じゃあ俺、死霊術《ネクロマンス》で世界の第三勢力になるわ。

万怒 羅豪羅

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7章 大根役者

1-1 進路変更

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1-1 進路変更

ドドドドド……

「ひゃー、すごい数だな。まだまだ続くぞ……」

俺は目の前を通り過ぎていく騎馬隊を眺めながら、感嘆の声をこぼした。
ここは、王都ペリスティルから北へと伸びる、北部街道。俺たちはつい二、三日前に王都で起きた、大規模な反乱の鎮圧に協力し、その見返りとして、女王ロアから念願の自由を保障されたのだ。晴れて気ままな旅ができることとなった俺たちは、針路を北に取り、この国の最北端を目指すことにしたのだけれど……

「これはいったい、どういうことなんでしょうか……」

俺の隣にふわふわと浮かぶ幽霊のシスター・ウィルが、騎兵の大行列を見ながら首をかしげる。

「あの武装、王国兵のものだよね」

ゾンビの少女・フランが、騎兵の一人を指さしながら言った。騎兵たちが身に着けている装備は、つい先日に王都でさんざん目にした王国兵と同じものだ。てことは、この大軍は俺たちと同じく、王都からやってきていることになるな。

「でもさ、なんで王国兵が北を目指してるんだろ?」

グールの幼女・ライラは、もうもうと土煙を上げる集団を目にして、少し怯えているようだ。俺の背中に身を隠しながら、チラチラと騎馬の行列をうかがっている。

「うーむ。反乱が起きたばかりですから、地方の治安維持の目的があるのかもしれませんな」

鎧の騎士・エラゼムがあごのあたりに手をやりながらうなった。地方の治安維持、か。じゃあこの兵士たちは、この先の街に向かっているかもってことだな。ひょっとすると、俺たちと向かう先は同じだったりするのかな?俺は自分の胸を見下ろして、たずねた。

「アニ、この街道を進むと、ほかにどんな町があるんだ?」

すると俺の首からぶら下がる、しゃべる魔法の鈴・アニが青い光を発した。

『このまま北部街道を進めば、二の国最大の鉱山“カムロ坑道”があります。そこを抜ければいくつかの工場町こうばまちと漁港がありますね』

「へ~、鉱山か……」

だけど取り立てて、兵士が大勢向かうところでもないと思うんだけどな……うぅん、わからない。直接聞いたほうが早そうだ。

「おーい、兵隊さん!」

俺が騎馬隊に声をかけると、一騎の兵士が馬の足を止めてくれた。ラッキー、親切そうな人だぞ。俺は騎兵のそばに駆け寄る。

「なあ、兵隊さんたちはどこへ向かってるんだ?」

「私たちか?私たちは北のカムロ坑道へ向かっているところだ」

「坑道?兵隊さんも穴掘りを手伝うのか?」

「いやいや、そうではない。私たちは王女の命を受けて、坑道のドワーフたちに会いに行くのだ」

「ドワーフ?ドワーフって、あの、髭がもじゃもじゃした……」

「そうだ。なんでも、坑道のドワーフたちがストライキを起こしたそうでな。ほら、先日の反乱を企てた、ハルペリン一派がいただろう。あいつらが戦いを起こす前に、坑道のドワーフたちにちょっかいをかけていたらしいんだ。これからは俺が王になるからとかなんとか……」

「うわぁ……それって、捕らぬ狸の皮算用ってやつ?」

「そのとおりだよ、まったく。そのせいでドワーフたちに混乱が生じ、作業が止まってしまったらしい。詳しい状況を説明するまで作業をしないというんだよ。なので、私たちはその説明と、ついでに北部のパトロールをしてくるんだ。ほかにもハルペリンが余計なことを言っているかもしれないからね」

「はー……」

「ところで、君たちこそどこに向かうつもりなんだ?」

「え?俺たちも北に向かうつもりだけど……」

「北へ?だったら今はやめたほうがいい。今は山脈を越えることはできないんだ」

「へ?な、なんで?」

「山脈を越えるには、ドワーフたちの坑道を通る必要があるんだよ。しかし今、ドワーフたちは混乱し、気が立っている。我々と違って、ドワーフは血が上りやすいからな。我々が彼らを落ち着けるまでは、旅人たちの安全を考慮して、通行は許可できないことになっているんだ」

「えぇー!」

なんてこった。俺たちの目的地はまさに、その坑道の向こうだってのに!

「で、でも。ドワーフの誤解を解けば、すぐに通れるようになるんだろ?」

「いや、ドワーフの鉱山はアリの巣のように入り組んでいて、到達するのにかなりの時間を要するんだ。そのうえで、ドワーフの棟梁一人ひとりに説明しなきゃならないからな。かなり時間がかかるぞ、一週間か二週間、下手したらもっと……」

に、二週間……どんだけ石頭なんだよ、ドワーフってやつは?

「だから悪いことは言わない、日を改めなさい。カムロ坑道の近くには寝泊りできる宿もろくにないからな。それまで、王都観光でもしたらどうだ?」

うぅ……まさか、つい先日まで王都にいて、あまつさえ反乱鎮圧に参加していたなんて言っても、信じないだろうな。俺は親切な騎兵に礼を言うと、困り果てて仲間の元へと戻った。騎兵に聞いた話をすると、仲間たちも俺と同じような顔になった。

「二週間以上ですか……それは、困ったことになりましたな」

エラゼムが腕を組んで言う。北を目指すことにしたのは、エラゼムのためだった。エラゼムはかつての城主を探していて、その人はどうやら北にいたらしいからだ。

「別に急ぐ旅じゃないし、通れるようになるまで待ってもいいんだけど」

俺が妥協案を提案すると、しかしエラゼムが首を横に振った。

「お気持ちはありがたいのですが……王都の高級な宿に二週間も滞在すれば、ばかにならない出費になってしまいましょう」

う……それは、こまるな。俺たちは万年金欠だ。

「でも、じゃあどうする?その間、別の場所にでも行ってみるか?」

「そうですな。そちらのほうが、建設的でございましょう」

「そんなら、どこを目指そうか……」

「はいはいはいはーい!」

しゅばっと手を上げたライラが、ぴょんぴょん飛び跳ねた。

「三の国!あそこに行ってみたい!」

「三の国?」

三の国といえば、確かアニに聞いた。この国のお隣で、魔法使いだらけの魔術大国だとか。

「あー、なるほど。魔法のメッカを見ておきたいわけだ、大魔法使いとしては」

「そーいうこと。なんだ、桜下もわかってんじゃん」

得意げに無い胸をそらすライラ。三の国か……

「確かに、ロアにもらったファインダーパスを使えば、外国にも自由に行けるんだよな」

王都を救った見返りにロアからもらった、通行許可証。それをくれる代わりに、他国に行って、謎の仮面の人物“マスカレード”の情報を集めてこいと言うのが、ロアからの依頼だった。

「ふーむ。ロアからの依頼もこなせるし、俺も外国には興味があるな」

「ね?いいでしょー。いこうよー」

ライラは俺の手をつかんで、右に左に揺らす。

「俺はいいけど……みんなも、それでいいか?」

仲間たちにも聞いてみるが、みんな異存はないみたいだ。そもそも、俺たちには目的地は特にない。一つ所にとどまるよりは、いろんな場所を訪れたほうがいいだろう。

「それじゃ、決まりだな……行ってみるか、三の国へ」



つづく
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読了ありがとうございました。
続きは【翌日0時】に更新予定です(日曜日はお休み)。

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