7 / 10
Chapter6 - 渋い戦い
しおりを挟む
呪文詠唱を終え――。
「"フレイム・アロー"!」
雪蛇に向けて剣を突き出すのと同時に、ローデンドの前方に矢型の炎が十数本現れ、放たれた。その全てが、一箇所――雪蛇の口を狙っている。
雪蛇が身をかがめた。
しかし、矢は向きを変えて狙いをはずすことはない。呪文に細工して追尾性能をつけているのだ。
ガアアァァァァァァ……!
雪蛇が吼えた。
尾を振り上げて、舞い上がった氷片と雪、尾で炎の矢を打ち消す。攻撃力を失った『炎の矢』による熱風が広がり、辺りに雪煙とは違う水蒸気のもやが薄く立ち込めた。
「"フレイム・アロー"!」
続けざまにもう一度、炎の矢。今度は追尾性能をつけていないので、呪文詠唱が短くてすむ。本数もさっきよりは少ない。
ドドドドドオン!
狙いがアバウトだったこともあり、幾本かは凍った地面に当たって弾けたが、何本かは雪蛇の首から腹にかけて命中した。
ガァッ!
ひるんだ雪蛇に、炎の矢の発射と同時に駆け出していたローデンドが追い討ちをかけた。剣をその胴に振り下ろす。剣に纏わせた炎は弱まりつつあるが、まだ戦える。
しかし、それは硬い雪蛇の体を突き抜けることはなかった。白い胴に薄く赤い線をつけただけ。
煩わしそうに雪蛇の胴がしなる。ローデンドの体が大きく飛んだ。空中で体勢を整えつつも、無様に背から落下する。サックの少し目の前だ。
「あわわわわ……」
おびえながらも、サックはローデンドに駆け寄った。
「大丈夫すか?」
「く……。呪文が――」
ローデンドはサックの問いには答えず、呪文詠唱が途切れてしまったことを悔しがっている。魔石の組み込まれたローデンドの鎧は、固いだけでなく衝撃吸収にもすぐれているのだ。
「オレにできることないすか?」
サックは思わずそう尋ねた。
「あいつの、口の中に、最強の火炎呪文を、叩き込みたい。手伝え」
やや息を切らせながら、ローデンドが答える。
その視線は、ずっと雪蛇に注がれたままだ。
雪蛇は、這って間合いを詰めると、鎌首を持ち上げ――。
「くるぞ」
ローデンドがサックの襟首を持ち上げて、大きく跳んだ。
二人が今までいた地面が、雪蛇の強烈な頭突きで雪煙を上げる。
「うわ……。この凍った地面に頭突きするとか、あいつどんだけ石頭なんすか!?」
サックは激しく吹きつける氷と雪に目を細めた。
ローデンドは腕で顔をかばいながらも、視線を雪蛇から逸らすことはしない。
「武器はあるか? お前ができる範囲で、雪蛇と戦え」
とりあえずそう命じて、ローデンドは新たな呪文を詠唱しはじめた。呪文を唱えている間は、会話ができないのが難点だ。
「は、はいぃ!」
返事をして、サックは片手で"チョコレート・シールド"を持ち、マントの下から武器を取り出した。また、お菓子を素材にした変な物が出てくるのかと思ったが、出てきたのは意外に普通な形をした細身の剣。やけに透き通ったガラスのような色合いが気になるが……。
「"フレイム・アロー"!」
雪蛇に向けて剣を突き出すのと同時に、ローデンドの前方に矢型の炎が十数本現れ、放たれた。その全てが、一箇所――雪蛇の口を狙っている。
雪蛇が身をかがめた。
しかし、矢は向きを変えて狙いをはずすことはない。呪文に細工して追尾性能をつけているのだ。
ガアアァァァァァァ……!
雪蛇が吼えた。
尾を振り上げて、舞い上がった氷片と雪、尾で炎の矢を打ち消す。攻撃力を失った『炎の矢』による熱風が広がり、辺りに雪煙とは違う水蒸気のもやが薄く立ち込めた。
「"フレイム・アロー"!」
続けざまにもう一度、炎の矢。今度は追尾性能をつけていないので、呪文詠唱が短くてすむ。本数もさっきよりは少ない。
ドドドドドオン!
狙いがアバウトだったこともあり、幾本かは凍った地面に当たって弾けたが、何本かは雪蛇の首から腹にかけて命中した。
ガァッ!
