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形勢逆転…にはほど遠い現実

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「リバ! リバ!」

 リバは混乱のままにしっぽを飛ばしてくる。
 なすすべもなく、圭はまた吹っ飛ばされた——が、ほこりまみれになって起き上がりながら、圭は感じた。

かぎづめだったら間違いなく致命傷だった……)

 口の中を切ったのか、血がしたたちる。
 でも、それだけだ。

(リバは僕の声を聞いて必死に抵抗してくれている。仮面の男も万全じゃない)

 しかし——。

「うああ……っ!! ああ……っ! ああ……。……」

 苦しんでいたリバは不意に静かになった。
 すうっと顔を上げ、無機質に圭を見る。

「……」
「くくく……、多少は本気を出してれよう」

 リバは前脚にぐっと力を入れた。

(来る……!!)

 圭は、指先で空中にユクルユフェーアを描いた。

 ——ひとつは仮面の男自身がいったこと。

 まったんな小娘なんぞ、したる問題でもかったのだ。
 しかるに、貴様が現れたことで予定が狂ってった。

 つまり、仮面の男は〈セグレンデのふたみみ〉を脅威に感じている。

 ——もうひとつは、カルナが送ってくれた〈セグレンデのふたみみ〉の古い記録。

 こころを通わせる〈セグレンデのふたみみ〉。
 それは2人のユクルユフェーアを重ね合わせ、強めてくれる。

 けれども、その古い記録——おそらくは初めてつむぎ、しかし、ついに成功を見なかったアルテリウアが残したもの——は、ある可能性を示唆していた。

 こころとこころをつなげてくれるユーグネア——セグレンデのふたみみ
 それは、2人のユクルユフェーアを重ね合わせ、強めてくれる——そして、こころを通わせた2人は、互いの力を共有できる、と。

強き熱き力よ、我が身に宿れリース・ルッス・ルケア オル・ロロ・ティシェーア

 力が湧き上がり、体が軽くなる。
 加速する。
 突進してきたリバをかわし、さらに飛んできた3本のしっぽを、身をひるがえしてよける。

 リバはすぐにかぎづめで攻撃してくる。
 圭はバランスを崩す。

 死角から飛んできたしっぽが直撃する——が、圭はそれをはね返した。

なるほど……」

 ただ、仮面の男はほくそ笑んだ。

れど微々たる変化だな……。かも、ほれ、もう息切れるではいか。しかるに、リバはますます我が意のままだ!」
「……」

 圭はいい返せない。そのとおりだからだ。

 共有できるとはいってもその力はわずかで、そしてそれさえ、アルテリウアではない圭には制御し切れない。
 一方で、リバの動きは研ぎ澄まされていく。

 気がつけば、圭は沼の岸辺まで追いつめられていた。
 背後は水面であって、逃げ場がない……。

 かぎづめの攻撃をかわし、飛んできたしっぽを何とか受け止める——が。

「うぐ……!!」

 リバの骨張った翼は、鋭い刃となって圭の脇腹を切り裂いていた。
 たまらず膝を突く。

「ははは、あらがったようだが、此処ここまでだな……!」

 痛いというより熱い。手で押さえても指の間から血がにじみ出てくる。

「終わりだ……!」

 リバは前脚を振りかぶった。かぎづめの刃が鈍く光る。
 振り下ろす——。
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