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パグポメ
しおりを挟む「――来るか」
ハデス王がなんか意味わかんない事を呟いているわ。
私はハデス王の寝室で……ハッスルした後のお茶を楽しんでいるところ。
――バカ王子よりも渋くて悪くないわね。
私はこの美しい肉体を生まれたままの姿でハデス王に見せつける!
なのに、ハデス王は遠くを見て分けわからん事を呟いているわ……
――うん? なんか変な音が……
城の中庭に何かが落ちてきた!
ハデス王は全裸のまま、私に指示をだした。
「む、リディア、ちょっと見にいけ」
「リディア様! お、王子が降ってきました!」
そこには醜い姿の王子が中庭で倒れていた。
かろうじて意識はあり、なんかブツブツ喋っている。
バカ王子は私に向かって突然叫んだ。
「――おーほほほ! あなたの婚約者を返しますわ! ――ハデス王、首を洗って待ってなさい! ……いや、違う! 俺じゃない! 口が勝手に!? あ、ああ、ああああ!!!」
「ちょっと、何言ってるのよ!?」
バカ王子は私の言葉を無視して、苦しそうに身悶えていた。
「あ、助けて……お、俺……死にたくな……ぐあは!?」
お腹の辺りがボコボコと蠢く。
甲高い声が鳴り響いた!
「きゅーーーーい! ぶっ殺すきゅーい!」
腹の中からピンク色のうさぎが飛び出して、バカ王子が絶命した……
――明らかに敵ね! ぶっ殺すわ!
私は素早く兵士に指示をだす。
「早く殺しなさい! 敵は一匹よ! ハデス王に連絡しなさい! これは戦争よ!」
――私は逃げるわ!
兵士達が伝令のため、城内を駆け回る。
「――敵襲だ! 敵襲だ!」
――あ、ちょっと待って! 痛!? う、動けない……
いつの間にか足に黒い物体が絡みついていた!?
「ちょちょちょ!? 誰か早く助けなさいよ!」
ピンク色のうさぎは口角を上げて、ニタリと嫌らしい笑みを浮かべていた。
「きゅきゅ! あんたはエリカのために残しておくきゅ! ――分身魔法!」
うさぎに襲いかかろうとした兵士たちの首が一斉に飛んだ。
「きゅきゅきゅ」
「きゅきゅきゅ」
「きゅきゅきゅ」
…………
…………
数え切れないほどのうさぎが目の赤く光らせながら兵士達の首を持っていた!
「な、なんなのよ、これ!?」
私は死の恐怖でちびってしまった……
***********
私はポメ子。
御主人達と一緒にこの世界に召喚されちゃったけど、私にはパグ太君がいるから大丈夫よ。
……感覚でわかるわ。この世界の私は私じゃない。ちゃんと元の世界でパグ太君と幸せになっている自分がいるのがわかるわ。
隣であくびをしているパグ太君。
――ふ、ふん、かっこいいんだからね!
私達は船に乗って王国に攻めこもうとしている。
「ばうばう?」
――風が強くない? 中に入ってな。一人の身体じゃないんだよ?
「わふん!」
――あ、ありがと。でも、パグ太君の横にいたいから……
「ばうーばう!」
――じゃあ僕の後ろにいな。
「わ、わふん!」
――う、うん!
そろそろ王国城に着きそうね。
あ、真っ黒い鳥さん達がこっちに向かってくるわ!
――ふふ、パグ太君にいいところみせよ!
ハム太が大声でうんちくをたれていた。
「あれは!? ブラックドラゴンハム! 伝説級のドラゴンで、一匹で国が滅びると言われているハム! 全部で30匹いるハム! 御主人さま、ご指示を!」
――ハムハムうるさいわね! こいつ、図体でかいくせにビビリで細かいのよ。男ならパグ太君みたいにドンとかまえなきゃね!
パグ太君は腹を見せてゴロゴロしていた。
――う、や、ヤバいわ。可愛い……萌死ぬわ……
みんな必死に戦っている。
私はあんまり攻撃が得意じゃない、傷を治すだけしか出来ない。
「おい、ドラゴン一匹抜けたぞ! 焼き鳥! しっかり働け!」
「フォ!? 誰が焼き鳥じゃ! アイツら硬いんじゃよ!」
障壁を張っているパグ太君に襲いかかろうとするドラゴン。
パグ太君は魔法に夢中で気づかない!?
「わふふふん!!」
――私はポメ子。
――パグ太君のためだったら……なんでもするわ!
――聖牙!
パグ太君に襲いかかろうとした黒い鳥の喉元を食らいつく。
黒い鳥は死亡した……と思ったら、最後のちからを振り絞って自爆をした。
――!?
強大な力を持った黒炎が私に襲いかかる……
どうにかバリアを使って攻撃をしのいだ…
くっ、少しだけ傷ついてしまったわ……
「ばうばう!? ばうばうばう!? ばう……、ばう……ばうばう、ばう!!!」
――ポメ子!? 大丈夫? ごめん……僕のせいで……絶対許さない、僕の愛するポメ子を傷つけた奴は土に帰してやる!!
――パグ太君が切れたわ!? あ、ああ、切れたパグ太君の横顔……凛々しいわ……頭がぽーっとしてくる……
パグ太君は前足を踏んだ。
見たことがない尖った金属が要塞から飛び出した。
「な、なんだこれ!? パグ太がやってるのか?」
「みんな動いちゃだめハム! あれは全部聖剣ハム!」
「は!?」
「ハルト、聖剣って何?」
「エリカ! 絶対動くな! あれはヤバい!」
バグ太くんはもう一度、前足で強く踏み出した。
「――ばうばう!!」
数多の聖剣が意思を持っているかの様に、黒い鳥を貫き、切りつけ、死の刃と化して襲いかかっていった。
黒い鳥を全滅させた聖剣は、そのまま王国城へ飛んで行った!
島民と、もふもふ達が呆然としている。
パグ太君が私の元へやってきた!
「ばうばう!!」
「わふん……わふん!」
パグ太君が私の顔を舐めてくれた……
――へへ、ポメ子はツンデレなんてやめて、素直になれたから幸せよ。パグ太君、これからもずっと一緒よ!
私達はそのままずっといちゃついていた。
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