異世界大使館はじめます

あかべこ

文字の大きさ
上 下
215 / 242
16:大使館とエルダールの島

16-22

しおりを挟む
エルダールの民による薬の定期購入が決まると、各方面への送る報告書のまとめに入る。
ある程度の段取りは既にできた状態なので日本側に現状把握の上さっそく動き出してもらえば、俺の仕事はほぼ終わったと言ってもいい。
「国境なき医師団の人たちは冬までこの島に駐在するんだったよな?」
「そうですね、僕らと研究所の人たちは今月末には戻りますが」
いちおう今月末で一度戻る予定も船の提供者であるカウサル女公爵には伝えてあるが、エルダール側にも俺たちの帰国の時期を伝えておく必要がある。
医療廃棄物の回収や次回以降の物資輸送についての取り決めをしてから島を出た後、ヤマンラール商会による定期的な薬と医療物資輸送の話も詰めてから大使館に戻る。あと深大寺も連れて帰らないとな。
「……まだ少し仕事残ってたな?」
「残ってますね」
「とりあえず直近でやるのは医療ごみの分別回収とエルダール側との物資輸送についての最終決定じゃないのか?」
「だな。柊木先生は医療ごみの分別回収お願いしますね」
「わかりました。医療廃棄物の最終処分がこっちで出来ないのは不便ですけど、しょうがないですよね」
今回の治療で出たごみのうち、注射針やゴム手袋のような現地での焼却処分が難しいものは日本に持って行って処分することが最初から決まっていた。
血の付いた注射針や検査薬の廃液の処分は一歩間違えると感染症の蔓延や現地環境汚染に繋がるのでここでは無理だ。
それらの管理は国境なき医師団の専門家に丸投げしていたが、彼らは冬まで現地に駐在しての医療支援が決まっているので地球への持ち帰りは柊木医師や専門家集団にお任せする。
「あとは物資輸送についての取り決めをどうするかだよな、これは俺達だけじゃなくてヤマンラール商会も絡んでくるから確認しながらやらないといけないし……」
「伝書鳩は連れて来てるよな?」
「連れて来た鳩は大使館には戻れるが双海公国には飛ばないぞ、うちで面倒見てる鳩だから自分の巣認定してる場所にしか飛んで行かん」
「それもそうか」
そんな時にふと思い出したのがあの美しい緑のうろこを持ったドラゴンとその主たる少女のことだった。
ちょっとばかし彼女とあの美しいドラゴンにひとっ飛びしてもらい、双海公国側に確認を取ればスムーズに進むだろう。それにいちいちあの大きな船で往復するより効率もよさそうだ。
「確か船乗りたちと一緒に緑色のドラゴンがいたよな?」
「あのドラゴンを伝書鳩にするのか、豪華な使い方だな」
「使えるものは何でも使うさ、木栖の方で交渉してきてくれるか?」
「わかった」

(さ、あと少しだ)

報告書にドラゴンの事も書き足してから、最後に間違いがないか読み返す。
誤字脱字はあったが内容などにとりあえず問題はなさそうだ。
連れて来た鳩たちに報告書をしっかりと括りつけると、鳩たちは己の巣たる金羊国を目指し夏の大空へと飛びだした。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界営生物語

田島久護
ファンタジー
相良仁は高卒でおもちゃ会社に就職し営業部一筋一五年。 ある日出勤すべく向かっていた途中で事故に遭う。 目覚めた先の森から始まる異世界生活。 戸惑いながらも仁は異世界で生き延びる為に営生していきます。 出会う人々と絆を紡いでいく幸せへの物語。

異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。

Mです。
ファンタジー
異世界学園バトル。 現世で惨めなサラリーマンをしていた…… そんな会社からの帰り道、「転生屋」という見慣れない怪しげな店を見つける。 その転生屋で新たな世界で生きる為の能力を受け取る。 それを自由イメージして良いと言われた為、せめて、新しい世界では苦しまないようにと防御に突出した能力をイメージする。 目を覚ますと見知らぬ世界に居て……学生くらいの年齢に若返っていて…… 現実か夢かわからなくて……そんな世界で出会うヒロイン達に…… 特殊な能力が当然のように存在するその世界で…… 自分の存在も、手に入れた能力も……異世界に来たって俺の人生はそんなもん。 俺は俺の出来ること…… 彼女たちを守り……そして俺はその能力を駆使して彼女たちを英雄にする。 だけど、そんな彼女たちにとっては俺が英雄のようだ……。 ※※多少意識はしていますが、主人公最強で無双はなく、普通に苦戦します……流行ではないのは承知ですが、登場人物の個性を持たせるためそのキャラの物語(エピソード)や回想のような場面が多いです……後一応理由はありますが、主人公の年上に対する態度がなってません……、後、私(さくしゃ)の変な癖で「……」が凄く多いです。その変ご了承の上で楽しんで頂けると……Mです。の本望です(どうでもいいですよね…)※※ ※※楽しかった……続きが気になると思って頂けた場合、お気に入り登録……このエピソード好みだなとか思ったらコメントを貰えたりすると軽い絶頂を覚えるくらいには喜びます……メンタル弱めなので、誹謗中傷てきなものには怯えていますが、気軽に頂けると嬉しいです。※※

