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第6章<巨大スライム>
11、謝罪
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祝賀会会場につくと、そこにはもう大勢の人がいた。
祝賀会は立席形式で、みんなそれぞれ賑やかに話したり、寛いでいる。
会場中央奥には、立派な椅子が2つ置かれていて、恐らく公爵夫婦が座ると思われるが、まだ姿が見えない。
私達がその会場に入るとゾフィー兄様が気づき、近づいてくる。
私は、今回ばかりは、ゾフィー兄様に近づいて欲しくなかった。
だって、もし、ゾフィー兄様にキスマークを見られたりしたら⋯⋯、破廉恥な妹と思われ失望するに違いない。
「ごっ、ご機嫌よう、ゾフィー兄様」
「ご機嫌よう。私の可愛いアンナ。それにしても今日のアンナは、花のプリンセスのように優雅で麗しい。アンナからいい香りがしてきそうだね」
「ありがとうございます。ゾフィー兄様」
「⋯⋯? アンナ、どうしたんだい? 首を抑えて」
「あの、なんか、首を捻ったみたいで⋯⋯」
「セイフィード、これくらい治せるだろう?」
「えぇ、後で治します」
「そう、頼むよ」
祝賀会の開始時刻に鐘が鳴り、執事が「これよりヴェルジーナ公爵、公爵夫人が入場されます」と皆に号令を掛けた。
その際、全員にシャンパンが配られる。
公爵夫婦は、腕を組みながら仲睦まじく登場し、中央奥に立つ。
そして、ヴェルジーナ公爵は喜々とした表情をし、皆を見渡し、声を発した。
「我々は、神託の乙女に祝福され、勝利の恵みを得た。今宵は、その恵を存分に享受し、楽しもうぞ。皆、大義であった。乾杯!」
「乾杯!」
みんな、シャンパンが入っているグラスを高く掲げ、口をつける。
私も、口をつけ、飲もうとすると、セイフィード様の突き刺さる視線を感じる。
「一口、飲むだけですよ」
「怪しいな」
「そういえば、セイフィード様。神託の乙女って、私って、どうなるんでしょう? もしかして、凄い事になってしまうのでしょうか!?」
「別にどうにもならない。昔、調子に乗った神託の乙女が色々やらかしたからな。それ以降、あまり奉らなくなったんだ。アンナも調子に乗るなよ」
危うく、調子に乗りかけていた。
もしかして、凱旋パレードとかして、みんなに手を振たりするのかと、少し想像してしまった。
実際、そんなことになったら嫌だけど⋯⋯。
「私、公爵夫人に、ドレスの御礼を言いに行きます」
「俺も一緒に行く」
公爵夫人は、私達が目の前に現れると、優しく微笑む。
「ヴェルジーナ公爵夫人、こんなに素敵なドレスを頂けて嬉しいです。有難うございます」
「気に入って頂けたようで嬉しいわ。⋯⋯⋯⋯。本当に御免なさいね。ルシウスが酷いことをしてしまって」
「先程、ルシウス様からも、謝罪して頂きました。だからもう、大丈夫です」
「⋯⋯⋯⋯、そう言って頂けて嬉しいわ。けれどルシウスには、当分、謹慎させます。夫も謝罪するべきですが、立場があるので、差し控えさせて下さい。私だけで許して下さいね」
「本当に、もう大丈夫です。気にしないでください」
「アンナは、お優しいのね。それと、首を抑えていらっしゃるけど、どうかされたの?」
「あの、ええっと、その、首を捻ってしまって」
セイフィード様のせいで、皆んなに指摘される。
そのたびに、恥ずかしくて、顔が火照る。
セイフィード様は、私のそんな様子を見て、とても、嬉しそう。
「まぁ、それは大変だわ。治癒魔法ができる魔法使いにお願いしましょうか?」
「いえいえ、セイフィード様が、治してくれるそうです」
「確か、魔法長官の御子息でしたわね。ご活躍なされたとか。ご苦労様でした」
「有難うございます」
セイフィード様は無表情で礼を述べた。
そして私達は、公爵夫人のもとを離れ、食事が置かれたスペースに行くことにした。
