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第4章<アンナ特製魔方陣ノート>

13、心配

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 セイフィード様との縁談話があったその日は、有頂天になってしまったけど、次の日になって、よくよく冷静になって考えてみると、私でいいのか不安になった。

 セイフィード様の家、ネヴィリス伯爵家は代々、魔力がとても強い家系のはず。
そんな系譜の中に、全く魔力がない私が入ってしまっていいのだろうか。
セイフィード様のお父様、私を認めてくれたのだろうか⋯⋯。
セイフィード様が独断でこの縁談を進めてたりしないだろうか⋯⋯。
とても不安になってきた。

 悩んでもしょうがないので、私は早速ケーキを作って、セイフィード様の屋敷に行くことにした。
ただ、今日は時間もないので、プリンを作ろうと思う。
私の大好物のプリン。
プリンが出来上がると、その匂いにつられて、シャーロットが台所にきた。

「アンナ、甘くていい匂いだわ。今日は何を作ったのかしら」

「プリンだよ。簡単な材料で、簡単にできるよ」

「これから、セイフィード様のところに行くのかしら」

シャーロットはなんだか、嬉しそう。

「うん。そうだよ⋯⋯、シャーロットもう知ってる? その⋯⋯、私とセイフィード様のこと⋯⋯」

「えぇ、アンナ、おめでとう」

「ありがとう、シャーロット。私、とても嬉しい」

「えぇ、わたくしも嬉しいですわ」

「それでね、シャーロット⋯⋯、前にオリヴィア様のことで何か言いかけたでしょ⋯⋯、あれはどんな話をしようとしてたの?」

「わたくし、あまり人の悪口は言いたくなかったのだけれど⋯⋯、オリヴィア様、実は良くない評判がありましたの。オリヴィア様が学生時代の時、オリヴィア様のライバルだった女性が酷い目にあってしまわれて⋯⋯。証拠はないけれど、その件にオリヴィア様が関わっていたんじゃないかと、噂になってらしたの」

「そっ、そうなんだ」

「えぇ、これからもオリヴィア様には気をつけた方がよろしいわ」

「う、うん。すっごく気をつける」

 オリヴィア様⋯⋯、私とセイフィード様が婚約したと知ったら⋯⋯、怒るよね。
でも、オリヴィア様に、一言文句を言ってやりたい。

「そうそう、アンナ、第2王子様にお礼をしに行くのは、5日後になったわ」

「⋯⋯うん。わかった」

「セイフィード様も、ご一緒に登城するわ」

「ほんと、やったぁー!」

「うふふ。アンナを見ていると、わたくしまで幸せになるわ」

「今度は、シャーロットの番だね。私、第二王子様とのこと応援するね!」

「な、な、なんのことかしら」

シャーロットの顔が真っ赤っかだ。
なんか、シャーロットって可愛い。

「5日後、楽しみだね。じゃあ、セイフィード様のお屋敷に行ってきまーす」

 私がセイフィード様のお屋敷に行くと、久しぶりに図書室に案内された。

「ご機嫌よう、セイフィード様」

 私はセイフィード様を見た途端、心臓がバクバクと高鳴り、頬が熱くなる。
なんか、恥ずかしいというか、照れるというか⋯⋯、セイフィード様の顔をまともに見られない。

「あぁ」

 逆にセイフィード様はまっすぐ私を見つめる

「あの、昨日⋯⋯、縁談の話、聞きました⋯⋯」

 セイフィード様は読んでいた本を閉じ、私に近づく。

「もう、これで、正真正銘、アンナは俺のものだ」

 セイフィード様は私の髪の一房ひとふさをすくいとり、いじりだした。

「はい」

「この髪も、これも、そしてこれも⋯⋯、俺のものだ」

 セイフィード様は私の髪の一房に口づけし、私の頬を撫で、私の唇を指でなぞる。

 セ、セイフィード様⋯⋯⋯⋯、エロすぎませんか⋯⋯⋯⋯!?
世の男子はみんな、こうなの???
経験がなさすぎて、わからないけど⋯⋯⋯⋯、セイフィード様、この頃、特にスキンシップ多くありませんか⋯⋯⋯。

