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吸血鬼さん、バトルする㉚
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私はそう言うと、体を離し、右手の小指を差し出した。
潤んでぼやけた視界の中、千恵の小指が差し出され、私の小指に絡んだのがうっすらと見える。
「約束」
絡んだ小指をそっと離す私達。
そうして互いに強く頷き合うと、私はリルゼイを連れて、まだ辛うじて原型を保っている避難用の滑り台に身を躍らせる。
「本当に気を付けてね、真由!」
頭上で叫ぶ千恵の声が段々遠ざかっていく。
その声に大きく手を振りながら、私は風の速さで滑り台を滑り降りる。
先生の言葉では、皆は非難をした時これを使ったらしい。成る程、ならばわざわざ階段で遠回りをするよりも、私もこれを使った方が早いのではないかと考えたのだ。
そして、それは正解だった。僅か数秒の内に、私達は体育館に直結している渡り廊下の直ぐ近くの砂地に着地する。
恐らく此処は、この避難用滑り台の為の着地場所なのだろう。
「おお、思ったより早かったわね」
スカートについた砂を払いながら、私はゆっくり立ち上がる。
ちなみに、ポケットに居たリントが避難用滑り台を大層お気に召したらしく、降下のおかわりを希望していたが、敢えてスルーしておいた。
と、立ち上がった瞬間、鼻に感じる、何かが焦げた様な匂い。
(さっき見た、体育館の焼けた屋根の匂いかな……?)
そう思いながら私が前方の体育館に目を向ける。
其処には、まるで踊る様にくねくねと怪しく蠢いている複数のファー・ジャルグらしき人影と、彼らに向かい、無差別に金色に輝く火炎の球を投げつける白い獣の姿があった。
潤んでぼやけた視界の中、千恵の小指が差し出され、私の小指に絡んだのがうっすらと見える。
「約束」
絡んだ小指をそっと離す私達。
そうして互いに強く頷き合うと、私はリルゼイを連れて、まだ辛うじて原型を保っている避難用の滑り台に身を躍らせる。
「本当に気を付けてね、真由!」
頭上で叫ぶ千恵の声が段々遠ざかっていく。
その声に大きく手を振りながら、私は風の速さで滑り台を滑り降りる。
先生の言葉では、皆は非難をした時これを使ったらしい。成る程、ならばわざわざ階段で遠回りをするよりも、私もこれを使った方が早いのではないかと考えたのだ。
そして、それは正解だった。僅か数秒の内に、私達は体育館に直結している渡り廊下の直ぐ近くの砂地に着地する。
恐らく此処は、この避難用滑り台の為の着地場所なのだろう。
「おお、思ったより早かったわね」
スカートについた砂を払いながら、私はゆっくり立ち上がる。
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と、立ち上がった瞬間、鼻に感じる、何かが焦げた様な匂い。
(さっき見た、体育館の焼けた屋根の匂いかな……?)
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其処には、まるで踊る様にくねくねと怪しく蠢いている複数のファー・ジャルグらしき人影と、彼らに向かい、無差別に金色に輝く火炎の球を投げつける白い獣の姿があった。
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