食事は、どちらかといえば庶民的な料理が大皿に盛ってある。
物凄く食べたいが、流石にこのドレスを着ながらでは、食べられない。
こぼして汚してしまったら、取り返しが付かない。
また今回の祝賀会は堅苦しくなく、みんな陽気にお酒を飲んだり、歌を歌ったり、カジュアルにダンスを楽しんでいる。
私まで、愉快になる。
「それで、セイフィード様、治して頂けるんですよね? 私もダンスしたいのに、これじゃあ出来ないです」
「アンナ、ダンス好きだったのか?」
「好きじゃないです。でも、セイフィード様とダンスしたかったです」
まだ、私は一度もセイフィード様とダンスをしたことがない。
私はダンスが下手だから、積極的になれないけど、セイフィード様とは踊りたい。
「ふーん。しょうがないな」
いきなり、セイフィード様は、私の手を取り、早足でどこかに行く。
どんどん歩き、とうとう城の外に出てしまった。
そして、月明かりが差し込む広場にでた。
そこには、誰もいなく、優しい風が肌をかすめる。
また、青白い月明かりが、セイフィード様のクールさを引き立てる。
なんて、セイフィード様は、カッコイイんだろう。
「ここなら、誰もいない」
セイフィード様は、私の手を取り、私を引き寄せた。
そっと、私がセイフィード様の肩に手を置くと、セイフィード様は流れるように、ステップを踏み出した。
セイフィード様って、ダンスがとても上手だ。
私まで、華麗にステップが踏める。
それに、セイフィード様だからか、安心して体を預けられ、疲れない。
ダンスって、こんなに楽しかったんだ。
いつまでも、踊っていたい。
しばらくの間、踊っていたけれど、流石に疲れて私達は動きを止めた。
まだ離れたくなかった私は、ぎゅっと、セイフィード様に抱きつき、顔をセイフィード様の胸に埋める。
セイフィード様の胸の鼓動が聞こえる。
私は、セイフィード様の胸の鼓動を聞くのが大好きだ。
安心するし、心がぽかぽかしてくる。
この時が、永遠に続けばいいのに。
「セイフィード様と踊れて、私、幸せです」
「良かったな」
セイフィード様も、幸せそう。
いつもに増して、優しい笑顔をしている。
「それで、いつ治して頂けるんですか?」
「⋯⋯⋯⋯。そうだ、アンナ。帰りに、俺の母親のところに寄るか?」
セイフィード様は話をはぐらかした。
どうやら、キスマークを消してくれる気は、なさそう。
でも、とうとう、セイフィード様のお母様に会える。
「はい! 是非、セイフィード様のお母様にお会いしたいです」
「俺の母親が静養している街は、この前、アンナとオムレツを食べた街から近いんだ」
ということは、セイフィード様と2人っきりでデートが出来ちゃうかも。
妄想が膨らむ⋯⋯。
「それは、駄目だよ。アンナ、セイフィード」
突如、ゾフィー兄様から声を掛けられた。
ゾフィー兄様だけでなく、ラルフ隊長まで一緒にいる。
私は、急いでキスマークがある首筋を手で覆い隠した。
「ゾフィー兄様、ラルフ隊長、どうしたんですか?」
「ラルフ隊長が、アンナに用事があってね。だいぶ探したよ」
「ごめんなさい、ゾフィー兄様」
「セイフィードがアンナを振り回したのだろう。だから、アンナは悪くないよ」
「ゾフィー兄様、私が無理言ってここに連れてきてもらったんです。だから私が悪いんです。勝手に祝賀会を抜け出してしまってごめんなさい」
ダンスして欲しいとお願いしたのは、私だし、悪いのは私だよね。
チラリとセイフィード様を見ると、セイフィード様はそっぽを向いている。
全く悪びれる様子がない。
「まあまあ、ゾフィー。彼女達は婚約者同士だろう。2人で抜け出したくなるさ」
ラルフ隊長が助け舟を出してくれた。
いい人だ、ラルフ隊長って。
それにしても、月夜にイケメン3人、絵になる。
「しかし⋯⋯、まあ、今回抜け出したのはともかく、2人きりで隊を離れ、違う街に行くのは許さない」