ひるんだ雪蛇に、炎の矢の発射と同時に駆け出していたローデンドが追い討ちをかけた。剣をその胴に振り下ろす。剣に纏わせた炎は弱まりつつあるが、まだ戦える。
しかし、それは硬い雪蛇の体を突き抜けることはなかった。白い胴に薄く赤い線をつけただけ。
煩わしそうに雪蛇の胴がしなる。ローデンドの体が大きく飛んだ。空中で体勢を整えつつも、無様に背から落下する。サックの少し目の前だ。
「あわわわわ……」
おびえながらも、サックはローデンドに駆け寄った。
「大丈夫すか?」
「く……。呪文が――」
ローデンドはサックの問いには答えず、呪文詠唱が途切れてしまったことを悔しがっている。魔石の組み込まれたローデンドの鎧は、固いだけでなく衝撃吸収にもすぐれているのだ。
「オレにできることないすか?」
サックは思わずそう尋ねた。
「あいつの、口の中に、最強の火炎呪文を、叩き込みたい。手伝え」
やや息を切らせながら、ローデンドが答える。
その視線は、ずっと雪蛇に注がれたままだ。
雪蛇は、這って間合いを詰めると、鎌首を持ち上げ――。
「くるぞ」
ローデンドがサックの襟首を持ち上げて、大きく跳んだ。
二人が今までいた地面が、雪蛇の強烈な頭突きで雪煙を上げる。
「うわ……。この凍った地面に頭突きするとか、あいつどんだけ石頭なんすか!?」
サックは激しく吹きつける氷と雪に目を細めた。
ローデンドは腕で顔をかばいながらも、視線を雪蛇から逸らすことはしない。
「武器はあるか? お前ができる範囲で、雪蛇と戦え」
とりあえずそう命じて、ローデンドは新たな呪文を詠唱しはじめた。呪文を唱えている間は、会話ができないのが難点だ。
「は、はいぃ!」
返事をして、サックは片手で"チョコレート・シールド"を持ち、マントの下から武器を取り出した。また、お菓子を素材にした変な物が出てくるのかと思ったが、出てきたのは意外に普通な形をした細身の剣。やけに透き通ったガラスのような色合いが気になるが……。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
スケートリンクでバイトしてたら大惨事を目撃した件
フルーツパフェ
大衆娯楽
比較的気温の高い今年もようやく冬らしい気候になりました。
寒くなって本格的になるのがスケートリンク場。
プロもアマチュアも関係なしに氷上を滑る女の子達ですが、なぜかスカートを履いた女の子が多い?
そんな格好していたら転んだ時に大変・・・・・・ほら、言わんこっちゃない!
スケートリンクでアルバイトをする男性の些細な日常コメディです。
うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。
クラス転移で神様に?
空見 大
ファンタジー
集団転移に巻き込まれ、クラスごと異世界へと転移することになった主人公晴人はこれといって特徴のない平均的な学生であった。
異世界の神から能力獲得について詳しく教えられる中で、晴人は自らの能力欄獲得可能欄に他人とは違う機能があることに気が付く。
そこに隠されていた能力は龍神から始まり魔神、邪神、妖精神、鍛冶神、盗神の六つの神の称号といくつかの特殊な能力。
異世界での安泰を確かなものとして受け入れ転移を待つ晴人であったが、神の能力を手に入れたことが原因なのか転移魔法の不発によりあろうことか異世界へと転生してしまうこととなる。
龍人の母親と英雄の父、これ以上ない程に恵まれた環境で新たな生を得た晴人は新たな名前をエルピスとしてこの世界を生きていくのだった。
現在設定調整中につき最新話更新遅れます2022/09/11~2022/09/17まで予定
異世界着ぐるみ転生
こまちゃも
ファンタジー
旧題:着ぐるみ転生
どこにでもいる、普通のOLだった。
会社と部屋を往復する毎日。趣味と言えば、十年以上続けているRPGオンラインゲーム。
ある日気が付くと、森の中だった。
誘拐?ちょっと待て、何この全身モフモフ!
自分の姿が、ゲームで使っていたアバター・・・二足歩行の巨大猫になっていた。
幸い、ゲームで培ったスキルや能力はそのまま。使っていたアイテムバッグも中身入り!
冒険者?そんな怖い事はしません!
目指せ、自給自足!
*小説家になろう様でも掲載中です
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる