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制圧完了

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「やっと邪魔者がいなくなったね、リディア」

「はい……私は王子と一緒になれて嬉しいです」

 ふふふ、順風満帆ね……
 エリカは本当に邪魔者だったわ。
 いつも、いつも私の邪魔ばっかりして……もう顔も見たくもなかったわ。

 これで私がアレス様の婚約者……これを踏み台にして私が王国を牛耳るわ!

 ――義父様、早く死んでくれないかしら? 毎日猛毒を盛ってるのになんで生きてるのよ……

 私がこの国を影から治めて、素晴らしい王国にするのよ!

 バカ王子がふと気になる事を言い出した。

「……あいつが追放されて3ヶ月が経つ。……デスクリムゾン島に送り込んでいた間者は全て始末されてしまった。しかも島が大きな壁で囲われてしまって、容易に侵入することができなくなってしまった。……エリカが生きているのか死んでいるのかわからん。……ま、死んでるだろ!」

 ――気になるわね。

「……ねえアレス様。私凄く気になります……だってあの令嬢が生きていたらと考えるだけで夜も眠れません……」

「え、マジ!? よし、王国最強のギルドを雇って調査させよう! Sランク冒険者だったら流石に大丈夫だろ!」

「はい!!」

 ――目の見えるところで殺しておけば良かった……




 ********



 はぁ……どうしてこうなっちゃたんだろ?

「姫! 砦の修復作業は完了です!」

「姫! 住民全員の台帳を作りました!」

「姫! あっしは何しますか!」

「姫! 学校作るって本気ですか? 俺たちゃ犯罪者ですよ? ……お、俺……本当は学校行きたかったんだ……病弱な親の看病と腹を空かせた妹達を食わせるために……ひっぐ……」

 私はデスクリムゾン島を制圧してしまった……
 私と言うよりもほぼハルトが動いてくれたけどね。私はただ偉そうに喋っていただけ。

 あと、新しく召喚した、ふさふさわんこと顔がクシャってしたわんこ達も大活躍だったな!

 ふさふさわんこはいきなり回復魔法で傷ついた島民を癒やすし、クシャッとわんこは土魔法で島を要塞化しちゃうし……

 島民(犯罪者)は私を姫といって崇めちゃうし……

 私どうしよ……





 午後の執務も終わり、部屋にはハルトとわんこ達だけになった。

 私に召喚されたわんこの名前をハルトが聞いてくれた。
 ふさふさが、ポメ子。
 クシャッとが、パグ太。

 ハルトがうさぎ化して私の膝の上にのる。

「ご主人さまの膝が落ち着く……現状の確認をしよう」

 うさぎなのにキリっとした顔で私達を見た。

「わふん!」
「ばうばう!」
「よろしくてよ……ってハルトだったら素で喋ってもいいよね? 私のよそ行きの喋り方は疲れちゃうんだもん!」

 私はハルトのお腹に顔を埋めようとした。
 ハルトは焦って身体をよじる。

「よ、よせ! 婦女子が男性のお腹に顔を埋めるなど……恥ずかしいだろ!」

「ははは! だってハルトだったらいいじゃん!」

 私がひとしきりもふもふした後、息を切らしたハルトが話を始めた。

「はぁはぁ……よし改めて現状の確認だ」

「俺達は御主人さまに召喚された存在だ。……御主人さまが強く願った時、俺たちは現れた。そして、今後も増え続けるだろう」

 私は膝の上で偉そうに喋るハルトに質問した。

「ねえねえ、ハルトっていなくならないよね……いなくなったら、私……やだよ……」

「……現状はいなくなる事はないだろう。俺は御主人さまを守るためにいる。……御主人さまの願いが達成したらわからん……」

「私の願い?」

「……今は気にするな。俺が必ず御主人さまを守る」

「うん! ハルトは人型になってもずっと一緒だよ!」

「……話しが脱線したな」

 ハルトは姿勢を直して、現状の報告をする。

「この3ヶ月でデスクリムゾン島を支配することができた。そしてご主人さまに反逆する奴らと王国の間者は処分した。……ここからご主人さまの反逆が始まる」

「わふんわふん!」
「ばうばうばうばう!」

 ハルトは膝から降りて人型化した。
 イケメン青年が現れた。今度はちゃんと服を来ている。

「ご主人さまはとても優しい。一部の連中しかそれを理解していない……ご主人さまの言動のせいでもあるが……。そんな優しいご主人さまを追放した王国は断罪しなければならない!」

「え、私はハルトと仲良く生活できればいいよ~」

「……この王国が平和だったらそうしたかったな。残念ながらこの地は魔境だ。腐った奴らが支配している。御主人さまの生存が判明したら、すぐさま王国軍を差し向けて、ここを攻め落とすだろう」

「ふえ……めんどい……」

「だから、今のうちにこの島を拠点として、島民を戦力として整えて、教育を施し、御主人さまの新たな国を作るんだ!」

「わ、私の国!?」

「ああ、まだまだ人材が足りない! 御主人さま、このリストの願い通りに召喚をするんだ!」

 私はリストを軽くみた。
 ……国を作る上で大変必要不可欠な願いばかりだ。

 ハルトは近づいて私の手を取った。
 その顔は真剣である。
 うん、イケメンだ。

「御主人さま……後で一杯もふもふしていいから……俺……耐えるよ……」

「え、オッケ! 召喚するよ! そいやーー! それ! はい!」

 私はものすごい早さで召喚をすると、光のサークルからぽんぽん召喚者が出てきた。

 狸のタヌポン。
 ハムスターのハム太。
 猫のにゃんこ。
 ピンクうさぎのアリス。
 ハリネズミのハリン。

 謎の美男美女軍団。
「ここはどこだ? 俺は……焼き菓子を……」
「あれ? 新しい撮影場所?」
「まさか異世界転移! あ、よかった……ちゃんと一緒だね!」

 屋敷内は一気にカオスになった!

 そして島内には着々とエリカ信者が増えていった。






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