「セイフィード様のお母様がいる街に行ってはいけないの? ゾフィー兄様」
「駄目だよ、アンナ」
「そんなに時間は掛かりません。恐らく隊と同じぐらいに首都に帰郷できるはずです。だからアンナと一緒に行くのを許して頂けませんか」
セイフィード様がゾフィー兄様を真剣な表情で説得する。
しかし、ゾフィー兄様は険しい表情のままだ。
「駄目だ」
「ゾフィー、そう硬いこと言わずに、許してあげたらどうだ。それこそ、また2人で抜け出し、母親に会いに行くかもしれないぞ」
またまた、ラルフ隊長が助け舟を出し、ゾフィー兄様を説得してくれる。
ラルフ隊長って、ほんと、いい人。
部下の信頼が厚いのも頷ける。
「お願い、ゾフィー兄様。私、どうしてもセイフィード様のお母様に会いたいの。お願いです」
「⋯⋯⋯⋯、はぁ。しょうがないな。わかったよ、アンナ。会いに行ってきなさい」
「ありがとうございます、ゾフィー兄様」
「セイフィード、わかっていると思うが、アンナに何かあったら許さないよ」
「わかっています」
「それで、いいかな。私はアンナに謝罪したい。ルシウスが酷いことをしてしまって、本当に申し訳ない。今後、このようなことは、ないよう努める」
ラルフ隊長が頭を下げ、私に謝罪してくれた。
こんなにも、偉い人たちから謝罪されると、恐縮してしまう。
全く、ラルフ隊長は悪くないのに。
とても、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
「あの、本当にもう大丈夫です。気にしないでください」
「ありがとう、アンナ。そう言ってもらえて良かった」
「では、会場に戻ろうか」
結局、セイフィード様は、キスマークを消してくれなかった。
だから、私は祝賀中ずっとキスマークを隠すために首筋に手を当てていた。
そにせいで、みんなからジロジロ見られ、恥ずかしくって、居た堪れない。
もうっ、絶対に、セイフィード様に仕返ししてやるんだから。
私だって、ずっとやられっぱなしじゃない。
目には目を、歯には歯を、覚悟してくださいね、セイフィード様!
祝賀会は立席形式で、みんなそれぞれ賑やかに話したり、寛いでいる。
会場中央奥には、立派な椅子が2つ置かれていて、恐らく公爵夫婦が座ると思われるが、まだ姿が見えない。
私達がその会場に入るとゾフィー兄様が気づき、近づいてくる。
私は、今回ばかりは、ゾフィー兄様に近づいて欲しくなかった。
だって、もし、ゾフィー兄様にキスマークを見られたりしたら⋯⋯、破廉恥な妹と思われ失望するに違いない。
「ごっ、ご機嫌よう、ゾフィー兄様」
「ご機嫌よう。私の可愛いアンナ。それにしても今日のアンナは、花のプリンセスのように優雅で麗しい。アンナからいい香りがしてきそうだね」
「ありがとうございます。ゾフィー兄様」
「⋯⋯? アンナ、どうしたんだい? 首を抑えて」
「あの、なんか、首を捻ったみたいで⋯⋯」
「セイフィード、これくらい治せるだろう?」
「えぇ、後で治します」
「そう、頼むよ」
祝賀会の開始時刻に鐘が鳴り、執事が「これよりヴェルジーナ公爵、公爵夫人が入場されます」と皆に号令を掛けた。
その際、全員にシャンパンが配られる。
公爵夫婦は、腕を組みながら仲睦まじく登場し、中央奥に立つ。
そして、ヴェルジーナ公爵は喜々とした表情をし、皆を見渡し、声を発した。
「我々は、神託の乙女に祝福され、勝利の恵みを得た。今宵は、その恵を存分に享受し、楽しもうぞ。皆、大義であった。乾杯!」
「乾杯!」
みんな、シャンパンが入っているグラスを高く掲げ、口をつける。
私も、口をつけ、飲もうとすると、セイフィード様の突き刺さる視線を感じる。
「一口、飲むだけですよ」
「怪しいな」
「そういえば、セイフィード様。神託の乙女って、私って、どうなるんでしょう? もしかして、凄い事になってしまうのでしょうか!?」
