コウカイ列車に乗って

コウカイ③

きっと、本当はあの少女自身も怖くて仕方ないのだろう。

幼い凛子や、目の前に立つ5人の子供達を毅然と見つめる瞳には、うっすら涙が滲んでいる。

ただ、今の僕には――その意志の強さを感じさせる眼差しに、見覚えがあった。

そう、あの瞳……あの眼差しの持ち主はーー。

「……岬……？」

僕は、隣に立つ同い年の少女の方を振り返った。

瞬間、重なる今の僕と岬の視線。

その時、僕は唐突に全てを思い出した。

「……岬……お前、もしかして、茉里まり……岬みさき 茉里まりなの、か……？」

同時に、上空――何処か遠くの方から、ソロウの車外アナウンスが聞こえてくる。

「お客様にお知らせいたします。当列車は行先が変更となりました。当人達のコウカイの表出により、次に停車する予定でした『ミサキマリ』駅と終点『クサカベカイト』駅は、当駅『イズミリンコ』駅に統合されます」