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第8章<最後の戦い>
3、悲痛
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ダメだっ、今度こそ死んじゃうっ、私は爆破の恐怖でギュッと目を瞑る。
しかし爆音だけが私の耳に届き、爆風も、熱さも、私には届かなかった。
音がしなくなり、私が目をそっと開けると、私の周りに7体のストラスが集まって、私を守っていた。
7体全部って、セイフィード様は、大丈夫なの?
私はストラスをかき分け、セイフィード様を探す。
セイフィード様は倒れている。
仰向けになり、目を瞑っている。
まさか⋯⋯。
私は、急いでセイフィード様に駆け寄り、体を揺らした。
「セイフィードさまっ、嫌だっ、死んじゃダメっ」
「勝手に殺すな。少し疲れただけだ」
セイフィード様は起き上がり、私の頭をポンポンした。
「良かったです。もう本当に心臓が止まるかと思いました」
「あぁ、俺も一瞬死ぬかと思ったが、なんとか防御壁の発動が間に合った。それはそうと、あれほどストラスから離れるなと言ったのに」
その時、ストラス1体が再度、私に近づき、まとわりついた。
そしてストラスは私に頬ズリし始め、翼で私を包み込む。
私はそんなストラスの胸を撫で撫でする。
「ごめんなさい。でも、もう大丈夫ですよね?」
「どうかな」
セイフィード様は周囲を見渡す。
私もつられて周囲を見渡すと、離宮は爆発の衝撃で半壊しており、辺り一面に焦げ臭い匂いが漂う。
シャーロットや、マーリン師はラウル先生の防御壁のお陰で無傷のようだ。
第二王子も無事だが、真っ青な顔をし、ウォーレンを見下ろしている。
「セイフィード、すぐにこっちに来てくれ」
第二王子が悲痛な声で、セイフィード様を呼ぶ。
セイフィード様はすぐに駆け寄り、同じくウォーレンを見下ろす。
私は重いストラスを引きずるようにして、ウォーレンに近付こうと足を進めた。
「酷い」
セイフィード様も青ざめ、絶望的な視線をウォーレンに向ける。
「ウォーレンを死なせては駄目だ。セイフィード、治癒するんだ」
「マーリン師も呼んでください」
第二王子がすぐにマーリン師も呼び、セイフィード様とマーリン師2人でウォーレンに治癒魔法を施す。
セイフィード様とマーリン師の両手をウォーレンに当てると、その箇所がほのかに光りだす。
ウォーレンは、ぼんやりと、どこか遠くを見つめながら、言葉をポツリポツリと話し出した。
「さすがだ⋯⋯、セイフィード。ストラス操りながら、さらに強力な防御魔法を発動できるとは⋯⋯。それにこの楔にはどうやら防御魔法を封じているようだな⋯⋯。私の防御魔法が発動しなかった、ほんと、計算外だよ」
「もう喋るなっ」
「あぁ、マーリン師もいるのか⋯⋯、もう私は駄目だ⋯⋯。それくらいわかる。マーリン師の元で医術を学んだ私には、わかる」
「ウォーレン、生きろ。死んでは駄目だ」
第二王子は膝をつき、ウォーレンの耳元で声をかける。
「私が死なない限り、私は王子の命を狙い続ける」
「それでも、生きるんだ。兄のために」
「⋯⋯⋯⋯兄さん」
私も、ストラスを引きずりながら、ようやくセイフィード様がいる所にたどり着く。
私は第二王子とセイフィード様の間から、ウォーレンを覗き見た。
ウォーレンは、誰が見ても助かりそうな状態ではない。
逆に息があるのが不思議なほど、体の損傷が激しい。
目も生気がなく、あまり見えていなそう。
けれど、私がさらに近づくと、ウォーレンと目が合った。
「クララ⋯⋯」
ウォーレンは私の方に手を伸ばす。
第二王子は私を見ると、私のために隙間を開け、もっと近づくよう即す。
そして、第二王子は「ウォーレンの手を握って欲しい」と私の耳元で囁いた。
セイフィード様を見ると、ダメだ、と声に出さず口だけ動かす。
しかし第二王子はさらに私の耳元で「頼む」と囁いた。