「別にどうにもならない。昔、調子に乗った神託の乙女が色々やらかしたからな。それ以降、あまり奉らなくなったんだ。アンナも調子に乗るなよ」
危うく、調子に乗りかけていた。
もしかして、凱旋パレードとかして、みんなに手を振たりするのかと、少し想像してしまった。
実際、そんなことになったら嫌だけど⋯⋯。
「私、公爵夫人に、ドレスの御礼を言いに行きます」
「俺も一緒に行く」
公爵夫人は、私達が目の前に現れると、優しく微笑む。
「ヴェルジーナ公爵夫人、こんなに素敵なドレスを頂けて嬉しいです。有難うございます」
「気に入って頂けたようで嬉しいわ。⋯⋯⋯⋯。本当に御免なさいね。ルシウスが酷いことをしてしまって」
「先程、ルシウス様からも、謝罪して頂きました。だからもう、大丈夫です」
「⋯⋯⋯⋯、そう言って頂けて嬉しいわ。けれどルシウスには、当分、謹慎させます。夫も謝罪するべきですが、立場があるので、差し控えさせて下さい。私だけで許して下さいね」
「本当に、もう大丈夫です。気にしないでください」
「アンナは、お優しいのね。それと、首を抑えていらっしゃるけど、どうかされたの?」
「あの、ええっと、その、首を捻ってしまって」
セイフィード様のせいで、皆んなに指摘される。
そのたびに、恥ずかしくて、顔が火照る。
セイフィード様は、私のそんな様子を見て、とても、嬉しそう。
「まぁ、それは大変だわ。治癒魔法ができる魔法使いにお願いしましょうか?」
「いえいえ、セイフィード様が、治してくれるそうです」
「確か、魔法長官の御子息でしたわね。ご活躍なされたとか。ご苦労様でした」
「有難うございます」
セイフィード様は無表情で礼を述べた。
そして私達は、公爵夫人のもとを離れ、食事が置かれたスペースに行くことにした。
食事は、どちらかといえば庶民的な料理が大皿に盛ってある。
物凄く食べたいが、流石にこのドレスを着ながらでは、食べられない。
こぼして汚してしまったら、取り返しが付かない。
また今回の祝賀会は堅苦しくなく、みんな陽気にお酒を飲んだり、歌を歌ったり、カジュアルにダンスを楽しんでいる。
私まで、愉快になる。
「それで、セイフィード様、治して頂けるんですよね? 私もダンスしたいのに、これじゃあ出来ないです」
「アンナ、ダンス好きだったのか?」
「好きじゃないです。でも、セイフィード様とダンスしたかったです」
まだ、私は一度もセイフィード様とダンスをしたことがない。
私はダンスが下手だから、積極的になれないけど、セイフィード様とは踊りたい。
「ふーん。しょうがないな」
いきなり、セイフィード様は、私の手を取り、早足でどこかに行く。
どんどん歩き、とうとう城の外に出てしまった。
そして、月明かりが差し込む広場にでた。
そこには、誰もいなく、優しい風が肌をかすめる。
また、青白い月明かりが、セイフィード様のクールさを引き立てる。
なんて、セイフィード様は、カッコイイんだろう。
「ここなら、誰もいない」
セイフィード様は、私の手を取り、私を引き寄せた。
そっと、私がセイフィード様の肩に手を置くと、セイフィード様は流れるように、ステップを踏み出した。
セイフィード様って、ダンスがとても上手だ。
私まで、華麗にステップが踏める。
それに、セイフィード様だからか、安心して体を預けられ、疲れない。
ダンスって、こんなに楽しかったんだ。
いつまでも、踊っていたい。
しばらくの間、踊っていたけれど、流石に疲れて私達は動きを止めた。
まだ離れたくなかった私は、ぎゅっと、セイフィード様に抱きつき、顔をセイフィード様の胸に埋める。
セイフィード様の胸の鼓動が聞こえる。
私は、セイフィード様の胸の鼓動を聞くのが大好きだ。
安心するし、心がぽかぽかしてくる。
この時が、永遠に続けばいいのに。
「セイフィード様と踊れて、私、幸せです」
「良かったな」
セイフィード様も、幸せそう。
いつもに増して、優しい笑顔をしている。
「それで、いつ治して頂けるんですか?」
