異世界大使館はじめます

あかべこ

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12:大使館に新しい風

12-3

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追加人員が来て4日、新しく来た3人もこの地での暮らしに馴染みつつある。
人員追加に伴い俺の使っていた執務室を嘉神・石薙さん・深大寺が共同で使う仕事部屋とし、嘉神が使っていた部屋を俺の執務室とした。おかげで俺の執務室は半分程度の広さになったが妥協の範囲内だ。
夏沢はというと木栖と同じ部屋で仕事してもらっている。
納村の執務室を使って貰う案もあったのだが、買い集めた資料やインタビューの収録機材(カメラだの録音機だのが積んである)で部屋の棚がが埋っており棚を増設したため2人で使うには作業スペースが狭くなっていたのでやめておいた。
ただ木栖の執務室も武器庫があって2人で使うには少し狭い気がしたので一応聞いたが、木栖は『金羊国への武器の運用指導で外に出る時間がこれから飛躍的に増えるので気にしない』と言う言葉を信じて同室とした。
そのせいだと思うのだが、夏沢は常に木栖にべったりだった。
夏沢は人との距離感が近めなようで俺にも距離感近めで接してきたのだが、生来距離感の近い相手が苦手な俺はちょっと距離を置いていたらそのままの勢いで木栖にべったりになってしまった。
木栖も自分の補佐という名目で来た夏沢を無碍にせず細やかに面倒を見ている。
「夏沢ちゃんって木栖さんに惚れてるんですかね?」
「納村、何でそれを俺に聞く?」
今朝大使館へ戻ってきた納村が日本から持ち込んだ荷物の積み下ろしを終えるとそう聞いてきた。
「行きがけにあの2人とすれ違ったんですけど、あれは狙ってる目ですよ」
「狙ってると言ってもあいつがゲイであることは嫌でもバレてるだろ」
国会でのアウティングを通して木栖のセクシュアリティは誰もが知るところになった。
沖縄地本時代に彼氏の奥さんが殴り込んできたというトラブル自体は事実なので下世話な週刊誌やネットニュースがその事を調査して記事にしたため、本人の口から言わずともだいたいの人が分かってるだろう。
「分かりませんよ?木栖さん男前だから惚れられてもおかしくないじゃないですか。それに世の中には愛があればゲイも女を愛せると思ってる人もいますから」
木栖善泰は確かに男前だとは思う、目鼻立ちは整ってるし背も高く無駄のないスッキリとした身体をしている。なので夏沢から一目惚れされてもおかしくはない。
だとしてもあいつは俺に惚れてる。その一点が俺にこの事態をうまく飲み込ませてくれない要因なんだろう。
「本当にお付き合い始めたら仮夫婦関係解消とかになるんですかねー?」
「…‥それは困るな」
あいつがいてくれないと不便な場面が多すぎる。
夏沢が木栖に恋愛感情があったとしても、俺たちのこの関係にまで影響を出す訳にはいかないのだ。
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