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第3章<魔法陣コンテスト>
5、依存
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セイフィード様から新しい腕輪を貰った日の夜、私は、なかなか寝付けなかった。
まだ先だけど、セイフィード様と神殿に行くのが楽しみで仕方がない。
イチャつく妄想をしたりして顔がニヤける。
また腕輪のダイヤモンドの輝きが煌めけば、胸が熱くなる。
「この腕輪、小さくしたら結婚指輪みたい⋯⋯」
私は小さい声で独り言を呟く。
しかし、一方で私は、不安に押しつぶされる。
私はセイフィード様に依存している。
ずっと依存してたい、ずっとセイフィード様の側にいたい。
でも、いつかはその依存を、この想いを断ち切らなければいけないと、同時に思う。
考えなきゃいけないのに、考えたくない。
私に魔力があったら⋯⋯。
魔力さえあれば、私だって伯爵家の令嬢だ。
可能性はゼロじゃなかったはずなのに。
私は、そんなぐちゃぐちゃな感情が絶えず押し寄せ、苦しい夜を過ごした。
そんな夜が明け、今日は、久しぶりに学校に行く日。
腕輪が壊れてから数日間、私はズル休みをしていたが、新しい腕輪を貰ったので、流石に学校へ行かなければならない。
新しい腕輪は嬉しいが、学校に行くのが憂鬱でならない。
朝一から、ルシウスと一緒の授業だ。
ただ、シャーロットも一緒なので心強い。
「さあ、早く行きますわよ。アンナ」
「う、うん」
朝一の授業は、シャーロットが大好きなエルフ語講座だ。
シャーロットのエルフ語は完璧で流暢に話すことができる。
またエルフ語講座の先生は、森のエルフ族でとても美しい女性だ。
私は、逃げてばかりじゃダメだと思い、心を強くして授業に出ることにした。
しかし、エルフ語講座の教室に入ると、いきなりルシウスと目が合う。
もう一挙にブルーだ。
相変わらず、ルシウスは、私を蔑む目で見るし。
あぁ、一刻も早く逃げ出したい。
「アンナ、顔が青いわ。大丈夫ですの?」
青ざめている私をシャーロットが心配そうに見つめ、声を掛けてくれた。
シャーロットはいつも気が利き、優しい。
私は、そんなシャーロットにこれ以上、心配かけたくない。
だから私は、ルシウスにも聞こえるように大きな声で、応えた。
「ううん、大丈夫。なんでもないよ」
エルフ語講座の授業は、私も大好きだったのに、ルシウスのせいで嫌いになりそう。
授業中に私は、ルシウスと一緒の授業が、他にあといくつあるか、数えた。
ルシウスのことなんて気にしたくないのに。
授業が終わり、シャーロットは先生に質問があるらしく少し残ると言う。
私の次の授業は魔法陣学で、前列に席を確保するためには早めに行く必要がある。
もちろん私は前列に座りたいので、シャーロットとは別れて移動することになった。
タイミング悪く、私が一人で廊下を歩いている時、ルシウスとすれ違う。
そのすれ違いざま、ルシウスが歪んだ笑みを浮かべて、「デカパイ」と私に呟いた。
私はダメだった。
怖くて、ルシウスから逃げ出した。
私は、大好きな魔法陣学の授業も出ないで、急いで広場の木の陰に隠れた。
誰にも、泣いているところを見られないように⋯⋯。
悔しい。
私は何も悪いことしてないのに。
なんで私だけ⋯⋯。
私は蹲りながら、必至に涙を止めようとした。
その時、私の後方に誰かが座った。
「⋯⋯アンナ、今お前が身につけている腕輪には特殊な魔法を施している。だから大丈夫だ、もう危険な目には合わない」
セイフィード様が私の背に、もたれ、呟く。
私の背中に、セイフィード様の温もりが伝わる。
暖かくて、心地いい。
けれど、涙は止まるどころか、さらに目から溢れて、とめどなく流れ落ちる。