セイフィード様は苦渋の表情をし、目を閉じる。
私は、とても怖かったけど、優しかったジークさんの面影を思い浮かべ、血塗れのウォーレンの手をそっと握った。
「クララ⋯⋯。生きていたんだね。良かった⋯⋯。クララ、お願いだ。兄さんに、兄さんに、会いに行って⋯⋯。兄さんは魔界にいるんだ。王子、お願い⋯⋯だ、クララを兄さん⋯⋯、のところ、に連れ⋯⋯、て行って。お⋯⋯願い⋯⋯だ⋯⋯」
ウォーレンの手が冷たくなる。
マーリン師が首を横に振り、ウォーレンに治癒魔法を施していた手をそっと引っ込める。
セイフィード様も同じく治癒魔法を辞めた。
私はウォーレンの手を離せずにいる。
もしかして⋯⋯、死んでしまったのだろうか。
「アンナ、手を離すんだ」
セイフィード様は、私の手をウォーレンの手から引き剥がした。
「ウォーレンは死んだ」
マーリン師が告げる。
マーリン師は涙を流し、ウォーレンの目をそっと閉じた。
「アンナ、アンナはクララと良く似ていたんだ。最後に手を握ってくれ、感謝する」
第二王子は、私の肩に手を置き、頭を下げる。
「騙すようなことをしてしまいましたが、これで良かったんでしょうか⋯」
「これで良かったんだ。ウォーレンは最後に心の安らぎを得たはずだ。ウォーレンはクララの死をどうしても認められなかったからな。どこかで生きている、生きてて欲しいと願って、最後にそれが叶ったのだから」
「そうなんですね⋯⋯」
「それでだ、城の方も気になるから、すぐに転移する。セイフィード、転移できそうか?」
「大丈夫です」
セイフィード様は、さっきオリヴィア様から魔力を吸収したと思われる木の実を割る。
すると木の実の割れ目から光が漏れ出て、セイフィード様にその光が吸い込まれた。
おそらく魔力の補充をしたに違いない。
「親衛隊の誰かを寄こすが、それまでマーリン師とラウル先生でここの後処理を衛兵達に指示するんだ。それ以外の者は解散だ」
第二王子には、いつも通り的確に指示をしていく。
このリーダーシップには本当に、敬服させられる。
「アンナ、何もせず、真っ直ぐ、家に帰れ」
セイフィード様は私に視線を向ける。
私のことが心配でしょうがないようだ。
だから私は、大丈夫です、心配しないで下さいという笑顔を作りセイフィード様にアピールする。
するとセイフィード様は、一呼吸し、また地面に手をつけ魔法陣を出現させる。
その魔法陣に第二王子とセイフィード様が入ると、2人はすぐに消える。
同時にストラス7体も消えた。
「アンナ、どこか怪我していない? 大丈夫?」
シャーロットは私に駆け寄り、私の体をくまなく調べる。
「大丈夫だよ。シャーロットこそ、大丈夫? せっかくの婚約パーティー台無しになっちゃったね」
「ええ、そうね。」
シャーロットは、相変わらず動揺していなく、残念勝手いない。
「もしかして、シャーロットは今日こんな事になるって知っていたの?」
「ええ、今日もしかすると襲撃があるかもしれないと、事前に知らせていたわ。マーリン師もラルウ先生もご存知だと思うわ」
「そうなんだ」
また私1人蚊帳の外。
「アンナ、手を拭いてあげるわ」
私の手は、ウォーレンの血が付いている。
ウォーレン⋯⋯、ジークさんは、死んでしまったんだ。
私の手が、視界が、歪み、涙が溢れ落ちる。
「ジークさん、死んじゃった」
「えぇ、そうね」
シャーロットは、優しく私の背中を摩る。
ジークさんに以前、私は騙されたけど、今は、優しく私に語り掛けるジークさんの声が、耳底に響いている。
「アンナさん、どうですか?」
私は⋯⋯、私は⋯⋯、大丈夫です。
きっと、この難題を解き、乗り越えます。
だから、ジークさん、来世では、必ず幸せになって下さい。
しかし爆音だけが私の耳に届き、爆風も、熱さも、私には届かなかった。
音がしなくなり、私が目をそっと開けると、私の周りに7体のストラスが集まって、私を守っていた。
7体全部って、セイフィード様は、大丈夫なの?
