コウカイ列車に乗って

天咲 琴葉

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コウカイ列車③

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自分の名前が呼ばれた事に、反射的に後ろを振り返る僕。

すると、そこにいたのは――目も鼻も口も無い、顔中真っ黒な人型の生き物だった。

まるで、足元の影が実体化した様なその存在は、よく見ると車掌帽を被っており、車掌の制服の様なものを着用している。

が、やはりというか、その袖から覗く手首から先の部分などは漆黒で――。

僕は、完全に言葉を失った。

(これは……この、人みたいな存在は一体何なんだ?)

もしや、よくテレビ等で見かける、一般人に仕掛ける系のドッキリなのではなかろうか。

なら、どこかにテレビクルーや隠しカメラがある筈だ。

僕は、一筋の希望を込めて辺りを見回す。

しかし、それらしい人影や物は見当たらず――。

ドッキリ以外では説明がつかないこのおかしな状況に、僕は混乱したまま立ち尽くした。

と、そんな僕に歩み寄って来る車掌の制服を着た影人間。

彼は、僕の前で帽子を取ると、うやうやしくその頭を下げて見せた。

「どうも初めまして、日下部開斗様。私、このコウカイ列車の車掌を務めております、ソロウと申します」

(コウカイ列車?車掌?さっきから一体何なんだ)

僕は朝練の為に東武線の下り列車に乗った筈なのに。

と、あまりに混乱しきっていた為か、僕は目の前に立つ車掌を名乗る影に、矢継ぎ早に質問をぶつけていた。

「あの、そもそもコウカイ列車って何なんですか?僕、確かに東武線のホームにいた筈なんですけど。朝練に行けないと、僕、本当に困るんです!」

すると、口がないのに一体何処から声を出しているのか――まるで、混乱する僕を安心させる様に、ソロウが優しい声で話し始める。
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