「⋯⋯⋯⋯。そうだ、アンナ。帰りに、俺の母親のところに寄るか?」
セイフィード様は話をはぐらかした。
どうやら、キスマークを消してくれる気は、なさそう。
でも、とうとう、セイフィード様のお母様に会える。
「はい! 是非、セイフィード様のお母様にお会いしたいです」
「俺の母親が静養している街は、この前、アンナとオムレツを食べた街から近いんだ」
ということは、セイフィード様と2人っきりでデートが出来ちゃうかも。
妄想が膨らむ⋯⋯。
「それは、駄目だよ。アンナ、セイフィード」
突如、ゾフィー兄様から声を掛けられた。
ゾフィー兄様だけでなく、ラルフ隊長まで一緒にいる。
私は、急いでキスマークがある首筋を手で覆い隠した。
「ゾフィー兄様、ラルフ隊長、どうしたんですか?」
「ラルフ隊長が、アンナに用事があってね。だいぶ探したよ」
「ごめんなさい、ゾフィー兄様」
「セイフィードがアンナを振り回したのだろう。だから、アンナは悪くないよ」
「ゾフィー兄様、私が無理言ってここに連れてきてもらったんです。だから私が悪いんです。勝手に祝賀会を抜け出してしまってごめんなさい」
ダンスして欲しいとお願いしたのは、私だし、悪いのは私だよね。
チラリとセイフィード様を見ると、セイフィード様はそっぽを向いている。
全く悪びれる様子がない。
「まあまあ、ゾフィー。彼女達は婚約者同士だろう。2人で抜け出したくなるさ」
ラルフ隊長が助け舟を出してくれた。
いい人だ、ラルフ隊長って。
それにしても、月夜にイケメン3人、絵になる。
「しかし⋯⋯、まあ、今回抜け出したのはともかく、2人きりで隊を離れ、違う街に行くのは許さない」
「セイフィード様のお母様がいる街に行ってはいけないの? ゾフィー兄様」
「駄目だよ、アンナ」
「そんなに時間は掛かりません。恐らく隊と同じぐらいに首都に帰郷できるはずです。だからアンナと一緒に行くのを許して頂けませんか」
セイフィード様がゾフィー兄様を真剣な表情で説得する。
しかし、ゾフィー兄様は険しい表情のままだ。
「駄目だ」
「ゾフィー、そう硬いこと言わずに、許してあげたらどうだ。それこそ、また2人で抜け出し、母親に会いに行くかもしれないぞ」
またまた、ラルフ隊長が助け舟を出し、ゾフィー兄様を説得してくれる。
ラルフ隊長って、ほんと、いい人。
部下の信頼が厚いのも頷ける。
「お願い、ゾフィー兄様。私、どうしてもセイフィード様のお母様に会いたいの。お願いです」
「⋯⋯⋯⋯、はぁ。しょうがないな。わかったよ、アンナ。会いに行ってきなさい」
「ありがとうございます、ゾフィー兄様」
「セイフィード、わかっていると思うが、アンナに何かあったら許さないよ」
「わかっています」
「それで、いいかな。私はアンナに謝罪したい。ルシウスが酷いことをしてしまって、本当に申し訳ない。今後、このようなことは、ないよう努める」
ラルフ隊長が頭を下げ、私に謝罪してくれた。
こんなにも、偉い人たちから謝罪されると、恐縮してしまう。
全く、ラルフ隊長は悪くないのに。
とても、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
「あの、本当にもう大丈夫です。気にしないでください」
「ありがとう、アンナ。そう言ってもらえて良かった」
「では、会場に戻ろうか」
結局、セイフィード様は、キスマークを消してくれなかった。
だから、私は祝賀中ずっとキスマークを隠すために首筋に手を当てていた。
そにせいで、みんなからジロジロ見られ、恥ずかしくって、居た堪れない。
もうっ、絶対に、セイフィード様に仕返ししてやるんだから。
私だって、ずっとやられっぱなしじゃない。
目には目を、歯には歯を、覚悟してくださいね、セイフィード様!
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