私はストラスをかき分け、セイフィード様を探す。
セイフィード様は倒れている。
仰向けになり、目を瞑っている。
まさか⋯⋯。
私は、急いでセイフィード様に駆け寄り、体を揺らした。
「セイフィードさまっ、嫌だっ、死んじゃダメっ」
「勝手に殺すな。少し疲れただけだ」
セイフィード様は起き上がり、私の頭をポンポンした。
「良かったです。もう本当に心臓が止まるかと思いました」
「あぁ、俺も一瞬死ぬかと思ったが、なんとか防御壁の発動が間に合った。それはそうと、あれほどストラスから離れるなと言ったのに」
その時、ストラス1体が再度、私に近づき、まとわりついた。
そしてストラスは私に頬ズリし始め、翼で私を包み込む。
私はそんなストラスの胸を撫で撫でする。
「ごめんなさい。でも、もう大丈夫ですよね?」
「どうかな」
セイフィード様は周囲を見渡す。
私もつられて周囲を見渡すと、離宮は爆発の衝撃で半壊しており、辺り一面に焦げ臭い匂いが漂う。
シャーロットや、マーリン師はラウル先生の防御壁のお陰で無傷のようだ。
第二王子も無事だが、真っ青な顔をし、ウォーレンを見下ろしている。
「セイフィード、すぐにこっちに来てくれ」
第二王子が悲痛な声で、セイフィード様を呼ぶ。
セイフィード様はすぐに駆け寄り、同じくウォーレンを見下ろす。
私は重いストラスを引きずるようにして、ウォーレンに近付こうと足を進めた。
「酷い」
セイフィード様も青ざめ、絶望的な視線をウォーレンに向ける。
「ウォーレンを死なせては駄目だ。セイフィード、治癒するんだ」
「マーリン師も呼んでください」
第二王子がすぐにマーリン師も呼び、セイフィード様とマーリン師2人でウォーレンに治癒魔法を施す。
セイフィード様とマーリン師の両手をウォーレンに当てると、その箇所がほのかに光りだす。
ウォーレンは、ぼんやりと、どこか遠くを見つめながら、言葉をポツリポツリと話し出した。
「さすがだ⋯⋯、セイフィード。ストラス操りながら、さらに強力な防御魔法を発動できるとは⋯⋯。それにこの楔にはどうやら防御魔法を封じているようだな⋯⋯。私の防御魔法が発動しなかった、ほんと、計算外だよ」
「もう喋るなっ」
「あぁ、マーリン師もいるのか⋯⋯、もう私は駄目だ⋯⋯。それくらいわかる。マーリン師の元で医術を学んだ私には、わかる」
「ウォーレン、生きろ。死んでは駄目だ」
第二王子は膝をつき、ウォーレンの耳元で声をかける。
「私が死なない限り、私は王子の命を狙い続ける」
「それでも、生きるんだ。兄のために」
「⋯⋯⋯⋯兄さん」
私も、ストラスを引きずりながら、ようやくセイフィード様がいる所にたどり着く。
私は第二王子とセイフィード様の間から、ウォーレンを覗き見た。
ウォーレンは、誰が見ても助かりそうな状態ではない。
逆に息があるのが不思議なほど、体の損傷が激しい。
目も生気がなく、あまり見えていなそう。
けれど、私がさらに近づくと、ウォーレンと目が合った。
「クララ⋯⋯」
ウォーレンは私の方に手を伸ばす。
第二王子は私を見ると、私のために隙間を開け、もっと近づくよう即す。
そして、第二王子は「ウォーレンの手を握って欲しい」と私の耳元で囁いた。
セイフィード様を見ると、ダメだ、と声に出さず口だけ動かす。
しかし第二王子はさらに私の耳元で「頼む」と囁いた。
セイフィード様は苦渋の表情をし、目を閉じる。
私は、とても怖かったけど、優しかったジークさんの面影を思い浮かべ、血塗れのウォーレンの手をそっと握った。
