上 下
27 / 30

悪役令嬢 覚醒

しおりを挟む
【フルモンティ様……私は本当に喋れるのですか? 私は一体何なのですか?】

 フルモンティが真剣な顔つきになった。

「なんじゃ、まだ自分の理解していなかったのじゃな」

「お主の職業はなのじゃ。前世やらが複雑に絡みあって今のお主があるのじゃ」

 アリスは震えている、不安そうな顔で俺を見る。

 俺はアリス座り込んでアリスの小さな手を握った。

「まあ、よい。今はハルキなのじゃ! 一緒に20層までいくのじゃ!」

 フルモンティは邪気のない笑顔で俺に抱きついてきた。
 俺は……アリスが心配だ……。

「フルモンティちゃん、俺はアリスと冒険をする。だから一緒にいけないよ」

「嫌なのじゃ! 嫌なのじゃ!」

 ダダをこねるフルモンティ。
 
 アリスは考えこんでいる。

 その時タブレットが鳴り出し、俺達に告げた……。


「……上層部から許可を承認済み、現時点でフルモンティを一時的にプレイヤーサイドへ降格」

「始末人の手配完了」

「フルモンティ専用特別イベント「始末人VSフルモンティと仲間たち」を開始……しやがれ! このイカレポンチが!」

 俺はアリスの手を引いてそっと離れようとした……。

「フルモンティちゃん……頑張ってね……」

 フルモンティは自分の身体を弄りながら焦っている。

「ふぁ!! ボスモンスターのチカラがなくなっているのじゃ! ヤバイのじゃ……。タブレットのやつアメリカンジョークも通じないのじゃ!」

 自業自得じゃないかな……

【ハルキ様! これを見てください!】

 アリスのタブレットに映し出されていたのは、フルモンティパーティー承認済み画面であった……。





 そいつらは現れた。

 無骨な黒い鎧に全身覆われた騎士。黒い禍々しい剣を携えている。
 尋常じゃない黒い闘気は明らかに格上のそれ。
 身動き一つもしないそいつらは、俺達に敵意をむき出しにしている……。


 とんだとばっちりだ……。


「黒騎士が5体なのじゃ! ヤバイ、ヤバイのじゃ! あいつらは40層にいるSCMなのじゃ!」

 俺の周りを走り、テンパっているフルモンティ……。
 お前のせいだよ!

 遠くにいる勇者たちが異変に気づいた様でこっちに向かっている。


 アリスはまだ考え込んでいる……。

「フルモンティちゃん、いやフルモン、あいつから逃げられるのか?」

「……前の妾なら瞬殺なのじゃ……でも今は逃げるのさえむずかしいのじゃ……その呼び方は嫌なのじゃ……」

 言い終わった瞬間フルモンは吹き飛ばされた!

「ぎゃーーーー!」

 黒騎士がいつの間にか接近している。
 くっ、盾を生成……
 生成するまもなく俺の腹に剣が突き刺さる。

「きゅ!」

 アリスが別の黒騎士に切られた……。

 黒騎士達はフルモンティを追い回しに行った。


 瀕死の俺達が残された。


 アリス!?
 俺はチカラを振り絞ってアリスを抱きかかえる。

 俺の回復魔術が発動して二人に光が包み込む。
 アリスは一度死んだら終わりだ……
 死なせるものか……

 アリスの回復が追いつかない……
 毒か? 呪いか? 傷口が開く。

「きゅきゅ……きゅ?」

 アリスは弱りきった身体なのに俺の心配をしてる。

 絶対死なせるものか!

「俺の命を……」

 チカラを振り絞ってアリスを抱きめる。
 進化した時の感覚を思い出せ!
 メイドとの戦いを思い出せ!

 俺のLPを全力で注ぎ込め!

 次の瞬間、俺の中のものがごっそり抜け落ちたのを感じた……。

 アリスが……。

 俺の腕の中で光っている……。

 大きくなっている……。

 ……え、まだ大きくなるの?

