杉沢晴人は勇者になれない～悪役神に与えられたスキル、実は最強でした～

マリーのお城⑦

と、優雅にカップを持ち、ソファーに腰掛けていたマリーが口を開く。

「例えば、今話した使用人達の実体化とかね。あとは、料理をそのまま出現させたり、必要な衣類を召喚すること。それに、馬車みたいな交通手段を呼び出すことも出来るわね。まぁ、もっともっと他にも出来ることはあるけれど」

「それは凄いな……」

というか、料理を出現させられるだけでかなり助かる気がする。

それができれば、マリアの負担をかなり減らしてやることもできるだろう。

（というか、使用人のゴースト達がいるのだから、マリアは働かなくて良い気もするが……）

いや、この根っから働くのが好きで生真面目なうちの自慢のメイドは、きっとゴースト達に混ざって働くに決まっているだろう。

（もしかしたら、住まわせていただいてるご恩がとか言ってゴーストより働き出しそうだ……）

取り敢えず、働きすぎだけは阻止しよう。

そんなことを考えながら、俺はマリーに視線を戻す。

すると、彼女は片手で銀の鍵を弄びながら、説明を続けて来た。

「でもね？この居城の運営権も万能ではないの。出来ないこと……ううん、やって欲しくないことがあるのよ」

鍵をそっと握り締め、そう語るや真剣な表情で俺の顔をじっと見つめてくるマリー。