「クララ⋯⋯。生きていたんだね。良かった⋯⋯。クララ、お願いだ。兄さんに、兄さんに、会いに行って⋯⋯。兄さんは魔界にいるんだ。王子、お願い⋯⋯だ、クララを兄さん⋯⋯、のところ、に連れ⋯⋯、て行って。お⋯⋯願い⋯⋯だ⋯⋯」
ウォーレンの手が冷たくなる。
マーリン師が首を横に振り、ウォーレンに治癒魔法を施していた手をそっと引っ込める。
セイフィード様も同じく治癒魔法を辞めた。
私はウォーレンの手を離せずにいる。
もしかして⋯⋯、死んでしまったのだろうか。
「アンナ、手を離すんだ」
セイフィード様は、私の手をウォーレンの手から引き剥がした。
「ウォーレンは死んだ」
マーリン師が告げる。
マーリン師は涙を流し、ウォーレンの目をそっと閉じた。
「アンナ、アンナはクララと良く似ていたんだ。最後に手を握ってくれ、感謝する」
第二王子は、私の肩に手を置き、頭を下げる。
「騙すようなことをしてしまいましたが、これで良かったんでしょうか⋯」
「これで良かったんだ。ウォーレンは最後に心の安らぎを得たはずだ。ウォーレンはクララの死をどうしても認められなかったからな。どこかで生きている、生きてて欲しいと願って、最後にそれが叶ったのだから」
「そうなんですね⋯⋯」
「それでだ、城の方も気になるから、すぐに転移する。セイフィード、転移できそうか?」
「大丈夫です」
セイフィード様は、さっきオリヴィア様から魔力を吸収したと思われる木の実を割る。
すると木の実の割れ目から光が漏れ出て、セイフィード様にその光が吸い込まれた。
おそらく魔力の補充をしたに違いない。
「親衛隊の誰かを寄こすが、それまでマーリン師とラウル先生でここの後処理を衛兵達に指示するんだ。それ以外の者は解散だ」
第二王子には、いつも通り的確に指示をしていく。
このリーダーシップには本当に、敬服させられる。
「アンナ、何もせず、真っ直ぐ、家に帰れ」
セイフィード様は私に視線を向ける。
私のことが心配でしょうがないようだ。
だから私は、大丈夫です、心配しないで下さいという笑顔を作りセイフィード様にアピールする。
するとセイフィード様は、一呼吸し、また地面に手をつけ魔法陣を出現させる。
その魔法陣に第二王子とセイフィード様が入ると、2人はすぐに消える。
同時にストラス7体も消えた。
「アンナ、どこか怪我していない? 大丈夫?」
シャーロットは私に駆け寄り、私の体をくまなく調べる。
「大丈夫だよ。シャーロットこそ、大丈夫? せっかくの婚約パーティー台無しになっちゃったね」
「ええ、そうね。」
シャーロットは、相変わらず動揺していなく、残念勝手いない。
「もしかして、シャーロットは今日こんな事になるって知っていたの?」
「ええ、今日もしかすると襲撃があるかもしれないと、事前に知らせていたわ。マーリン師もラルウ先生もご存知だと思うわ」
「そうなんだ」
また私1人蚊帳の外。
「アンナ、手を拭いてあげるわ」
私の手は、ウォーレンの血が付いている。
ウォーレン⋯⋯、ジークさんは、死んでしまったんだ。
私の手が、視界が、歪み、涙が溢れ落ちる。
「ジークさん、死んじゃった」
「えぇ、そうね」
シャーロットは、優しく私の背中を摩る。
ジークさんに以前、私は騙されたけど、今は、優しく私に語り掛けるジークさんの声が、耳底に響いている。
「アンナさん、どうですか?」
私は⋯⋯、私は⋯⋯、大丈夫です。
きっと、この難題を解き、乗り越えます。
だから、ジークさん、来世では、必ず幸せになって下さい。
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