 アリスは人と変わらないサイズになった。

 傷は閉じている。
 良かった……。



 もう目を開けてられない……。

 倒れそうになった俺に魔力が注がれた。

 アリス?

 抱いているアリスの感触が変わった。
 モフモフの心地良い感触から、それは人肌の暖かさと女の子の柔らかさであった。

 アリスが全裸の女の子に変化した……



「ハルキ様! やっとやっと会えましたわ!!」



 アリスはメイドとそっくりな顔をしている。
 髪はピンクだが、美しい髪を縦巻きロールにし、前髪はパッツンにあっている。
 凶悪的なダイナマイトボディなのに、気品がありどこぞの貴族か、と言いたくなる。


 全裸である。


 巨乳だ……。柔らかい……。

 ……今はそんな事考えている場合じゃない!

 俺の傷が消えてなくなる。


「アリス……? その姿は……?」


 アリスは全裸で立ち上がる。
 その立ち姿はとても美しかった。見惚れてしまう。

 柔らかい雰囲気が一瞬で終わる。
 黒騎士とフルモンをにらみつける。

 ドス黒いオーラが辺りを漂う……。


「後で説明しますわ……今はハルキ様を傷つけたあのゴミクズ共が先ですわ!」

 アリスが詠唱する。
 ピンクのドレスが光とともにアリスの身を包み込む。
 まるで高貴なお姫様みたいだ。


 突然高笑いをするアリス。



「わたくしのハルキを傷つけた罪は重いですわ……この災厄の魔女、最強の悪役令嬢と言われたわたくし「アンダーソン家公爵令嬢アリス・アンダーソン・ユミ」……貴様らを地獄へ落としますわ!!!」


 ドス黒いオーラが周囲全域を埋め尽くした。















しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

魔法のせいだからって許せるわけがない

ユウユウ
ファンタジー
 私は魅了魔法にかけられ、婚約者を裏切って、婚約破棄を宣言してしまった。同じように魔法にかけられても婚約者を強く愛していた者は魔法に抵抗したらしい。  すべてが明るみになり、魅了がとけた私は婚約者に謝罪してやり直そうと懇願したが、彼女はけして私を許さなかった。

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。

ファンタジー
〈あらすじ〉 信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。 目が覚めると、そこは異世界!? あぁ、よくあるやつか。 食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに…… 面倒ごとは御免なんだが。 魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。 誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。 やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

【取り下げ予定】愛されない妃ですので。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。 国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。 「僕はきみを愛していない」 はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。 『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。 (ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?) そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。 しかも、別の人間になっている? なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。 *年齢制限を18→15に変更しました。

悪役令嬢にざまぁされた王子のその後

柚木崎 史乃
ファンタジー
王子アルフレッドは、婚約者である侯爵令嬢レティシアに窃盗の濡れ衣を着せ陥れようとした罪で父王から廃嫡を言い渡され、国外に追放された。 その後、炭鉱の町で鉱夫として働くアルフレッドは反省するどころかレティシアや彼女の味方をした弟への恨みを募らせていく。 そんなある日、アルフレッドは行く当てのない訳ありの少女マリエルを拾う。 マリエルを養子として迎え、共に生活するうちにアルフレッドはやがて自身の過去の過ちを猛省するようになり改心していった。 人生がいい方向に変わったように見えたが……平穏な生活は長く続かず、事態は思わぬ方向へ動き出したのだった。

元侯爵令嬢は冷遇を満喫する

cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。 しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は 「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」 夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。 自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。 お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。 本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。 ※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

悪役令嬢の去った後、残された物は

たぬまる
恋愛
公爵令嬢シルビアが誕生パーティーで断罪され追放される。 シルビアは喜び去って行き 残された者達に不幸が降り注ぐ 気分転換に短編を書いてみました。

処理中です...