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17:大使館と王の来訪
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今回、北の国の国王が訪問する事が決定してる場所はいくつかある。
まずは皇居。一国の王と対等な地位にある人物は日本だと天皇ぐらいなのでいわゆる王室外交のためである。
次に上野の科学館や博物館でこの世界の科学や叡智に触れて貰い、そこからこの世界と向こうの世界の違いを感じてもらう。
それと原油の輸出に関わる企業の本社や日本支社を訪問して原油がこの世界でいかに珍重されているかを知って貰い、その上で東京近郊の製油所を見学して原油精製の仕組みを学んでもらう。
ついでに動物好きだという北の国王殿下を上野動物園や競馬場に連れて行ったり、ベタな東京の観光地に連れて行ったりを息抜きがてら隙間に挟む。
夜になれば異世界に興味を示している外務大臣級以上の他国政府関係者や大企業首脳陣を集めて、連日連夜のパーティーが詰め込まれる。
極めつけに最終日には上野で一般向けお披露目パレードで訪日のトリを飾ることまで決まっている。
「これを7日間に詰め込むの多い気がするんだが」
北の国側に送る日程表(もちろん大陸標準語で書かれている)に目を通した俺に、飯島は「そうか?」と不思議そうに答える。
「外遊ってこれぐらい日程詰めるのはよくある事だと思うけど……まあ向こうがここまで日程詰められるのに不慣れって可能性はあるか。ま、こればかりは先方に折れて貰うしかないかな。元々向こうは行きたい場所の要望ぐらいしか出してきてないし、8時間睡眠は確保出来てるし。
文句言われても滞在日数と地球側の要望の兼ね合いでこれ以上減らせないんだよな」
日本側はともかく他国の予定はズラしにくいし、この他国政府首脳陣の訪日自体が日本側にとってはついでに会談や対話の場をねじ込める良い機会でもあるのでずらしたくないという都合もある。
そもそも訪日中の予定を北の国が作れば良いのだが、あちらには日本以外の地球諸国との直接的連絡手段がないので予定の調整が出来ないのである。
「先方に文句言われても知らないぞ」
「そこはお前の仕事ってことで」
反射的に湧き上がるイラつきを咄嗟に理性で押さえ込んだ俺は偉いと思う。
(俺に理性が無かったら引っ叩いてたぞ?)
もう何を言ってもしょうがないのでため息と共に書類を受け取っておくことにした。
「とりあえずこれで渡しておくが苦情はお前宛って書いとくからな。あと訪問場所の地図って持ってないか?」
「自分のぶんはあるけど余分は無いかな、地図って何用?」
「向こうの警備人員用に地図が欲しいと言われた」
「あー、そういう事ね。だとすると俺の手持ちの地図コピーしただけだと情報不足かな、避難通路とか書いてないし」
見せられた地図は一般の訪問客用パンフレットなのであくまで館内の概略図である。
避難通路の出入り口ぐらいは書いてあるがどこを通ってどこに出るかまでは書いてないので、避難誘導を行う警備担当者には不十分かもしれない。
「警察に頼めば貰えるんじゃないか?」
ずっと黙っていた木栖が突然口を挟んだ。
言われてみればその通りだと思っていると、飯島が「警視庁の担当者に連絡して用意してもらうわ」と早速電話をかけ始めた。
「30分後にFAXでこっちに送ってくれるってさ」
「わかった。少し外で休憩してるから、届いたら連絡くれ」
「了解」
まずは皇居。一国の王と対等な地位にある人物は日本だと天皇ぐらいなのでいわゆる王室外交のためである。
次に上野の科学館や博物館でこの世界の科学や叡智に触れて貰い、そこからこの世界と向こうの世界の違いを感じてもらう。
それと原油の輸出に関わる企業の本社や日本支社を訪問して原油がこの世界でいかに珍重されているかを知って貰い、その上で東京近郊の製油所を見学して原油精製の仕組みを学んでもらう。
ついでに動物好きだという北の国王殿下を上野動物園や競馬場に連れて行ったり、ベタな東京の観光地に連れて行ったりを息抜きがてら隙間に挟む。
夜になれば異世界に興味を示している外務大臣級以上の他国政府関係者や大企業首脳陣を集めて、連日連夜のパーティーが詰め込まれる。
極めつけに最終日には上野で一般向けお披露目パレードで訪日のトリを飾ることまで決まっている。
「これを7日間に詰め込むの多い気がするんだが」
北の国側に送る日程表(もちろん大陸標準語で書かれている)に目を通した俺に、飯島は「そうか?」と不思議そうに答える。
「外遊ってこれぐらい日程詰めるのはよくある事だと思うけど……まあ向こうがここまで日程詰められるのに不慣れって可能性はあるか。ま、こればかりは先方に折れて貰うしかないかな。元々向こうは行きたい場所の要望ぐらいしか出してきてないし、8時間睡眠は確保出来てるし。
文句言われても滞在日数と地球側の要望の兼ね合いでこれ以上減らせないんだよな」
日本側はともかく他国の予定はズラしにくいし、この他国政府首脳陣の訪日自体が日本側にとってはついでに会談や対話の場をねじ込める良い機会でもあるのでずらしたくないという都合もある。
そもそも訪日中の予定を北の国が作れば良いのだが、あちらには日本以外の地球諸国との直接的連絡手段がないので予定の調整が出来ないのである。
「先方に文句言われても知らないぞ」
「そこはお前の仕事ってことで」
反射的に湧き上がるイラつきを咄嗟に理性で押さえ込んだ俺は偉いと思う。
(俺に理性が無かったら引っ叩いてたぞ?)
もう何を言ってもしょうがないのでため息と共に書類を受け取っておくことにした。
「とりあえずこれで渡しておくが苦情はお前宛って書いとくからな。あと訪問場所の地図って持ってないか?」
「自分のぶんはあるけど余分は無いかな、地図って何用?」
「向こうの警備人員用に地図が欲しいと言われた」
「あー、そういう事ね。だとすると俺の手持ちの地図コピーしただけだと情報不足かな、避難通路とか書いてないし」
見せられた地図は一般の訪問客用パンフレットなのであくまで館内の概略図である。
避難通路の出入り口ぐらいは書いてあるがどこを通ってどこに出るかまでは書いてないので、避難誘導を行う警備担当者には不十分かもしれない。
「警察に頼めば貰えるんじゃないか?」
ずっと黙っていた木栖が突然口を挟んだ。
言われてみればその通りだと思っていると、飯島が「警視庁の担当者に連絡して用意してもらうわ」と早速電話をかけ始めた。
「30分後にFAXでこっちに送ってくれるってさ」
「わかった。少し外で休憩してるから、届いたら連絡くれ」
「了解」
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