バイトで冒険者始めたら最強だったっていう話

紅赤
ファンタジー
ここは、地球とはまた別の世界―― 田舎町の実家で働きもせずニートをしていたタロー。 暢気に暮らしていたタローであったが、ある日両親から家を追い出されてしまう。 仕方なく。本当に仕方なく、当てもなく歩を進めて辿り着いたのは冒険者の集う街<タイタン> 「冒険者って何の仕事だ?」とよくわからないまま、彼はバイトで冒険者を始めることに。 最初は田舎者だと他の冒険者にバカにされるが、気にせずテキトーに依頼を受けるタロー。 しかし、その依頼は難度Aの高ランククエストであることが判明。 ギルドマスターのドラムスは急いで救出チームを編成し、タローを助けに向かおうと―― ――する前に、タローは何事もなく帰ってくるのであった。 しかもその姿は、 血まみれ。 右手には討伐したモンスターの首。 左手にはモンスターのドロップアイテム。 そしてスルメをかじりながら、背中にお爺さんを担いでいた。 「いや、情報量多すぎだろぉがあ゛ぁ!!」 ドラムスの叫びが響く中で、タローの意外な才能が発揮された瞬間だった。 タローの冒険者としての摩訶不思議な人生はこうして幕を開けたのである。 ――これは、バイトで冒険者を始めたら最強だった。という話――

勇者のクランの恋愛事情

あかべこ
ファンタジー
遠足の途中でバスごと異世界に転移した32人の高校生(と一緒に転移した2人の大人)たち。のちに「勇者のクラン」と呼ばれた彼らの恋愛オムニバス。 ハーレム・同性愛・人外も含みます。気まぐれ更新。 表紙はかんたん表紙メーカーから。

異世界大使館雑録

あかべこ
ファンタジー
異世界大使館、始めますhttps://www.alphapolis.co.jp/novel/2146286/407589301のゆるゆるスピンオフ。 本編読まないと分かりにくいショートショート集です。本編と一緒にお楽しみください。

半分異世界

月野槐樹
ファンタジー
関東圏で学生が行方不明になる事件が次々にしていた。それは異世界召還によるものだった。 ネットでも「神隠しか」「異世界召還か」と噂が飛び交うのを見て、異世界に思いを馳せる少年、圭。 いつか異世界に行った時の為にとせっせと準備をして「異世界ガイドノート」なるものまで作成していた圭。従兄弟の瑛太はそんな圭の様子をちょっと心配しながらも充実した学生生活を送っていた。 そんなある日、ついに異世界の扉が彼らの前に開かれた。 「異世界ガイドノート」と一緒に旅する異世界

とある中年男性の転生冒険記

うしのまるやき
ファンタジー
中年男性である郡元康(こおりもとやす)は、目が覚めたら見慣れない景色だったことに驚いていたところに、アマデウスと名乗る神が現れ、原因不明で死んでしまったと告げられたが、本人はあっさりと受け入れる。アマデウスの管理する世界はいわゆる定番のファンタジーあふれる世界だった。ひそかに持っていた厨二病の心をくすぐってしまい本人は転生に乗り気に。彼はその世界を楽しもうと期待に胸を膨らませていた。

探検の書

ぶちゃ丸/火取閃光
ファンタジー
 俺は5歳の時に異世界に転生した事を自覚した。  そこから始まる様々な出会いと別れ、苦労と努力の生き様がここから始まった。  佐藤翔太は日本人として生まれ育ち病死して眠りについた。  しかし、気がつくと異世界の神殿で"祝福"と言うステータスを貰うための儀式の時に完全に前世の記憶を取り戻した。さらには、転生した翔太=今世ではフィデリオ(愛称:リオ)は、突然のことで異世界転生した事実を受け入れることが出来なかった。  自身が神様によって転生させられた存在なのか  それとも世界の理の元、異世界に転生しただけの存在なのか  誰も説明されず、突然の何一つ理解できない状況にフィデリオは、混乱の末に現実逃避してしまった。  しかし、現実を少しずつ認識し異世界で過ごしていく内に、【世界中を旅して回りたいと言う好奇心】や【今世偉大な両親や祖父達と同じような冒険をする冒険者に憧れ】を持つようになる。  そして地道な修業と下積み、異世界の価値観の違いに悩まされながら成長して冒険していく物語である。 *初のオリジナル投稿小説です。 *少しでも面白いと思って頂けましたら、評価ポイント・ブックマーク・一言でもよろしいので感想・レビューを頂けましたらより嬉しく幸いでございます。 *無断転載は禁止しております。ご理解よろしくお願いします。 *小説家になろう・カクヨム・ノベルアップ+

処理中です...