セイフィード様は、そんな私の頭を軽くポンポンと叩くと、無言で本を読み始めた。
私が泣き止むまで、静かに⋯⋯。
私は、しばらく泣いたら、スッキリした。
もう大丈夫だとアピールするために、私は元気よく声を発した。
「セイフィード様、私にこんなに優しくしたら、後が怖いですよ!」
「どう、怖いんだ?」
「しがみついて、離れてあげませんよ。私は重いですからね」
「あぁ、確かに。以前、アンナをおんぶした時は重かった」
「今は、もっと、数倍重いんですからね! 覚悟してください」
「確かに、重そうだ」
「⋯⋯セイフィード様、もう、大丈夫です。ありがとうございました。私、授業に戻ります」
「あぁ」
セイフィード様はそう言うと、視線を本に戻した。
どうやら、まだ本を読むようだ。
午前の最後の授業には、なんとか出席し、あとは午後の授業だけ。
午後の授業は、マナー講座で、優雅にお茶を飲むという、簡単なようで難しい授業だ。
そのお茶は、庭園で頂く。
庭園の隣には、人工の森があり、その森で、高学年の男性は魔物を使った実戦練習を行ったりする。
魔物は、以前確保しておいたものだ。
また、森には魔物が出ないように魔法壁が施してある。
その森に、ルシウスと他の生徒が剣を携えて入って行くのが見えた。
どうやらルシウスは剣による実戦練習をするらしい。
ルシウスなんか、コテンパにやられてしまえばいいのに。
マナー講座も終盤に差し掛かった時、突如森の中が騒がしくなり、奇声が轟く。
「何か、あったのかな?」
私はシャーロットに訊いた。
「何事かしら、心配ですわね」
言葉に反して、シャーロットは全く動揺せず、優雅にお茶を飲みながら応えた。
マナー講座に出ていた他の生徒もざわめき始めたので、先生は念のため、みんなを連れて建物の中に避難することにした。
避難する途中、何人もの先生が、森の中に入っていく。
すると、森の中から突如、光が生じると同時に爆発音が聞こえた。
その爆発音が聞こえた後は、森は静かになり、森の中にいた先生、生徒達が出てきた。
建物の中にいる生徒全員が、その様子をじっと見つめている。
私も、ルシウスがどうなったのか気になっていたので、窓越しに森を見つめる。
マナー講座の先生が、そろそろ見るのはおやめなさいと生徒に注意した時、森から担架で運ばれてくる人物がいた。
ルシウスだ。
ルシウスは担架で運ばれていた。
怪我をしたのかな、ルシウス⋯⋯。
はっ、なんで私がルシウスを心配しなきゃいけないんだっ。
私が同情なんかしちゃいけない。
あんな奴、死んじゃえばいいんだ。
その森での事件の詳細は、数日後、噂になって私の耳にも入った。
事件の詳細はこうだ。
実戦練習では、魔物のグーモ1匹を剣で退治する予定だった。
グーモは群れていれば中級の魔物だが、1匹だけなら生徒達だけでも退治できる。
しかし、グーモは盲目的にルシウスだけを捕らえ森の中に隠れてしまった。
グーモは捕まえた獲物を、すぐに自身から吐き出す糸でぐるぐる巻きにし、窒息させる。
先生も、ルシウスは公爵家の息子なので慌てたらしく、他の先生に救援を依頼した。
駆けつけた先生により、ルシウスは見つけ出され、グーモも退治された。
ルシウスは案の定、糸でぐるぐる巻きにされ、窒息する一歩手前だったらしい。
幸いなことに、怪我はなかった。
ただ、ルシウスのイメージはガタ落ちだ。
生徒みんなに、糸でぐるぐる巻きにされたことが知れ渡ったのだから。
プライドが高い貴族からは、馬鹿にされるだろう。
しかしその事件があってから、ルシウスは、なぜか私を避けるようになった。
私としては、とても嬉しいし、ようやく安心して学校生活が送れる。
もしかして、セイフィード様がルシウスに何かしたのだろうか。
セイフィード様は天才だから、あの時、私が誰にやられたか、すぐに調べがついたのかもしれない。
自惚れだろうか⋯⋯。
