わが家の吸血鬼さん〜イケメンヴァンパイアを拾ったら執着されました〜

吸血鬼さん、今度はIN我が家⑪

　けれど、私は臆することなく、昨日自分の身に起きた出来事を語り始めた。

 　リルゼイと私が出逢う切っ掛けになったあの出来事を。

 「実はね？　私も昨日、ファー・ジャルグっぽいやつに襲われたのよ。リルゼイには、そこを助けて貰ったの」

 「えっ、真由お姉さんも？」

 　驚きに、思わずやや大きめの声を漏らすリント。

 　一方兄は、どこか愉快そうな笑みを浮かべながら、にやにやと此方を見つめてくる。

 「成る程な。リルゼイはお前にとって、まさにピンチに駆け付けてくれた王子様だったって訳か」

 「は？」

 　兄の言葉に一瞬で茹で蛸の様に赤面する私。

 　リルゼイは『王子様』という言葉が気に入ったのか、満更でもない表情でうんうんと頷いていた。

 「ちょ、もう！　違うから違うから！」

 　私は兄とリルゼイの間に立つと、兄の発言の撤回――所謂火消しに躍起になる。

 　だが、私が必死に消そうとしている火種に燃料を注ぎ、大火にさせる者がいた。

 「ああ、そうだな。確かに違う。私は王子様ではなくて婚約者だ」

 　リルゼイは、しれっとした表情でそう告げると、私の髪を一房手に取って唇を落とす。

 「っ……?!」