余ることがあったら、あたしにいってちょうだい。——あと、そうそう、ルクフェネに、ちゃんと連絡を寄越すようにいっておいてちょうだい」
「あらら? 喧嘩でもしてましたか?」
カルナは首を傾げる。
「ちょっとね。『いいひとのひとりくらいいるんでしょ、写真くらい送りなさい』っていったら、『意味がわからない』って。意味がわからないのは、こっちのセリフよね? で、しつこく聞いたら、事務連絡しか寄越さなくなっちゃった、ってわけ」
ああ——と、カルナは、なんとも形容しがたい表情をした。
(それ、文字どおりに、意味が通じてないんだよ~⌘)
「難しい年ごろだろうから、母も遠回しに聞いてあげてるのよ? なのに、あの子ったら! どうして、この母の愛をわかろうとしないのでしょう! たとえば、片思いしてる男の子がいるとか、でも、想いを打ち明けられなくて——みたいな、悩みごとがあるのなら、いってくれてもいいって思わない? そしたら、恋の悩みごとの1つや2つや3つや4つ、母も喜んで聞いてあげるでしょう!! てゆうか、母は聞きたいの! そういう、きらきら☆きゅんきゅん♥したのを!!」
(しまった、何かに火を着けちゃったよ~、聞かなきゃよかったよ~⌘ あと、なんか、『母の愛』とは違うの、にじみ出ちゃってるよ~⌘)
「それをあの子ったら!! カルナちゃん、どう思う!?」
「いえ……まあ……」
「ハッ!! まさかあの子、この母の『娘に彼氏ができたら、何かにかこつけて借りて毎日デートしちゃうかも♥作戦』に感づいて、隠しごとでもしてるのかしら!? もうっ、こうなったら、最近、遠出してないし、外遊にかこつけて直接、乗り込んじゃおうかしら!?」
(そんな作戦があったのか……って、えっ!? こっちに乗り込んでくる!? ズイマー!! こっちは、どうやってルクフェネの身分を隠しとおせるか、悩んでいるトコなのに、ぶち壊しだよ~!! あと、どっちにしろ、圭クン、ドン引きだよ~⌘)
「そ、そそそ……それは、こちらもこのような状況で……ですし、もっとずっと落ち着いてからで……」
「うーん、まあ、それもそうね……」
意外にもデンテナは引き下がった。
カルナは、ほっとする。
が、デンテナは顔を画面に近づけて、眉間に皺を寄せた。
顔面どアップ、ででんでーん。
「カルナちゃん、あたしに嘘をついても、隠しごとをしてもかまわないけど、相応の覚悟のもとにしてよね!!」
「ハイ……」
こわ……。
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