いやきっと、セイフィード様が、私のために仕返しをしてくれたんだ。
私、セイフィード様の事が大好き過ぎて、胸が苦しいよ⋯⋯。
まだ先だけど、セイフィード様と神殿に行くのが楽しみで仕方がない。
イチャつく妄想をしたりして顔がニヤける。
また腕輪のダイヤモンドの輝きが煌めけば、胸が熱くなる。
「この腕輪、小さくしたら結婚指輪みたい⋯⋯」
私は小さい声で独り言を呟く。
しかし、一方で私は、不安に押しつぶされる。
私はセイフィード様に依存している。
ずっと依存してたい、ずっとセイフィード様の側にいたい。
でも、いつかはその依存を、この想いを断ち切らなければいけないと、同時に思う。
考えなきゃいけないのに、考えたくない。
私に魔力があったら⋯⋯。
魔力さえあれば、私だって伯爵家の令嬢だ。
可能性はゼロじゃなかったはずなのに。
私は、そんなぐちゃぐちゃな感情が絶えず押し寄せ、苦しい夜を過ごした。
そんな夜が明け、今日は、久しぶりに学校に行く日。
腕輪が壊れてから数日間、私はズル休みをしていたが、新しい腕輪を貰ったので、流石に学校へ行かなければならない。
新しい腕輪は嬉しいが、学校に行くのが憂鬱でならない。
朝一から、ルシウスと一緒の授業だ。
ただ、シャーロットも一緒なので心強い。
「さあ、早く行きますわよ。アンナ」
「う、うん」
朝一の授業は、シャーロットが大好きなエルフ語講座だ。
シャーロットのエルフ語は完璧で流暢に話すことができる。
またエルフ語講座の先生は、森のエルフ族でとても美しい女性だ。
私は、逃げてばかりじゃダメだと思い、心を強くして授業に出ることにした。
しかし、エルフ語講座の教室に入ると、いきなりルシウスと目が合う。
もう一挙にブルーだ。
相変わらず、ルシウスは、私を蔑む目で見るし。
あぁ、一刻も早く逃げ出したい。
「アンナ、顔が青いわ。大丈夫ですの?」
青ざめている私をシャーロットが心配そうに見つめ、声を掛けてくれた。
シャーロットはいつも気が利き、優しい。
私は、そんなシャーロットにこれ以上、心配かけたくない。
だから私は、ルシウスにも聞こえるように大きな声で、応えた。
「ううん、大丈夫。なんでもないよ」
エルフ語講座の授業は、私も大好きだったのに、ルシウスのせいで嫌いになりそう。
授業中に私は、ルシウスと一緒の授業が、他にあといくつあるか、数えた。
ルシウスのことなんて気にしたくないのに。
授業が終わり、シャーロットは先生に質問があるらしく少し残ると言う。
私の次の授業は魔法陣学で、前列に席を確保するためには早めに行く必要がある。
もちろん私は前列に座りたいので、シャーロットとは別れて移動することになった。
タイミング悪く、私が一人で廊下を歩いている時、ルシウスとすれ違う。
そのすれ違いざま、ルシウスが歪んだ笑みを浮かべて、「デカパイ」と私に呟いた。
私はダメだった。
怖くて、ルシウスから逃げ出した。
私は、大好きな魔法陣学の授業も出ないで、急いで広場の木の陰に隠れた。
誰にも、泣いているところを見られないように⋯⋯。
悔しい。
私は何も悪いことしてないのに。
なんで私だけ⋯⋯。
私は蹲りながら、必至に涙を止めようとした。
その時、私の後方に誰かが座った。
「⋯⋯アンナ、今お前が身につけている腕輪には特殊な魔法を施している。だから大丈夫だ、もう危険な目には合わない」
セイフィード様が私の背に、もたれ、呟く。
私の背中に、セイフィード様の温もりが伝わる。
暖かくて、心地いい。
けれど、涙は止まるどころか、さらに目から溢れて、とめどなく流れ落ちる。
セイフィード様は、そんな私の頭を軽くポンポンと叩くと、無言で本を読み始めた。
私が泣き止むまで、静かに⋯⋯。
私は、しばらく泣いたら、スッキリした。
もう大丈夫だとアピールするために、私は元気よく声を発した。
