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英霊急襲③
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(どうにかマリアを助けなければいけないのに……)
無能力の俺では、瞬殺されるに決まっている。
俺は、自分の無能さが悔しくてひたすら歯噛みした。
(マリアを……大切な者すら、俺はこの手で守れないのかっ……!)
腹の底から悔しさを感じながらも、俺は少女を見上げると、必死に声を振り絞る。
「お前……能力者だろう?目的はなんだ?」
内心の激しい動揺を悟られない様、務めて冷静に少女に声をかける俺。
すると彼女は、その薔薇色の唇を美しい半月型に歪めながらこう言った。
「目的?決まっているわ。あんた達の命よ、杉沢晴人。知ってるのよ?私。あんた、あの名門杉沢家の末っ子なんでしょう?そんなあんたの魂を回収出来たら……私はさぞ強くなれるでしょうねぇ」
(しまった……!こいつ……勇者じゃない!英霊の方か!)
そう、基本的に英霊より勇者が少ない現状、余程のことがない限り、勇者は勇者同士で争うことがない。
また、何より「魂を回収」と言っていることが彼女が英霊である何よりの証拠だった。
英霊達は、勇者――即ち能力を持つ、強い者達の魂を好んで回収している。
何故なら、強い魂を回収し、その身に食らったり宿したりする程、英霊達が持つ能力は飛躍的に強くなり、下手をすると進化をしたりすることがあるからだ。
中には、強い勇者の魂を身の内に取り込んだ英霊が、その勇者の異能――所謂、神に与えられた能力を行使したという例もある。
それ程までに、勇者達の魂というのは、この世界で目的を成し遂げるために力を欲している英霊達にとって、喉から手が出るほど欲しい、甘美な果実というわけなのだ。
そんな勇者達の中でも、俺の家――杉沢家は日本の勇者の筆頭の家系だった。
(でも、きっとこの英霊は……俺が無能力者だとは知らないで、俺を狙ってきたのだろう)
勇者の能力や強さを求める英霊達にとって、無能である俺の魂の価値は恐らくゴミに等しい。
で、あるならば――。
どうにかマリアを解放させる為、俺は少女の前に一歩進み出るとこう言った。
「あんたが誰だかわからないが彼女を解放してくれ!確かに俺は杉沢家の人間だが、能力がないことがわかって家を追い出されたばかりなんだ!」
無能力の俺では、瞬殺されるに決まっている。
俺は、自分の無能さが悔しくてひたすら歯噛みした。
(マリアを……大切な者すら、俺はこの手で守れないのかっ……!)
腹の底から悔しさを感じながらも、俺は少女を見上げると、必死に声を振り絞る。
「お前……能力者だろう?目的はなんだ?」
内心の激しい動揺を悟られない様、務めて冷静に少女に声をかける俺。
すると彼女は、その薔薇色の唇を美しい半月型に歪めながらこう言った。
「目的?決まっているわ。あんた達の命よ、杉沢晴人。知ってるのよ?私。あんた、あの名門杉沢家の末っ子なんでしょう?そんなあんたの魂を回収出来たら……私はさぞ強くなれるでしょうねぇ」
(しまった……!こいつ……勇者じゃない!英霊の方か!)
そう、基本的に英霊より勇者が少ない現状、余程のことがない限り、勇者は勇者同士で争うことがない。
また、何より「魂を回収」と言っていることが彼女が英霊である何よりの証拠だった。
英霊達は、勇者――即ち能力を持つ、強い者達の魂を好んで回収している。
何故なら、強い魂を回収し、その身に食らったり宿したりする程、英霊達が持つ能力は飛躍的に強くなり、下手をすると進化をしたりすることがあるからだ。
中には、強い勇者の魂を身の内に取り込んだ英霊が、その勇者の異能――所謂、神に与えられた能力を行使したという例もある。
それ程までに、勇者達の魂というのは、この世界で目的を成し遂げるために力を欲している英霊達にとって、喉から手が出るほど欲しい、甘美な果実というわけなのだ。
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(でも、きっとこの英霊は……俺が無能力者だとは知らないで、俺を狙ってきたのだろう)
勇者の能力や強さを求める英霊達にとって、無能である俺の魂の価値は恐らくゴミに等しい。
で、あるならば――。
どうにかマリアを解放させる為、俺は少女の前に一歩進み出るとこう言った。
「あんたが誰だかわからないが彼女を解放してくれ!確かに俺は杉沢家の人間だが、能力がないことがわかって家を追い出されたばかりなんだ!」
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