「⋯⋯⋯⋯あの、でも1つ心配事が⋯⋯」

「なんだ?」

「私、全く魔力ないんですけど、大丈夫なんでしょうか?」

「そんなこと、百も承知だ」

「ええっと、セイフィード様のご両親も、私が婚約者になることを認めてくれているんでしょうか」

「あぁ、もちろん大丈夫だ」

「よっ、よかった⋯⋯、私、とっても嬉しいです」

「じゃあ、食べるか」

「えぇ??? なっ、なにを?」

 セイフィード様、いきなり何を言い出すの!
わっ、わたしを食べるの?
今、真昼間だし、それに、それに、私、心の準備が⋯⋯⋯⋯。

「もちろん、アンナが持ってきたケーキだよ」

 あぁ、ケーキか。
ケーキじゃなく、プリンだけど。
私じゃなくて、プリンね。
あー、ビックリした。

「今日はケーキじゃなくて、プリンにしました。私の大好物です」

「柔らかそうだ」

 セイフィード様はそう呟くと私の腰に手を回す。
えぇ!?
私の唇が?
私の唇が柔らかそうなの!?
もしかして、セイフィード様にキスされちゃう!?
私は思わず目をギュッとつぶった

 ⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯。
しかし、一向にキスされない。
どうしたんだろうと、片目をうっすら開けると、図書室から庭園のガゼボにワープしていた。

 あぁ、そっか⋯⋯。
ワープするために、セイフィード様は私の腰に手を回したのか⋯⋯。
なんだ⋯⋯。
そっか⋯⋯。
⋯⋯って、ヤバイ、私の脳がおかしくなってる。
いつから、私の脳はこんなにもエロくなっちゃったんだー!
セイフィード様が言う言葉が全部エロく聞こえる。

 私はドキマギしながらお茶を入れ、セイフィード様と2人でプリンを食べた。

「ご馳走さま」

と言うセイフィード様は妙に色っぽい⋯⋯。

「どういたしまして⋯⋯。あの、セイフィード様、私、セイフィード様のお母様にもお会いして、ちゃんと挨拶したいです」

「そうだな⋯⋯、今度一緒に会いに行こう」

セイフィード様は目を伏せがちにし答えた。

「そうだ、アンナにこれをやるよ」

セイフィード様は、包装紙に包まれた四角い形の物を、私に手渡す。

「なんでしょうか⋯⋯?」

「開ければ、わかる」

 私はドキドキしながら、包装紙を開け、中に包まれていた物を取り出す。
それは、一冊の本だった。
厚手の革表紙には藤の紋様が型押しされていて、とても高級感がある本だった。
私がその本を開けると、中は何も書かれていなく、全て白紙だった。

「これは、ノートですか?」

「そうだ。アンナの魔法陣用ノートだ。俺とアンナしか開くことができないノートだ」

 嬉しすぎて、言葉が出ない。
胸がふるえ、嬉しさに、目が潤む。

「どうした、アンナ? 嬉しくないのか?」

「わ、わたし⋯⋯、また魔法陣を勉強してもいいんですか?」

「あぁ⋯⋯、アンナのノートを燃やしてしまったのは、さすがにやり過ぎた。すまなかった」

「⋯⋯グスっ、でも、セイフィード様が燃やしていなかったら、⋯⋯グスっ⋯⋯ジークさんに盗まれて大変なことになってました」

 嬉しすぎて、胸がいっぱいになりすぎて、私の目から涙が溢れる。

「魔法陣書けたら、俺に見せろ。約束通り、実現してやる」

 セイフィード様がそう言うと、涙を拭うように私の目元にキスをした。
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