「セイフィード様、私にこんなに優しくしたら、後が怖いですよ!」
「どう、怖いんだ?」
「しがみついて、離れてあげませんよ。私は重いですからね」
「あぁ、確かに。以前、アンナをおんぶした時は重かった」
「今は、もっと、数倍重いんですからね! 覚悟してください」
「確かに、重そうだ」
「⋯⋯セイフィード様、もう、大丈夫です。ありがとうございました。私、授業に戻ります」
「あぁ」
セイフィード様はそう言うと、視線を本に戻した。
どうやら、まだ本を読むようだ。
午前の最後の授業には、なんとか出席し、あとは午後の授業だけ。
午後の授業は、マナー講座で、優雅にお茶を飲むという、簡単なようで難しい授業だ。
そのお茶は、庭園で頂く。
庭園の隣には、人工の森があり、その森で、高学年の男性は魔物を使った実戦練習を行ったりする。
魔物は、以前確保しておいたものだ。
また、森には魔物が出ないように魔法壁が施してある。
その森に、ルシウスと他の生徒が剣を携えて入って行くのが見えた。
どうやらルシウスは剣による実戦練習をするらしい。
ルシウスなんか、コテンパにやられてしまえばいいのに。
マナー講座も終盤に差し掛かった時、突如森の中が騒がしくなり、奇声が轟く。
「何か、あったのかな?」
私はシャーロットに訊いた。
「何事かしら、心配ですわね」
言葉に反して、シャーロットは全く動揺せず、優雅にお茶を飲みながら応えた。
マナー講座に出ていた他の生徒もざわめき始めたので、先生は念のため、みんなを連れて建物の中に避難することにした。
避難する途中、何人もの先生が、森の中に入っていく。
すると、森の中から突如、光が生じると同時に爆発音が聞こえた。
その爆発音が聞こえた後は、森は静かになり、森の中にいた先生、生徒達が出てきた。
建物の中にいる生徒全員が、その様子をじっと見つめている。
私も、ルシウスがどうなったのか気になっていたので、窓越しに森を見つめる。
マナー講座の先生が、そろそろ見るのはおやめなさいと生徒に注意した時、森から担架で運ばれてくる人物がいた。
ルシウスだ。
ルシウスは担架で運ばれていた。
怪我をしたのかな、ルシウス⋯⋯。
はっ、なんで私がルシウスを心配しなきゃいけないんだっ。
私が同情なんかしちゃいけない。
あんな奴、死んじゃえばいいんだ。
その森での事件の詳細は、数日後、噂になって私の耳にも入った。
事件の詳細はこうだ。
実戦練習では、魔物のグーモ1匹を剣で退治する予定だった。
グーモは群れていれば中級の魔物だが、1匹だけなら生徒達だけでも退治できる。
しかし、グーモは盲目的にルシウスだけを捕らえ森の中に隠れてしまった。
グーモは捕まえた獲物を、すぐに自身から吐き出す糸でぐるぐる巻きにし、窒息させる。
先生も、ルシウスは公爵家の息子なので慌てたらしく、他の先生に救援を依頼した。
駆けつけた先生により、ルシウスは見つけ出され、グーモも退治された。
ルシウスは案の定、糸でぐるぐる巻きにされ、窒息する一歩手前だったらしい。
幸いなことに、怪我はなかった。
ただ、ルシウスのイメージはガタ落ちだ。
生徒みんなに、糸でぐるぐる巻きにされたことが知れ渡ったのだから。
プライドが高い貴族からは、馬鹿にされるだろう。
しかしその事件があってから、ルシウスは、なぜか私を避けるようになった。
私としては、とても嬉しいし、ようやく安心して学校生活が送れる。
もしかして、セイフィード様がルシウスに何かしたのだろうか。
セイフィード様は天才だから、あの時、私が誰にやられたか、すぐに調べがついたのかもしれない。
自惚れだろうか⋯⋯。
いやきっと、セイフィード様が、私のために仕返しをしてくれたんだ。
私、セイフィード様の事が大好き過ぎて、胸が苦しいよ⋯⋯。
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